失敗しない窓の選び方。開閉方法・形状・位置・各種類の特徴・メリット・デメリット

注文住宅や家づくりにおいて、「窓・開口部」は最も重要な要素の一つです。
心地よく快適な住まいとするためにも、慎重に検討したいところですよね。

けれども、間取りやその他のことに気をとられ、窓の重要性を見落とす方や十分に理解していない方が多いのが実際のところではないでしょうか?

 

 

・窓の位置に配慮がなく、全て同じ位置に設置。
・既製品の寸法だけで窓のサイズを選ぶ。
・窓の種類は引き違い窓の一択で、適材適所で選ばない。

上記のような思考が停止しているような検討不足は、ダイレクトに失敗・後悔の原因となる危険性を孕んでいますので、注意が必要です。

 

 

そこで今回は、窓に関する次の4つのポイントを解説します。

1.窓が最も重要である理由
2.窓の機能
3.窓の種類
4.窓の選び方

 

 

この記事を読んで、開閉方法・形状・位置による窓の種類、各特徴・メリット・デメリットを整理し、失敗しない窓の選び方を学びましょう。

この記事は、窓の基礎知識の概論です。
応用編・窓の設計デザインについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【最高の開口部・窓のつくり方。4つのポイントと手順。住宅の設計デザインが決まる。】

 

 

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建築において、「窓・開口部」のデザインが最も重要である、と言われることがよくあります。
それは、家づくり・注文住宅でも同じことです。

それほど大切にされている理由は「窓・開口部」は、建築の要素の中で、「内部で暮らす住まい手の要求」と「外部・周囲からの制約や成り立ちなどの文脈」がぶつかり合う場所・エレメントであるから、ということに起因しています。

 

 

つまり、「窓・開口部」をどのように設計するかは、
「建築の内部の人間が外部の世界に対して、どう考え、どうアクションするのか?
 それによって、どう快適で心地よい内部空間を展開するのか?どう暮らしていくのか?」
といったことを決めていくこと
につながるのです。

だからこそ、「窓・開口部」のデザインは、非常に大切に扱われるべきテーマです。

 

 

 

窓が重要な要素である理由の概要を解説しましたが、ここからはその重要性をより具体的に解説します。
まずは「窓の機能」について整理していきましょう。

窓の機能は、基本的には次の3つです。

1.眺望
外の景色を見る・眺めるための機能。

2.採光
内部空間のために日照を得るための機能。

3.通風・換気
内部空間のために風を通したり、空気を循環させるための機能。

 

 

窓がない家を想像すれば、とても不快で気が詰まるような不健康的な空間のイメージが湧きますよね。
その感覚の通り、眺望・採光・通風(換気)といった窓の3つの基本機能は、快適・健康・心地よく暮らすためには必要不可欠なものなのです。

通風・換気については、こちら↓の記事でより詳しく解説しています。
【風通しのいい家。そのメリットと設計のポイント、間取りや窓の配置など。】

 

 

窓の断熱・気密性能については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【「窓」で断熱・気密性能が決まる!サッシやガラスの種類、メリット・デメリット。】

 

 


続いて、窓の種類に注目してみましょう。

窓には多くの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
各特徴をよく知り、適材適所うまく採用することは、住まいの快適性や心地よさにダイレクトに影響します。

ここでは、窓の種類をしっかりと整理していきましょう。

 

 

窓の種類は、3つの方法で分類できます。
1.開閉方法
2.形状
3.位置

それぞれ詳しく解説します。

 

 

 

窓の分類方法、1つ目は「開閉方法」です。
様々な開閉方法の窓があり、その違いによって、気密性、通風・換気性能などの特徴も異なります。

例えば、次のように分類できます。

引き違い窓
縦すべり出し窓
横すべり出し窓
FIX窓(はめ殺し窓)

他にも種類はありますが、最低でも、この4つはメリット・デメリットを把握し、適切に扱えるようにしたいものです。ここで一つずつ整理していきましょう。

 

 

 

引き違い窓
2枚の窓ガラス・障子がセットになったサッシで、左右に引いて開閉する窓。
大開口の窓に採用されることもある。
派生するものに、1枚引き・3枚引き・4枚引き、といった窓もある。

〈メリット〉
開閉が楽に出来る。
費用が安い。
掃除しやすい。

〈デメリット〉
気密性が高くない。
庇が無ければ、降雨時に雨を取り込み、室内が濡れやすくなる。
防犯性が低い。

 

 

 

縦すべり出し窓
縦方向を回転軸として、取手などを持ち、押し出すように開閉する窓。
ハンドルを回すことで開けるものもある。

〈メリット〉
気密性が高い。
密集地などで壁面に沿って流れる風・住宅と住宅の間を通り抜ける風をキャッチして取り込むことが出来る。

〈デメリット〉
庇が無ければ、降雨時に雨を取り込み、室内が濡れやすくなる。
窓を開ける際には、外側にスペースが必要。
寸法が大きなものはない。
同じような寸法の場合、引き違い窓よりもコストが高い。
網戸(汚れる)を室内につける必要がある。

 

 

 

横すべり出し窓
横方向を回転軸として、取手などを持ち、押し出すように開閉する窓。
ハンドルやボールチェーンを回すことで開けるものもある。

〈メリット〉
気密性が高い。
庇が無くとも、降雨時に雨が室内に降り込むのを防ぎながら、通風を確保できる。

〈デメリット〉
窓を開ける際には、外側にスペースが必要。
寸法が大きなものはない。
同じような寸法の場合、引き違い窓よりもコストが高い。
網戸(汚れる)を室内につける必要がある。

 

 

 

FIX窓(はめ殺し窓)
開閉できない固定の窓ガラス。
天窓(トップライト)・高窓(ハイサイドライト)として採用されることも多い。

〈メリット〉
気密性・断熱性に優れる。
低コスト。
寸法が大きなものもある。

〈デメリット〉
室内から外部側のガラスを掃除することができない。
開閉できない。

 

 

 

窓の分類方法は、「開閉方法の違い」だけではありません。
「形状の違い」によっても、窓は分類できます。

ここからは、「形状の違い」による窓の種類を紹介していきます。

 

 

まず、ご紹介したいのは、「スリット窓」です。
スリット窓とは、細長い形状の窓のこと。
このスリット窓はピンポイントで使用することで、的確に採光・眺望・通風・換気といった窓の機能を十分に果たしつつ、プライバシーも守ることが出来ます。

スリット窓には、「横長の形状のもの」と「縦長の形状のもの」があり、それぞれ次のように呼びます。
・横スリット窓
・縦スリット窓

それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。

 

 

横スリット窓

メリット〉
・上部に設置すれば採光を部屋の奥まで届けられる。
・周囲からの視線をカットでき、プライバシーを守りながら採光・眺望を確保できる。
・上部に設置すれば上昇した暖気を排出しやすく、熱の排出や換気の効率が良い。
・床付近に設置すれば、日差しによる熱や眩しさを気にせずに換気・通風ができる。

〈デメリット
・床付近の設置は採光には適さない。
・高い位置に設置すると、手が届きにくく、掃除などお手入れが大変。

 

 

縦スリット窓

〈メリット〉
・​周囲からの視線を遮り、プライバシーを守れる

〈デメリット〉
・横スリット窓よりも採光の効率は劣る。
・家具のレイアウトが制限されやすい。

 

 

 

窓は、開閉方法・形状だけでなく、位置の違いによっても、採光・視認・通風・換気の性能が大きく変わります。

位置の違いによって、窓は次のように分類できます。

掃き出し窓
地窓
腰窓
高窓(ハイサイドライト)
天窓(トップライト)

それぞれ詳しく解説します。

 

 

 

掃き出し窓
床面に接し、基本的には人が出入りするための窓を「掃き出し窓」といいます。
そのため、大きな窓が多いです。
庭・バルコニー・ベランダ・テラスなどに面した場所に設置します。
引き違い窓、あるいは、開き窓とFIX窓の組み合わせで採用されることが一般的です。

〈メリット〉
寸法が大きく、眺望の面に優れ、室内に開放感を生み出します。
採光にも優れ、室内全体が明るくなりやすいです。

〈デメリット〉
周囲から見られやすく、防犯性・プライバシーの面で問題が生まれることもあります。
コスト高い。

 

 

 

地窓
床付近に設置される窓。掃き出し窓よりも高さの寸法が小さい。

〈メリット〉
外からの視線を遮りながら、柔らかな光を取り込める。
トップライトやハイサイド窓と組み合わせることで通風・換気効率を高めることが出来る。

〈デメリット〉
採光の効率は高くないため、部屋を明るくすることを望む際には適していない。

 

 

 

腰窓
一般的な窓のこと。腰から上の窓に設置されることが多い。

〈メリット〉
場所を選ばず設置できる。
様々な開閉方式の窓を採用できる。
窓より低い家具であれば窓下に設置できる。

〈デメリット〉
・出入口としての採用であれば、掃き出し窓の方が良い。
・採光、眺望、通風、換気に関しても掃き出し窓の方が効率がよい。

 

 

 

高窓(ハイサイドライト)
天井近く、壁の高い部分に設ける窓。

〈メリット〉
採光の効率がよく、空間全体を日照で満たすことが出来る。
外からの視線を防ぐことが出来る。
地窓と併用することで、室内全体に空気循環が生み、効率のよい自然換気が出来る。

〈デメリット〉
掃除などのメンテナンス性や操作性が悪い。

 

 

 

天窓(トップライト)
天井や屋根につける窓です。

〈メリット〉
採光の面で最も優れている。
周囲からの視線を防ぐことができる。

〈デメリット〉
掃除などのメンテナンス性・操作性が悪い。
雨漏りのリスクが高くなる。
夏に部屋が熱くなりすぎる危険性がある。

 

 

 

窓の種類を整理できましたね。
それを踏まえて、ここからは「窓の選び方」を解説します。

窓には、眺望・採光・通風・換気、4つの機能、いい面があります。
けれども、増やし過ぎると、
・断熱性能が落ちる。
・コストが高くなる。
といったデメリットもありますので、単純に増やせば良いというものでもありません。

必要十分な数を適材適所、設けることが肝です。

 

 

そのためには、まずは、窓を設ける部屋を「どのような部屋にしたいか」をしっかりと検討しましょう。
基本的には、次の4パターンのどれにしたいかを考え、方向性を考えましょう。

・外の景色が見える開放感のある部屋。
・自然の光に満ちた明るい部屋。
・風通しのよい部屋。
・周囲からの視線を遮断する部屋。

ここからは、それぞれのパターンには、どのような窓が適しているのかを解説します。

 

 

 

「外の景色が見える開放感のある部屋」にするための窓の選び方を解説します。

まずは、「大きな窓」を採用しましょう。
そして、大きな窓を採用するのであれば、「引き違い窓」「FIX窓」が候補として挙がるでしょう。
外の景色の見やすさなどにこだわるのであれば、「掃き出し窓」「腰窓」といった設置場所がおすすめです。

開放感の演出方法は、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【開放感のある家をつくる7つのポイント。間取りやインテリアの設計手法・デザイン。】

 

 

 

「自然の光に満ちた明るい部屋」にするための窓の選び方を解説します。

明るい部屋としたい場合にも、まずは「大きな窓」を採用しましょう。
そして、こちらも大きな窓を採用するのであれば、「引き違い窓」「FIX窓」が候補として挙がるでしょう。
設置位置にこだわる場合には、「高窓(ハイサイドライト)」や「天窓(トップライト)」といった高い位置に設置する窓を採用するのがおすすめです。
部屋の奥まで日照が届き、明るくすることが出来ます。

 

 

 

「風通しのよい部屋」にするための窓の選び方を解説します。

密集地が建築地であるならば、「縦すべり出し窓」の採用を検討しましょう。
それ以外の場合では、庇を設けた上で、「引き違い窓」を採用するか、庇がないのであれば「横すべり出し窓」がおすすめです。
また、配置の工夫も大切です。
通風に考慮するのであれば、1部屋に2つ以上の窓をワンセットとして考え、対角線状に配置したり、高窓と地窓を組み合わせ、窓の位置をずらすと風通しのよい住まいになります。

 

 

 

「周囲からの視線を遮断する部屋」にするための窓の選び方を解説します。

まずは「スリット窓」「小窓」といったサイズの小さい窓を採用する方法があります。
他にも、「高窓(ハイサイドライト)」「天窓(トップライト)」「地窓」といった窓を採用することで、設置位置に工夫をするのもおすすめです。

窓ガラスの種類を不透明なガラスに変えることで視線を遮断する方法もあります。
例えば、すりガラス、フロストガラスであれば、プライバシーを守りつつも、十分な採光を得ることが出来ます。

 

 

 

今回は、窓に関する次の4つのポイントを解説しました。

・窓が最も重要な要素である理由
・窓の機能
・窓の種類
・窓の選び方

この記事を読んで、開閉方法・形状・位置による窓の種類やそれぞれの特徴・メリット・デメリットを整理し、失敗しない窓の選び方といった窓の基礎知識をつかめたのではないでしょうか?

 

 

窓の選択は、空間の心地よさ・快適性にダイレクトに影響します。けれども、より最適で魅力的な窓を設計デザインするのは住まい手だけでは難しく、専門家や本当に設計力のある設計士・建築家ならではのものでしょう。

私たちの設計事務所では、ご相談・間取りなどの提案は無料です。

施工をしない・建築家の家づくりは、工務店・ハウスメーカーなどとは大きく違います。
少しでも家づくりにこだわりたい気持ちがあり、建売などではなく注文住宅を採用されるのであれば、まずは建築家に相談してみること、それから色々と考えるのがおすすめです。

その際、私たちのような、機能・デザイン・コストなど全方位でバランスの良い住まいを目指す建築家であれば、より相談できることは多いことでしょう。

建築家の仕事に距離は関係ありません。私も全国から依頼を承っております。
遠方の方でも距離を気にせずに、建築のことであれば何でもお気軽にお問い合わせ頂けると幸いです。

 

 

最後に。
住宅設計は、人生のデザイン。
住まいは、生涯の大半を過ごすであろう空間です。
皆様が妥協・後悔・失敗することなく、豊かな暮らしを送れますように。
夢の実現を全力でサポートする、良きパートナー・建築会社が見つかることを願っています。

 

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ぜひ、参考にしてみて下さい!

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