はじめに|“施工管理と現場監理”
注文住宅を検討するとき、
“設計が終われば、あとは工事が進む”
と多くの方が考えるものでしょう。
図面があり、職人さんが施工し、仕上げていく。
確かに、それはとても自然なイメージです。
けれども、建築家の視点から見ると、
家づくりを成功させるには、
別軸で、必要な視点が他にあります。
それが、“設計監理”や“現場監理”と呼ばれる仕事です。

この「監理」という領域は、
一般にはあまり語られることがありません。
そのため
「施工管理と何が違うの?」
「監理費って必要なの?」
といった疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで本記事では、
「施工管理と現場監理(設計監理)は何が違うのか?」
という視点から、
“建築家がなぜ設計監理をセットで考えるのか?”
について解説します。
具体的には、
・施工管理と現場監理の違い
・建築家と工務店の立場の違い
・設計監理が担う品質・精度・納まりの領域
・第三者検査や検査機関との違い
・なぜ監理費が発生するのか
・監理が強い家と弱い家の違い
といった論点を整理していきます。

結論からいえば、
施工管理と現場監理(設計監理)は、
“目的も立場も判断基準も異なる仕事”です。
そして、家の仕上がりの美しさや性能、経年の強さは、
設計監理の有無で大きく変わります。
本記事が、
「建築家に依頼する意味」
「設計料の内訳」
「監理費の役割」
「施工管理との違い」
について知りたい方にとって、
家づくりの理解を整理する一助となれば幸いです。
愛知県・名古屋市の設計事務所・建築家としての
考え方や取り組みは、こちらにまとめています。
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■現場監理とは?|建築家の役割
まずはじめに、
現場監理とは何か?について、ご説明します。
現場監理(設計監理)は、建築家や設計事務所の仕事です。
注文住宅を検討するとき、
「図面通りに家が建つもの」
と考える方は少なくありません。
しかし実際には、
図面丸投げでは、
現場との間に、“乖離”が出てしまうが多い。
これは、設計が不十分だから、
というわけではなく、
現場でしか見えないモノゴトがあるからです。

現場には、
素材の表情、湿度、職人の癖、施工手順、寸法の誤差、
敷地の条件が現実問題として絡み、
図面には現れなかった
“生きた変数”が存在することもあります。
この図面と現場の乖離を調整し、
設計の意図を丁寧に成立させる役割が
建築家の現場監理(=設計監理)です。

現場監理は
“設計の意図を正しく成立させること”
を目的とします。
品質・精度・素材・納まり・性能の視点から、
建築家が現場を確認し、微調整します。
内容をもう少し具体的にすると、
・寸法の確認
・仕上げ位置の調整
・納まりの検討と決定
・素材と施工の整合性
・断熱・気密・防水などの性能確認
・見えなくなる部分のチェック
・法規適合の確認
・工務店や職人との相談
・改善案や代替案の判断
・仕上げ精度の最終調整
現場監理は、工事を進める役割ではなく、
“品質を守る役割” といえるでしょう。

■施工管理とは?|工務店が担う“工事を進める管理”
つづいて、施工管理について整理します。
施工管理は工務店が担う役割で、
工事を安全かつ期限内に成立させるための管理です。
内容は、
・工程管理(段取りと順番)
・職人手配
・材料手配
・施工手順の管理
・安全管理
・工事費の管理
・現場全体の進行調整
目的を一言でまとめるなら、
“工事を滞りなく進めること”です。

■立場の違いが、判断基準を変える
施工管理と現場監理は、
どちらが正しいという話ではありません。
それぞれ“立場”が違い、
次のように、見ている世界が異なります。
施工管理の視点
→ 現場が回るか、納期に間に合うか、安全か?
現場監理の視点
→ 設計意図が成立しているか?
美しい?快適?性能が担保されている?

具体的な例を挙げてみましょう。
例えば、同じ窓ひとつでも、
施工管理は
・正しく取り付けられているか
・操作できるか
を見て、
現場監理は
・ラインは揃っているか?納まりは美しいか?
・光の入り方は適切か?
・性能は確保されているか?
を見る。
このように、それぞれチェック項目が異なります。

■設計監理がセットになる理由|図面だけでは“思想”が届かない
建築家・設計事務所が
“設計監理をセットで考える”理由は、
設計行為そのものが、現場で初めて完成するからです。
特に差が出るのは、
美観
→納まり/素材/精度/光の扱い
性能
→気密/断熱/防水/湿度
耐久性・メンテナンス性
→経年変化/更新性
暮らしやすさ
→スケール感/距離感/生活の粒度
このようなポイント。

美観・性能・耐久性・暮らしの粒度は、
図面では表現しきれないことも多く、
現場でしか決定できない領域もある。
“要素”の如何ではなく、
建築の美しさは、
モノゴトの“関係性”から生まれるものです。
その関係性を最も解像度を高く整えることができるフェーズこそ、
「現場監理」なのです。

■第三者検査との違い|検査は確認、監理は判断
第三者検査という仕組みもありますが、目的が異なります。
第三者検査
→基準に適合しているかを確認
設計監理
→設計意図に沿っているかを判断
検査は“チェックリスト”ですが、監理は“意思決定”を含みます。
基準を満たしていても、美しくないことはあります。
性能が担保されても、生活と噛み合わないこともあります。
このフェーズには、
長い時間とヒアリングで、
住まい手の想いをすくいあげてきた設計者の視点が必要なのです。

■費用の話|現場監理費はなぜ発生するのか?
現場監理は、工事期間中に継続して行われます。
設計事務所は現場に通い、状況を確認し、
判断し、調整し、記録を残します。
この継続的な時間と専門性に対して、費用が発生します。
設計料の中に含まれることもあれば、別途の場合もあります。
現場監理費とは、
“品質と意図を守るための保険”
と考えると分かりやすいかもしれません。

■監理が弱い家と強い家の違い|仕上がりに現れる
現場監理の強さは、完成した空間に現れます。
・ラインが揃っている
・素材が喧嘩しない
・建具がすっと閉まる
・壁と天井の見付けが美しい
・照明が空間に馴染む
・無垢材が自然に収まる
・断熱と気密が丁寧
・経年で劣化しにくい
これらは“一瞬の見た目”だけではありません。
生活の中で、じわっと効いて、
そして、たしかに、積み重なり続けるものです。
逆に監理が弱い家は、
完成時には誰も気づかない小さな違和感が、
暮らしの中で“積分”されていくように現れます。

■現場は“設計思想”が立ち上がる場所
建築家・設計事務所にとって、
現場は思想が立ち上がる場所です。
図面は、思想の翻訳。
現場は、思想の実体化。
素材、納まり、精度、光、距離感、余白。
それらが空間として整い、生活と馴染む瞬間は、
現場でしか生まれません。
建築家が現場に立つ理由は、
美しさや性能のためであり、
そして、生活の粒度のためです。

■Q&A|施工管理と現場監理の違いについて、よくある質問
ここからは、施工管理と現場監理の違いについて、
よく寄せられる質問と回答をQ&A形式でご紹介します。
Q. 現場監理は、どれくらい現場に来るのですか?
A. 工事内容や工程によりますが、基本は週1回です。
構造・断熱・防水・仕上げといった重要な工程では必ず確認します。
“いつ見るか”が重要な仕事なので、回数よりタイミングです。
Q. 設計さえしっかりしていれば、監理は不要ですか?
A. 図面だけでは決めれる解像度に限界があります。
素材、精度、納まり、性能は現場で調整が必要になるかもしれません。
監理とは、設計と施工の“間”を埋める仕事で、後から替えが効かないものです。

Q. 施工管理と現場監理は、同じ人がやっても良いのですか?
A. 役割自体が異なるので、兼任すると判断基準が混ざることがあります。
施工管理は“つくる側”の仕事、
現場監理は“守る側(設計側)”の仕事です。
Q. 工務店と揉めたりしませんか?
A. いい現場ほど揉めません。
価値基準が揃うと、監理は意思疎通の潤滑になります。
対立ではなく補完の関係です。
Q. 監理費は何に対して払う費用ですか?
A. 監理費は、図面の意図を現場で成立させるための時間と判断に対して支払う費用です。
最終的な仕上がりの精度や、生活側の心地よさに影響します。

Q. 第三者検査と監理はどう違うのですか?
A. 第三者検査は“基準を満たしているかの確認”。
監理は“意図や思想を成立させるための判断”。
目的も粒度も異なります。
Q. 監理が強いと、家はどう変わりますか?
A. 小さな違和感が減ります。
ライン、素材、精度、納まり、性能、光、距離感、経年。
これらは暮らしの中で、確かに積み重なります。
Q. 監理が弱い場合は?
A. 完成直後は目立たず、生活の中で“積み重なるように”現れます。
例えば建具の擦れや結露、メンテ不能な納まりなど。
後からでは修繕しにくい領域に出やすいです。

Q. 設計と施工の間に立つのは何故ですか?
A. 調整役というより、設計側の意図と生活側の視点を守る役割です。
工務店と対立するものではありません。
Q. 他社施工でも監理をお願いできますか?
A. 設計との整合性によりますが、仕組みとしては可能です。
意図を正しく理解し、責任範囲を明確にすることが大切です。
Q. 監理が必要のないケースはありますか?
A. 規格住宅や仕様が固定された住宅では、監理の判断領域が小さいことがあります。
完全自由設計は逆に監理の重要度が高い傾向です。

■まとめ|“つくる側”と“守る側”が揃って家は成立する
施工管理と現場監理は、対立ではなく補完関係にあります。
施工管理
→ 工事を成立させるための管理(工務店)
現場監理(設計監理)
→ 設計の意図や品質を守るための管理(建築家)

施主にとって最も良い状態は、
“つくる側”と“守る側”が同じ現場に存在していることです。
なぜなら、
家の仕上がりの美しさや精度、素材感、納まり、性能、
そして、暮らしの心地よさは、
図面と現場を横断する判断と調整によって生まれるからです。
家は図面の中で完成するのではなく、
現場で完成します。
その現場において、
建築家の監理が果たす役割は小さくないのです。

デザインと機能の両立を求める方へ。
私たち、設計事務所 Tabi(タビ)は、
“設計と現場監理をセットで考える”
愛知県名古屋市の建築家・設計事務所です。
素材や納まり、精度、光の扱い、
そして、暮らしの粒度まで含めて、
家づくりを伴走します。
性能や経年変化、生活の心地よさを丁寧に扱い、
“一棟ごとの正解”を一緒に探す。
それが私たちの家づくりです。

初回のご相談・ご提案は無料です。
暮らしや土地、価値観に合う住まいを
無理のないペースで検討したい方。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
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