【注文住宅の保証制度】瑕疵担保責任とは?|10年保証・保険の仕組みと対象・期間・注意点のまとめ

はじめに-注文住宅の「保証」、本当に理解していますか?

注文住宅は、人生で最も高価な買い物のひとつです。しかし、完成して引き渡された後に「雨漏りがする」「床が傾いている」などの不具合が発覚することが万に一つあるかもしれません。
こうした“まさか”のトラブルから施主を守る仕組みが「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」です。

 

 

本記事では、「瑕疵担保責任」の意味・内容・適用条件・期間・注意点、「住宅瑕疵担保責任保険」や「10年保証」といった言葉も含めて、注文住宅における保証制度の仕組みを一級建築士がわかりやすく解説します。初めての家づくりでも安心して判断できるよう、信頼できる情報を整理してありますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

 

 

まずは、「瑕疵担保責任」の基本的な定義からご説明します。

「瑕疵担保責任」とは、建物に隠れた欠陥(瑕疵)があった場合に、売主や施工者が買主(施主)に対して負う法的な責任のことです。注文住宅の場合、完成・引渡し後に発見された「重大な構造上の不具合」や「雨漏りなどの欠陥」が該当します。

つまり、「瑕疵担保責任」とは、「見た目では分からないが住み始めてから気づいた重大な欠陥」に対して、補修や損害賠償などで対応してもらえる制度です。

 

 

 

ここで、「瑕疵(かし)」について、詳しく解説します。

「瑕疵(かし)」とは、契約内容や通常期待される性能を満たしていない状態のことです。

例えば、具体的には次のような例が「瑕疵」として挙げられます。

・雨漏りがする
・床が傾いている
・基礎にひび割れがある
・柱や梁に構造的な不具合がある

これらはすべて、構造耐力上の主要な部分または雨水の侵入を防止する部分にかかわる「重要な瑕疵」に該当します。

 

 

 

ここで、瑕疵担保責任の法的な位置づけを確認しておきましょう。

現在、住宅における瑕疵担保責任は、以下の2つの法律に基づいて規定されています。

 

(1)民法

民法では「契約不適合責任」として規定されています(2020年の法改正により「瑕疵担保責任」から表現変更)。

契約内容と異なる場合や欠陥がある場合、民法により、施工者(請負人)は補修または損害賠償を請求される可能性があります。

 

 

(2)住宅品質確保促進法(品確法)

新築住宅については、住宅品質確保法により、以下の義務が定められています。

・構造耐力上主要な部分
・雨水の浸入を防止する部分

この2つに関しては、10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務化されています。

 

 

 

では、注文住宅ではどのような範囲が瑕疵担保責任の対象となるのか、ここで詳しく整理しましょう。

注文住宅の場合、「設計・施工」に責任を持つ事業者がこの瑕疵担保責任を負うのは、次の部位です。対象外のケースもご紹介いたします。

 

 

対象となる部位の例

・基礎・柱・梁(構造耐力上主要な部分)
・屋根・外壁・開口部まわり(雨水の侵入を防止する部分)

 

対象外となるケース

・施主支給品(施主が購入して施工会社に渡したもの)
・経年劣化による自然な傷み
・地震・津波などの自然災害による損傷

 

 

 

ここからは、瑕疵が見つかったらどうすれば良いか?について解説します。

まずは、瑕疵を発見したら、できるだけ早く施工者または建築士に連絡しましょう。基本的な流れは、次の通りです。 

 

基本的な流れ

1.写真・記録を残す
2.連絡して現場確認を依頼
3.報告書や診断書の作成
4.補修対応 or 損害賠償の交渉

対応が遅れると「時効」が成立してしまうリスクがあります。発見したらすぐに動くことが重要です。

 

 

 

さて、ここで、瑕疵担保責任の最も注意すべきことの1つ、期間と時効について解説します。

住宅品質確保法では、新築住宅に対して以下の責任期間が義務化されています。
・構造耐力上主要な部分
・雨水の侵入を防止する部分

いずれも、引き渡しから10年間。

また、民法上では「瑕疵を知ったときから1年以内」に通知しなければ、補償を受ける権利が消滅するというルールもあります。

この期間と時効については、特に注意が必要です。

 

 

 

ここからは、「瑕疵担保責任」と多くの住宅会社が用意している「アフターサービス制度」の違いについて解説します。

「瑕疵担保責任」と違い、「アフターサービス制度」は法的義務ではなく、任意のサービスです。

表にまとめると、次のようになります。

項目瑕疵担保責任アフターサービス
根拠法律(民法・品確法)企業の任意制度
対象構造・雨漏りなど壁紙・建具の調整など
期間最低10年1〜2年が多い

※アフターサービスはあくまで「付加価値」。法的な保証ではないため、契約時に内容をよく確認しましょう。

 

 

 

そもそも最も重要なのは、「瑕疵」が発生しないための事前の対策です。 

事前の対策としては、次のポイントが挙げられます。

対策のポイント

・信頼できる建築士・施工会社を選ぶ
・第三者機関の検査を活用する
・設計段階でリスクを徹底的に潰す
・写真記録・施工図を保存しておく

このように、品質の高い設計・施工がされていれば、瑕疵担保責任が発生する場面自体が少なくなります。

 

 

対策については「設計施工の分離発注」も1つの有効方法として、ぜひ検討しましょう。

設計施工の分離発注については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【設計と施工の分離発注とは?メリットと注意点を建築家が徹底解説】

 

 

 

ここで、よくある質問と回答をご紹介します。内容のおさらいもかねて、確認しましょう。

Q:住宅瑕疵担保責任保険の対象はどこまでですか?
A:構造耐力上主要な部分と、雨水の侵入を防ぐ部分が対象です。基礎・柱・屋根・外壁などが含まれます。

Q:10年保証の期間はいつから始まりますか?
A:引き渡し日から起算して10年間です。契約日や着工日ではないため、注意が必要です。

Q:保証を使うとき、施工会社が倒産していたらどうなりますか?
A:保険に加入していれば、住宅瑕疵担保責任保険法人が補修費用を負担します。安心して手続き可能です。

 

 

 

ここまで「瑕疵担保責任」について解説しました。ここで、建築家の立場からメッセージを少しお伝えさせていただきます。

私たち建築家にとって、「瑕疵担保責任」とは保険ではなく、“設計の覚悟”そのものです。
設計段階でいかに不具合の種を取り除き、品質を担保するか。
また、万が一問題が起こったとき、誠実に向き合える体制を整えているかが問われます。

家づくりを依頼する建築家や工務店が、瑕疵担保責任を「義務」としてではなく「責任」として捉えているか。ここが、信頼できる設計者を見極めるポイントです。

 

 

良心的な誠意ある建築会社であれば、瑕疵担保責任を保証するために、保険に加入しています。家づくりを検討される際は、ぜひ建築会社に保険加入の是非も確認しましょう。

設計事務所の保証については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。

【設計事務所に依頼しよう!安心要素や保証内容について徹底解説!】

 

 

 

瑕疵担保責任は、万が一のトラブルに備えるための「保険的な制度」ではありますが、それ以上に、家づくりの安心と信頼の基盤です。建築のプロとして、どんな不具合も起こさない設計・施工体制を整えること、そして発生時には誠実に対応する覚悟や保険の整備が求められます。

住まいの不具合は、構造や防水など、見えない部分にこそ潜んでいます。保証に頼らずとも長く快適に暮らせる家づくりが実現するためには、設計・施工の精度を高める努力が必要です。

 

 

私たち設計事務所では、保証制度の枠組みにとどまらず、「そもそも瑕疵が起きない建築とは何か?」を深く追求しています。高い精度の図面、現場との密な連携、そして一棟一棟に責任を持つ設計体制で、“安心と美しさ”を両立させた住まいをご提案しています。

これから家づくりを検討される方、土地選びから施工管理まで一貫して任せたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を執筆した建築家の作品については、こちら↓でご覧いただけます。

 

 

 

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