“暮らしやすい家”のつくり方|建築家が語る-性能では測れない“注文住宅の本質”と“設計の考え方”

はじめに|性能だけでは測れない本質

注文住宅を考え始めたとき、多くの方が「暮らしやすさ」というキーワードを口にします。特に子育て世帯や共働き夫婦、高齢の親と同居する予定のある家族など、ライフスタイルに課題を抱えている方ほど、この言葉に敏感かもしれません。

けれども、「暮らしやすさ」とは具体的に何を指すのでしょう?

 

 

一般的には、「十分な面積がある」「収納が多い」「部屋数が足りている」などが挙げられます。しかし、建築家の視点から言えば、それだけでは決して十分とは言えません。数値や性能だけでは測れない本質があるのです。

この記事では、一級建築士として数多くの住宅設計に携わってきた経験をもとに、「暮らしやすい家」の本質についてお話しします。単なる機能や性能だけではなく、空間全体の“質”をどう整えるか。設計事務所・建築家が本当に大切にしていることを分かりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

 

 

 

まずは、「暮らしやすさ」とは?「暮らしやすい家」とは?そんなことから書いていきたいと思います。

 

数値や設備だけでは語れない「暮らしやすさ」とは?

「高気密・高断熱」「最新の設備」「耐震等級3」──もちろん重要なことは人それぞれです。しかしながら、性能や設備が揃っているからといって、必ずしも暮らしやすいとは限りません。人は機械ではないのです。

 

 

本当に暮らしやすい家とは、“暮らしの流れ”が自然に、無理なく導かれていく住まいのことだと、私は考えています。では、どうしたら、そのような住まいができるのか?それは、動線や収納といった見えるモノだけでなく、光の入り方、風の通り道、視線の抜け、居場所のつくり方など、見えないカタチにまで意識を向け、深く配慮した時、初めて設計可能になります。

 

 

つまり、「設計」=(イコール)すべてのものに「意味」や「想い」を込めていくこと、となった時、本当に暮らしやすい住まいとなる。

私たちが実際に手がけた住宅は、性能は一定の高水準ですが、その数値以上に暮らしの質に対する満足度が非常に高い事例ばかりです。それは住まいのいたるところに「意味」や「想い」を宿らせているからだと私は考えています。

 

 

暮らしに「余白」があるということ

設計の中でとても大切なのが「余白」です。余白とは、 すべてを機能で埋め尽くしてしまうのではなく、存在していること自体に意味がある「間」のこと。

・読みかけの本を置く場所がある
・家族の気配は感じつつ、視線が重なりすぎない
・意図的にデザインされていない場所がある

このような住まいのゆとりを住まいの「余白」とします。

 

 

余白があると暮らしにゆとりが生まれ、豊かになります。しかしながら、余白のデザインには、建築家の繊細な目と、生活の感覚を見抜く力が必要です。
ただの無意味な「空きスペース」ではなく、暮らしの質感やリズムを整える装置として正常に機能するには、深い配慮をもとに意図してデザインされていることが求められます。つまり、無駄である無駄は省き、全体のポテンシャルを最大化させる「余白」はつくる、それが暮らしを豊かにする「設計」です。

 

 

 

では、ここで、もう少し具体的に、暮らしやすい家に共通する5つの視点を紹介しましょう。

1.動線が「生活の流れ」に合っている

まずはじめに、動線を大切にしましょう。動線が生活の流れに合っていると暮らしやすさにダイレクトにつながります。暮らしやすい動線とは、単に「短い動線」ではありません。「人の動きに無理がない」ことが重要です。たとえば、料理→配膳→片付けがスムーズに回るキッチン、朝の支度が家族同士でぶつからずに済む洗面所など、実際の暮らしに即した視点が求められます。

 

 

2.余白があることで暮らしに「幅」が生まれる

次に、空間にゆとりを大切にしましょう。ゆとりや、余白があると、暮らし方のバリエーションが広がります。例えば、家具のレイアウト変更、将来のリフォーム、子どもの成長などにも柔軟に対応できる構造になります。ここで注意したいのは無駄ではなく、ゆとり・余白であるということ。心地よさを向上させるなどの存在する「意味」を大切にしましょう。

 

 

3.視線と気配の設計

3つ目として、視線や気配をデザインすると、心地よさにつながります。見えること、見えないこと、感じること。それを意識的に設計する、例えば、リビングで子どもが遊んでいるのをキッチンから見守ることができる、視線がスーッと遠くまで抜けていく、目線の先・アイストップには美しいものを置くなど。このような工夫が開放感・安心感を住まいにもたらしてくれるのです。

 

 

4.音・光・風とどう付き合うか

4つ目として、音・光・風といった見えないモノ・コトとどう付き合うかが大切になってきます。「無音」ではなく「心地よい静けさ」、「明るい」ではなく「柔らかな明かり」、そして心地よさを感じる「風の流れ」。数値では表現できない見えないモノ・コトへの設計が、住み心地という五感に「余裕」をもたらします。

 

 

5.家族との時間を「たのしむ場所」があること

最後に、家族との時間を「たのしむ場所」があることも付加価値として大切にしたい部分ではあります。テレビを見る場所ではなく、ただ一緒であることをたのしむ場所。たとえば、中庭、アウトドアリビング、畳の間など、たとえ会話がなくとも、座るだけで「家族である」という感覚が生まれる場所です。この空間を美しく整えることは人生を豊かに整えることと捉えて、設計していきましょう。

 

 

 

ここまで、暮らしやすい家・暮らしやすさとは?について解説してきました。ここからは、よくある失敗例とその対策をご紹介します。

 

1. 設備や性能だけで判断し、空間構成を軽視

まず最も多い失敗は、わかりやすいからといって、数値や機能だけにこだわり、後悔するパターンです。
「断熱等級6の家にしたけど、なんだか落ち着かない・満足感がない」
このような方、非常に多いようです。
人は感覚だけでなく、感性ももつ生き物です。空間の広がり・窓の配置・天井の高さなど、心理的な快適性が設計されていなければ、数値では満足できないのは当然のことでしょう。

 

 

2. 機械的に考えすぎて「暮らし」が窮屈に

次にご紹介するのは、効率化をはかるあまりに、窮屈になってしまったケースです。
「家事動線は短いのに、毎日疲れる」
このような後悔は、機械的な効率化によって「息を抜ける場所」がなくなってしまったことで生じてしまいます。
一方で、深い配慮のある効率化は、永久に寄り添うようなアシストをしてくれる資産としての住まいをつくるのです。そのためには、暮らし全体のリズムを整え、住まい手をサポートする設計士の視点が必要です。

 

 

3. 収納を増やしすぎて空間に圧迫感

続いてご紹介するのは、住まいを考える前に、暮らしを見つめ直さなかったが故に後悔するケースです。
「収納は十分。でも何かが狭い」
モノを隠すことよりも「モノをどう扱うか」が大切です。収納量だけでは空間の心地よさは生まれません。
「理想の暮らし」を考えることが、住み心地のよい住まいを設計するための出発点です。

収納については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【注文住宅の収納計画。失敗・後悔しない7つのポイント。適切な収納量・割合とは?】

 

 

4. 間取りを固定化しすぎて将来の変化に対応できない

最後にご紹介するのは、将来のことを考えない設計士に依頼したために後悔するパターンです。
「今は快適だけど、10年後には使いづらいかも…」
このような不安がないように、あらかじめ将来のビジョンを整えましょう。暮らし方は変化します。可変性を持たせたり、余裕をもたせる設計が「暮らしやすさの持続性」を高めます。

間取りについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【最高の間取りの7つのルール・ポイント。間取りの良い悪いは何が基準?】

 

 

 

ここからは、暮らしやすさについて、よくある質問とその回答をご紹介します。 

Q. 性能が高ければ、暮らしやすい家になりますか?

A. なりません。不十分です。性能は大切ですが、それだけで暮らしやすさは測れません。心地よさのデザイン・空間構成がともなって初めて暮らしやすく心休まる住まいになります。

 

  

Q. 家事動線を短くすれば、家は暮らしやすくなりますか?

A. そうとは限りません。動線は短ければ良いわけではなく、サポートするような流れであるかどうかが重要です。日常の動き・暮らしに寄り添った設計をすることが大切です。

家事動線については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【家事動線とは?家事が楽な間取りの事例やメリット、設計のポイントを解説。】

 

 

Q. 家族の気配を感じられる家が理想ですが、どうすれば?

A. 「つながり方」をデザインしましょう。ただLDKと各個室をつくるのではなく、家族の“つながり方”そのものを設計することです。
土間リビングやヌック、スタディコーナーをLDKにつなげて設ければ、家族は自然と集まり、ほどよく離れて過ごすことができます。音や視線の抜けを調整し、「集まっているのに、ちょうどよく離れている」そんな心地よい関係性を、空間から生み出せば、各個室に閉じこもるよりもずっと心地よい空間が住まい全体にひろがることでしょう。

 

 

Q. 注文住宅で“暮らしやすさ”を重視したいとき、最初にすべきことは?

A.「理想の暮らし」を考えることです。まずは、自分達にとって「理想の暮らし」とはどのようなものか整理することから始めましょう。例えば、大切にしている時間や習慣を書き出してみることです。自分達だけでまとめなくても大丈夫です。建築家・専門家と対話することで、新しい発見が見つかることも多いです。そして、共有していきましょう。それが設計の本来の出発点です。ヒアリングの時点で生活の輪郭が見えると、設計の質が格段に上がります。

後悔や失敗しない、家づくり・注文住宅のポイントについては、こちら↓の記事でも詳しく解説しています。

【後悔や失敗しない!家づくり・注文住宅の7つのポイント!】

 

 

 

ここまで暮らしやすさについて解説してきました。最後に、どうしたら暮らしやすさをデザインできるのか、整理します。

ここまで解説してきたとおり、暮らしやすい家とは「便利な家」でも「効率のいい家」でもありません。
「理想に対して誠実な家」であり「その人らしさが反映されている空間」です。 

性能や設備は整えた上で、 すべてを「どう意味づけ統合するか」そして「どんな風景をつくるか」までを考えるのが私たち建築家・設計士の役割です。

 

 
たとえば、収納が多いことではなく「どのように使うか・どんな頻度で使うか」
断熱性能が高いことだけではなく「どのように四季・風土と向き合って暮らすか」
言葉にし、図面に落とし、素材と光で翻訳する。
設計とは、暮らしに対する「理想」を形にすることなのです。

 

 

 

性能は「基準」です。しかしながら「基準」だけでは幸せな暮らしは生まれません。
大切なのは「どう暮らしたいか」
そして、そのために重要になるのは「誰とつくるか」です。

その答えは、残念ながら、カタログや広告にはありません。
「理想の暮らし」は、あなた自身の中にあるからです。
それを引き出し、カタチにしていくのが「設計事務所・建築家」です。

だからこそ「対話」が出発点になる。

 

 

住宅設計・建築は、人生のデザインです。

私たち設計事務所では、単に設備や間取りを考えることだけを仕事として捉えるのではなく一人一人の「どんな人生を過ごしたいか」という「想い」に向き合いたいと考えています。
図面や数値の先にあるもの──それが本当の設計です。

その一歩を、私たちと一緒に踏み出していただけたらと思います。

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