はじめに|色の選び方で、家の印象は大きく変わる
「注文住宅の内装って、どうやって決めればいいの?」「床と壁と天井、全部バラバラに選んでいいの?」
そんな不安を抱えていませんか?
SNSで見たおしゃれな家を真似しても、色のバランス設計を感覚だけで決めれば
「なんか落ち着かない…」と感じるインテリアになってしまいます。
そこで本記事では、建築家の視点から「空間が美しく整う色の選び方」を徹底的に解説します。
読み終わる頃には、色選びに自信を持って、後悔のない注文住宅づくりができるようになるはずです。

なぜ「床・壁・天井の色選び」で失敗するのか
まずはじめに、なぜ多くの方がインテリアの色彩「床・壁・天井の色選び」で失敗し、後悔してしまうのか?その理由を解説します。
失敗例に共通する3つの原因
注文住宅の内装で後悔する多くの原因は次の3つです。
- 感覚や好みで決めてしまう
「ナチュラル系が好きだから」「グレーが流行ってるから」など、バランスを考えずに主観だけで判断すると、統一感がなくなり、全体の印象が崩れてしまいます。 - 素材・質感との相性を考えていない
例えば、光沢感の強い床に、マットな壁紙を合わせると違和感が出やすくなります。色だけでなく、素材の“肌ざわり”も重要です。 - モデルハウスやインスタの情報を鵜呑みにする
色彩は空間の広さや明るさにも関係します。モデルハウスは広くて天井も高く、照明も特別仕様であったりします。そこにある色の組み合わせが、自分達の住まいでもそのまま通用するとは限りません。

素材と色を選ぶ際、“質感”も考えること
色選びと関連して、「質感」の選び方も失敗しやすいため、注意が必要です。
空間の印象は、「色 × 質感 × 光 × 形状」の組み合わせで決まります。
特に重要なのが、“艶感”や“光の反射率”による見え方の違いです。

例えば、
・同じ無垢材の床でも、オイル仕上げは光を吸収するためマットな印象に。ウレタン塗装は反射するため艶感に。
・白い壁も、ビニールクロス、漆喰、塗装では、光の拡散の仕方が異なり、空気感が全く変わってしまいます。
つまり、色を選ぶ=“素材の質感と光の関係”まで含めて設計すること。
色は単体で決めるものではなく、「空間全体の視覚構成」の一部なのです。

基本のルール|床・壁・天井は“面積の順”で決める
それでは、具体的に「床・壁・天井の色選び方」を解説します。
基本的には面積が広い場所から順に決めることをおすすめします。
床|空間の基盤となる色は最初に決める
床は、視界に最も長く映る“基準色”です。
基本ルールとして、まずは床の色から決める、あるいは、壁・天井と一緒に決めることをおすすめします。
ポイントは次の通りです。
1.ナラやオークの明るめの木目が最も汎用性が高く、家具との相性も良いのでおすすめです。
2.基本は無垢材がおすすめですが、子育て世代には耐傷性の高いフローリングや高耐久シート系もGOOD!
3.暗すぎる床(ウォールナットやダークブラウン)は高級感がある反面、空間が重くなりがちで注意しましょう。

壁|空間の背景。主張しない設計が基本
壁は、空間の中で「背景」になるエレメントです。そのため、基本は「明るく・控えめに」。白系〜明るいグレージュ程度がおすすめです。
ポイントは次の通りです。
・天井高が低めの場合は、特に圧迫感のない色彩を選ぶ。
・壁に色を入れるなら、“全体のトーン”を揃えることが重要
・アクセントを入れるのであれば、クロスはおすすめしません。インテリアの世界観を壊しやすく、長期的に飽きがくるリスクがあるため注意しましょう。

天井|基本は白一択。絶対に主張させない
天井は、明るく控えめな「白系」がおすすめです。それ以外の濃い色、色彩を採用すると、圧迫感や暗さを感じるようになります。どうしても採用したい場合は、特別な理由がなければ、天井高を高くすると良いでしょう。
ポイントは次の通りです。
・グレーやアクセントクロスの天井は、空間を圧迫し、暗く見えてしまいます。
・木目天井も、圧迫感を感じさせるため、空間計画に注意。
・天井が目立つと、“空間の高さ”が強調され、狭く感じる原因になります。

色の理論と住宅空間への応用
ここからは、「色の基本的な理論・基礎知識」と「住空間への応用の仕方」ついて解説します。
明度・彩度・色相の基礎をおさえる
色の世界において最も重要なのは、次の3要素のバランスです。
・明度(どれだけ明るいか)
・彩度(どれだけ鮮やかか)
・色相(色の種類)
シンプルで心地よい空間をつくるなら、「高明度・低彩度・同系色」の3要素を軸に色を選ぶこと。
このルールを押さえるだけで、空間は自然に整い、落ち着きのあるインテリアが完成します。

トーンを揃えることで空間が「整って」見える
空間に“統一感”を出すには、「色相」よりも「トーンの統一」が重要です。
トーンについてのポイントは次の通りです。
・ナチュラル・グレージュ・ベージュなどの“低彩度×高明度”が鉄板です。
・異なる色を使っても、“トーン”さえ揃っていれば空間はまとまります。
・壁・床・建具・家具が「色は違ってもトーンが同じ」状態が理想的。

黄金バランス|6:3:1のルール
シンプルで心地よい空間をつくるには、アクセントで、空間に抑揚をつけることもおすすめです。
ただし、ここでもバランスが大切。具体的には次の比率を目安にしましょう。
60%:床(基調色)
30%:壁・天井(背景色)
10%:建具や家具(アクセント)
この「6:3:1」の比率は、空間を自然に美しく見せるための黄金比です。
色選びに迷ったら、このルールをベースに考えてみてください。

スタイル別|色の組み合わせ実例集
ここからは、スタイル別で「色の組み合わせ実例」をご紹介します。

Case1:北欧ナチュラル|オーク系床×白壁×白天井
・床は明るいオーク柄フローリング。部屋全体が軽やかで開放的な印象に。
・壁は白〜グレイッシュホワイトで、家具の色や素材が引き立つ背景に。
・天井はもちろん白で、空間に「抜け」と「広さ」をもたらします。
→ シンプルでいて、完成度の高い空間。万人に好まれる定番スタイルです。

Case2:シンプルモダン|ナラ床×グレージュ壁×白天井
・床はナラ系でナチュラル感と高級感のバランスを。
・壁は白をベースに統一しつつ、明度高めのグレージュを差し色に使い、上質感を演出。
・建具や収納は床と同じオークで合わせ、空間全体に調和させています。

Case3:和モダン|ナラ床×白壁×木目天井
・床全体はナラで統一感を出す。
・天井は羽目板を張り、素材感で“空間の変化”を演出。
・畳スペースや、和風のタイルと間接照明を採用。
→ 素材感にこだわりたい人、和の落ち着きが欲しい人におすすめです。

Case4:子育て世代向け|耐傷フローリング×白壁×白天井
耐久性に優れたフローリングを採用し、傷・汚れに強く掃除もラクに。
白壁・白天井の組み合わせは、家具やおもちゃの色を自然に受け止めてくれます。
“生活感を目立たせない”色設計で、実用性とインテリア性の両立をはかっています。
子育て世代の間取りについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【子育て世代に選ばれる注文住宅の間取りとは?|後悔しない5つのポイント】

よくある内装の失敗パターンと対処法
1. 床が暗すぎて、空間が重たい印象に
ありがちなケース
「落ち着いた雰囲気にしたい」と狙って、濃い色のフローリングを選んだ結果、空間全体が暗く、閉鎖的に感じる結果に。
対処法
床が暗い場合は、壁・天井を白系に統一するなど“明るさ”と“抜け感”を意識したバランスを取るのが効果的です。照明も昼白色ではなく、電球色の柔らかい光を選ぶと、重さが和らぎ、落ち着きのある空間に整います。

2. 天井を木目にして、圧迫感が出てしまった
ありがちなケース
木のぬくもりを取り入れようと天井を全面板張りにした結果、圧迫感が強くなり、空間が低く感じてしまう結果に。
対処法
天井への木目材の使用は「部分的な採用」が基本。天井全体に張るのではなく、勾配天井や化粧梁まわりの一部だけに絞ることで効果的に木質感を活かせます。
また、天井高を調整し、高い天井にすることで圧迫感を和らげる手法もあります。
天井高については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【理想の天井高?高い、低い、ベストは?各メリット・デメリットや設計のポイント。】

3. 壁にアクセントを入れすぎて、散らかった印象に
ありがちなケース
複数のアクセントクロスを使って個性を出そうとしたが、結果として統一感がなく、雑然とした空間に。
対処法
色や素材の使いすぎは、空間に“ノイズ”を生みます。色数は基本3色以内に抑え、アクセントは壁ではなく建具・家具・照明で取ることで上品に仕上げましょう。
どうしても壁に変化をつけたい場合は、クロスではなく素材感(塗装・タイル)や光(照明演出)でメリハリをつけるのがおすすめです。

設計士の視点|色選びは“仕様決め”ではなく“設計の一部”
最後にここで設計士の視点から色選びについて、いくつか失敗しないためのポイントをご紹介します。
「標準仕様」だけで決めるのは危険
注文住宅の打合せでは、「この中からお選びください」といった形で、標準仕様の色や素材が提示されることが一般的です。
しかし、このとき提案する担当者がデザインの専門家でない場合には、空間全体の統一感を損ねる色や組み合わせが紛れ込んでいることも少なくありません。
だからこそ、初期段階から、建築家や設計士など、空間デザインに精通した専門家と一緒に「全体のバランスを意識して色を選ぶこと」が非常に重要です。

空間の色設計は“感覚”ではなく“設計”で整える
内装の色選びは、単なる好みや流行ではなく、設計として成立させるべきものです。
床・壁・天井の色と素材、光、空間の広さ──それぞれの関係性を読み解き、
暮らしやすく、美しく整った空間をつくるための「計画」こそが必要です。
ぜひ、感覚に頼るのではなく、建築家や設計士と一緒に「全体設計の一部として」色を決めてください。

Q&A|内装でよくある質問にプロが回答
ここからは、内装でよくある質問とその回答をご紹介します。
Q. 床・壁・天井は、どの順番で決めるのが正解?
A. 基本は、床 → 建具 → 壁 → 天井の順です。
まず、空間全体の“ベース”となる「床」を最初に決めると、全体のバランスが取りやすくなります。建具は床との相性を見て、色味や素材感を統一しましょう。壁は視界に多く入るため、主張しすぎない色、天井は“抜け感”を出す目的で、最後に軽やかにまとめるのが鉄則です。

Q. グレーの壁紙って、おしゃれだけど重くならない?
A. グレーは空間を洗練された印象に整えてくれる一方、明度が低いと圧迫感や暗さを感じさせる危険もあります。
おすすめは、明るいグレージュ(グレー+ベージュ)系。温かみがあり、光の反射率も高いため、居心地のよい中間色として使えます。暗いグレーを使いたい場合は、壁の一部やアクセントに留めると失敗しにくいです。

Q. 天井にアクセントクロスを使ってもいい?
A. 基本的にはおすすめしません。
天井は空間に“開放感”を与える部分なので、白など明度の高い色で“抜け”を演出するのが原則です。アクセントクロスを使うと、空間が狭く感じたり、視線が散ってしまう恐れがあります。
どうしても使いたい場合は、天井高が十分にある場所や、小さな空間(トイレ・書斎など)に限定するのがベターです。

Q. 子育て世代にはどんな床材がおすすめ?
A. 小さなお子様がいるご家庭では、キズ・汚れ・メンテナンス性が非常に重要です。
その点、高性能シートフローリングや突板フローリングは、耐傷性が高く、掃除も簡単。見た目も木目調で美しく仕上がります。
一方で、無垢フローリングは傷がつきやすく、定期的なメンテナンスも必要ですが、経年変化を楽しみたい方には適しています。ご家庭のライフスタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。

Q. 和モダンにはどんな床色が合う?
A. 和モダンには、赤味・黄味を抑えた“ナラ材”など、素朴な中にも現代性を感じるトーンの床材がおすすめです。
強すぎる赤味やオレンジ味のある床は、空間が重たく見えることもあるため注意が必要です。ナラの自然な色合いは、漆喰壁・塗装壁・和紙クロスなどと相性が良く、柔らかさと品のある空間を演出してくれます。

まとめ|色の選び方は、“暮らしの質”を決める設計そのもの
床・壁・天井の色は、空間の“骨格”です。
感覚や流行に流されて決めるものではなく、空間全体の設計思想に基づいて選ぶべき要素です。
内装を美しく整える鍵は、
「明度は高めに」「彩度は抑えて」「トーンを揃える」こと。
そして、「床 → 建具 → 壁 → 天井」の順に組み立てることで、空間に一貫性が生まれます。

色選びは、家づくりの終盤で「なんとなく決める」ものではありません。
むしろ、設計の初期段階から暮らしのイメージと共に考えるべき“計画”の一部です。
理想の暮らしをつくるために、
空間の色もまた、「暮らしをデザインする建築」の一部として捉えて計画していきましょう。

空間の色選びを、建築家と一緒に考えてみませんか?
床・壁・天井のバランス、光の反射、素材の質感─
色は感覚で決めるものではなく、暮らしの心地よさを左右する設計の一部です。
私たちの設計事務所では、住まい手の感性や暮らし方に合わせて、空間全体が美しく整う“色彩設計”をご提案しています。
「統一感のある内装にしたい」
「好みを活かしつつ、落ち着く空間をつくりたい」
そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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