はじめに|和モダン住宅が選ばれる理由
日本の暮らしのなかには、わびさびを美徳とする文化が息づいてきました。そんな価値観に現代の感性が加わった「和モダン」という住まいのスタイルは、今や注文住宅において定番のひとつとなっています。
しかしながら、和モダンをただ「和風+洋風」のミックスと捉えると統一感がなくなってしまい残念な結果に…

そこでこの記事では、和モダンインテリアを成功に導くための「7つのポイント」を一級建築士の視点から詳しく解説していきます。住宅を建てる前に必ず知っておきたい、“本物の和モダン”の基本を、丁寧に掘り下げていきましょう。

和モダンインテリアとは?|和モダンの定義と特徴
まずは、和モダンインテリアとは?その定義と特徴について解説します。
和モダンとは、日本の伝統美を現代的に再構成したデザイン様式のこと。
単なる「和風インテリア」ではなく、素材・色彩・間のとり方において、日本の伝統的な美意識が共存しているスタイルです。

以下のような要素を特徴として挙げられます。
・自然素材(無垢材・左官・和紙など)を使う
・カラーは白・木・黒・グレーなどのアーストーン中心
・過剰な装飾を避け、「余白」を美として捉える
・光の陰影や“間”を大切にする

なぜ注文住宅で和モダンが人気なのか?
では、なぜ、注文住宅で和モダンが人気なのでしょうか?
その理由は、注文住宅では「住まい手の思想や美意識」が空間に反映されるからです。
和モダンは、日本人の感性に深く根ざした、流行に左右されない本質的な空間をつくる設計スタイルです。素材や余白を大切にしながら、“自分たちらしい落ち着きある暮らし”をかたちにできる最適な選択肢といえるでしょう。

和モダンのインテリア7つのポイント|自然素材×シンプルデザイン
自然素材を活かした和モダンの空間は、見た目の美しさだけでなく、暮らしそのものを整えてくれます。
そこで大切になるのが、素材・色・光・空間の“整え方”。
ここからは、和モダンインテリアを本質から成立させるための「7つの具体的な設計ポイント」を順に解説していきます。

▼こちらが和モダンのインテリア7つのポイントです。
1.床材:無垢の羽目板や畳で“足元から整える”
2.壁・天井:左官と塗装で“呼吸する空間”を構成する
3.建具・家具:造作で“空間の骨格”を整える
4.照明計画:“光を見せずに空間を見せる”
5.色彩:3色以内×アースカラーで“引き算の設計”
6.収納と暮らし方:“隠す”と“魅せる”の設計
7.内と外のつながり:“間”と“ゆらぎ”の設計
それぞれ詳しく解説します。

1. 床材:無垢の羽目板や畳で“足元から整える”
床こそが空間全体の印象を決めるベースです。和モダンでは、
・ナラ・オークなど表情豊かな無垢材
・和室には縁なし畳や市松敷き
・玄関まわりにタイルやモルタル仕上げ
などを組み合わせ、「素材の差」と「質感の調和」を意識しましょう。
また、小さなお子さんがいるご家庭では、傷に強いオークやメープルなどを選ぶと、機能性と美しさのバランスを取ることができます。

2. 壁・天井:で“呼吸する空間”を構成する
壁や天井は本物の天然素材やタイルなどの上質な素材で構成すると、空間全体が和モダン特有の落ち着きと清潔感に包まれます。特におすすめなのは、
・珪藻土・塗装・左官・漆喰(調湿性能・美観)
・天井はフラット+木の羽目板の組み合わせ
・和風タイルのアクセント
クロスを使わず、このような上質な素材でまとめると、和モダンに不可欠な「品」を生み出します。
自然素材については、こちら↓の記事でも詳しく解説しています。
【自然素材のインテリアで叶える、五感にやさしい暮らし|注文住宅で健康的な空間づくり】

3. 建具・家具:造作で“空間の骨格”を整える
建具と家具もフルオーダーのものを採用し、素材感・形状・色調で統一しましょう。和モダンに既製品のドアや家具はなじみません。
・格子戸や障子などの引き戸建具
・無垢材+真鍮金物の造作家具
・引き出しや棚の“見せる・隠す”のメリハリ
このような家具や建具を設計初期から空間全体と一体的に計画されていることが、完成度の高い和モダンのインテリアを実現させます。
オーダー家具・建具については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【オーダー建具・造作建具とは?既製品との違い、メリット・デメリット、施工事例。】
【造作家具・オーダー家具とは?特注の費用は?メリット・デメリット、施工事例。】

4. 照明計画:“光を見せずに空間を見せる”
和モダン空間では、「明るい=良い」ではありません。
重要なのは、光の存在を意識させずに、空間の質を引き出す設計です。
・天井埋め込みの間接照明
・壁の陰影を活かすダウンライト
・和紙を通したペンダント照明
このような照明を組み合わせて、「照らす」ではなく「空間の良さ・特徴を際立たせる」照明設計を目指しましょう。
照明計画については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【照明計画・ライティングデザインの基本。失敗・後悔しない選び方、施工事例。】

5. 色彩:3色以内×アースカラーで“引き算の設計”
和モダン空間では色数が多いと、まとまりのない空間になってしまう傾向があります。むしろ、色を引くことで素材と構成が引き立ちます。
・基本は、白+天然の木の色味+黒 or グレー
・家具・建具・床・壁すべてで色を制限する
・植栽や焼き物で“色気”を添える。
このような設計手法は和モダンインテリアの完成度を高める上で、おすすめです。
色彩のミスは「和モダン崩壊」にダイレクトに影響するため、慎重に選んでいきましょう。
内装の色については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【内装で失敗しない!床・壁・天井の色の組み合わせ方|注文住宅で後悔しないための基本ルール】

6. 収納と暮らし方:“隠す”と“魅せる”の設計
収納が丸見えになってしまうと、和モダンの静けさが損なわれてしまうため、収納計画にも気を配りましょう。
ポイントは以下の通りです。
・壁面一体の収納建具で“存在感”を消す
・土間収納やファミリークロークでモノの定位置を設ける
・飾る収納(器・本・照明)はごく一部だけに絞る
「何を見せるか」ではなく、「何を隠すか」で余白を設けること。空間を“ととのえる”意識が大切です。
収納計画については、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【注文住宅の収納計画。失敗・後悔しない7つのポイント。適切な収納量・割合とは?】

7. 内と外のつながり:“間”と“ゆらぎ”の設計
和モダン住宅において、「外」との関係性を設計すること=空間の豊かさを決めることです。
・中庭や坪庭で視線の抜けと自然を取り込む
・軒下空間や縁側的な外部スペースで“間”を演出
・土間やタイルで内外をグラデーション的につなぐ
このようウチとソトをつなぐデザインが、和モダンらしい豊かさを生みだします。
ウチとソトについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【一体的な「内と外」を実現するポイントとデザイン手法。中間領域とバッファー。】

和モダンインテリアの施工事例
和モダンインテリアは、素材を選ぶだけでは完成しません。
どのように空間を構成し、どこに“間”や“ゆらぎ”をつくるか──その設計の組み立て方こそが、美しさを左右します。
ここでは、実際に設計・施工した事例の中から、特に「空間構成と素材の使い方」に工夫を凝らしたポイントを3つご紹介します。

中庭とLDKの連続性と障子|内と外、光と影が交わる境界のデザイン
この住まいでは、LDKと中庭を一体的に設け、屋内にいながらも自然の風景と季節の移ろいを感じられるよう計画しました。
窓際には天井いっぱいの開口部を確保し、その前面にフルハイトの障子を採用。
昼間は柔らかな光を取り込み、視線を遮りながらも空間に“にじむ明るさ”をもたらします。
障子は単なる目隠しではなく、内と外を分かつための“柔らかい境界”。
光と影を調整するフィルターとして機能し、LDKに静けさと奥行きを与えてくれます。

キッチン背面のタイルと間接照明|生活感を包み込む静かな演出
キッチンは日常的な道具が集まる場所ですが、和モダン住宅においてはその**“生活感の扱い方”が鍵となります。
この事例では、背面壁に艶を抑えた和タイルを一面に貼り、素材の凹凸が光に応じて陰影をつくるよう設計しました。
さらに天井の際に間接照明を仕込み、光源を見せずに壁面をやさしく照らすことで、キッチン全体を「静かな背景」として整えています。
調理スペースでありながら、リビングから見たときの美しい一体感を保つことができ、空間の質を損なうことなく暮らしの機能を内包しています。

畳スペースとリビングの緩やかなつながり
リビングに続く畳スペースは、段差をつけず床を揃えながら、天井の高さを少し抑えて、落ち着きのある空間に仕上げました。
仕切りはつくらず、ほんの少しの“違い”で空気感を切り替える。そんな控えめな工夫が、くつろぎやすい余白の場をつくっています。

よくある失敗|和モダンのインテリア
和モダンインテリアは、一見シンプルで取り入れやすく見える反面、思想や構成が曖昧なまま進めてしまうと、仕上がりが残念になりやすいスタイルでもあります。
ここでは、実際によく見かける“失敗例”をご紹介します。計画段階でしっかりと意識しておきましょう。

1. 木を使えば「和モダン」になると思っている
無垢材や格子を入れるだけでは、空間全体の統一感や設計思想は生まれません。
素材をどう配置し、どの照明でどう見せるかまで考えてこそ、和モダンが成立します。
表面的な要素だけを集めると、雑然とした“和風風インテリア”になってしまうので注意が必要です。

2. 色を使いすぎて空間が騒がしくなる
和モダンでは、色数を抑える「引き算の設計」が重要です。
床・壁・家具・建具で色がバラバラになってしまうと、落ち着きや余白が失われてしまいます。
「3色以内で構成する」「素材の色をそのまま活かす」ことを意識しましょう。

3. 既製品の建具や家具が空間の質を壊してしまう
せっかく自然素材やシンプルな空間構成で整えても、安価な既製品の扉や収納が目立ってしまうと、一気に空間の品が落ちます。
和モダンでは特に、建具や家具の“存在感”が大きいため、造作や素材の統一感が仕上がりにダイレクトに影響してしまうため注意しましょう。

4. 照明計画を後回しにする
照明は「明るさ」を確保するものであるのと同時に「空気感」を演出するための重要な設計要素です。
和モダンにおいては特に、間接照明や光の当たっていない場所の“影”が空間の質を高めます。
あとから照明器具を追加するのではなく、設計初期から光の当て方を計画することが重要です。

5. 「和」の要素を詰め込みすぎて重たくなる
障子・畳・格子・竹・和紙・左官・土間──
和の素材や仕上げを全部入れようとすると、空間が重くなり、現代的な“軽やかさ”が消えてしまいます。
和モダンに必要なのは、厳選と引き算。「何を入れるか」ではなく「何を削ぎ落とすか」

小さな違いが、完成度を大きく変えます。
和モダンは、単なるスタイルではなく設計思想の表現です。
「なんとなく和風で落ち着いた空間」ではなく、素材・配置・光・余白まで丁寧に設計された住まいこそ、本当の和モダン。
後悔のない家づくりのために、表面上の見た目を付け足していくのではなく、空間をととのえる視点を持つと良いでしょう。

Q&A|よくある質問-和モダンのインテリア
和モダンな住まいを検討する中で、
「和風住宅と何が違うの?」「自然素材は扱いづらくない?」「マンションでもできる?」
そんな細かな疑問を抱かれる方は少なくありません。
ここでは、設計を進める中で実際に多く寄せられる質問をもとに、
素材の選び方から照明・家具との相性・予算感まで、家づくりに役立つポイントを一問一答形式でまとめました。

Q1. 和モダンと和風住宅は何が違うのですか?
A. 和風住宅は伝統建築の要素をそのまま踏襲するのに対し、和モダンは“現代的な再解釈”です。
格子や畳などの和の要素を残しつつ、空間構成・照明・素材の扱い方などはシンプルに洗練されています。
例えば、装飾的な欄間や彫刻を排除し、光と影、余白の美しさで魅せるのが和モダンの特徴です。

Q2. 自然素材はメンテナンスが大変ではないですか?
A. 手間がかかるというより、“手をかけながら育てる”イメージです。
無垢材や左官壁は確かに経年変化がありますが、それは劣化ではなく“味”となって深みを増します。
日常の掃除や定期的なオイル塗布、乾拭きなどで、むしろ住まいへの愛着が増していくはずです。

Q3. マンションでも和モダンなインテリアは可能ですか?
A. 可能です。空間のつくり方に工夫をすれば、和モダンの空気感は十分表現できます。
特に照明の計画・素材の選定・色数の抑制が鍵になります。
たとえば、床材を無垢フローリングに張り替えたり、壁の一部を塗装で仕上げたりするだけでも、印象は大きく変わります。

Q4. 北欧家具と組み合わせても違和感はありませんか?
A. とても相性が良いです。色と素材のバランスにさえ気をつければ、むしろ“相乗効果”が生まれます。
和モダンと北欧インテリアはどちらも「自然素材」「シンプル」「余白」「機能美」を重視する点で共通しており、
無垢の家具やファブリック素材を落ち着いたトーンで合わせれば、統一感ある空間になります。

Q5. 和モダンな空間におすすめの照明はありますか?
A. 直接光を避けた“間接照明”や“低照度のスポット”がおすすめです。
和モダンでは「光を照らす」のではなく、「光の当たっていない部分」を大切にします。
足元照明・間接照明・陰影の出るダウンライトを組み合わせることで、空間に奥行きと静けさが生まれます。

Q6. 施工費は高くなりますか?
A. 一般的な規格住宅に比べれば若干高めですが、“本質的な価値”はコスト以上です。
自然素材や造作家具、左官などは手間がかかるためコストが少々上がる傾向にあります。
ただし、長く愛着を持って住める空間になることを考えれば、単なる価格比較では測れない満足度が得られるはずです。

まとめ|和モダンの住まいは「思想」でつくる
和モダンという空間は、単に「和風っぽい」ものではありません。
無垢材や畳、障子といった素材をどう使うかだけでなく、光の当たり方、空間のつながり、余白のつくり方までを丁寧に設計することで、本質的な美しさが立ち上がります。

今回の記事では、以下のような和モダンインテリアのポイントを解説しました。
・無垢材・左官・畳など自然素材の扱い方
・リビングと畳スペースのつながりのつくり方
・照明と陰影を設計に取り込む工夫
・建具・家具・素材の“引き算”による調和
・よくある失敗と実例から学ぶ設計のヒント
・FAQによる具体的な疑問解消

和モダンな住まいの完成度は、“設計の精度”と“思想の一貫性”で決まります。
ただ木を使えばいい、障子を入れればいいという話ではなく、暮らしの動線・目線の抜け・空間の緩急といった「住まいの物語」を、素材と構成で丁寧に紡いでいくことが大切です。

私たちは、見た目の美しさだけでなく、五感と心で心地よさを感じられる空間づくりを大切にしています。
「飽きのこない、静かで美しい空間に住みたい」と感じている方は、ぜひ家づくりの初期段階から、和モダンという選択肢を建築家と一緒に検討してみてください。
その選択は、完成後の満足度と、住み続けるほどに愛着のわく住まいへとつながっていくことでしょう。

和モダンな空間、建築家と一緒につくってみませんか?
素材感、光のにじみ、余白の心地よさ──
和モダンの住まいは、「控えめであること」が、どこまでも豊かさを生む設計です。
私たちの設計事務所では、住まい手の感性と暮らしに寄り添いながら、
静けさと温かみを併せ持つ“本物の和モダン住宅”をご提案しています。

「素材にこだわった和モダンの家をつくりたい」
「シンプルで美しく、飽きのこない住まいにしたい」
そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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