家づくりを考え始めたとき、「建築家に頼むか?」「ハウスメーカーに一括で任せるか?」という選択に直面します。特にこだわりの住まいを実現したい方にとって、本来見逃せないのが「設計と施工の分離発注」という方式です。この記事では、設計と施工を分けて依頼するメリットや注意点を、実際の建築家の視点から詳しく解説していきます。

1. 設計と施工の分離発注とは?
まずは、設計と施工の分離発注とは、どのような発注方法なのかについて説明します。
分離発注とは、設計と施工(工事)を別々の会社・契約で進める発注方法です。具体的には、設計を建築家や設計事務所に依頼し、施工を別途、信頼できる工務店に発注します。

設計施工一括方式との違い
ハウスメーカーや工務店の多くが採用するのは「設計施工一括方式」。これは、プラン作成から施工、アフターサービスまでを一社が担うスタイルです。
一方、分離発注では、設計者と施工者が独立した関係にあります。建築家は施主の代理人として、図面通りに施工が進んでいるか、見積金額の妥当性などを監理します。つまり、チェック機能が働く構造になっており、品質や透明性が高まりやすい特徴があります。

2. 分離発注の具体的な流れ
続いて、分離発注の具体的な流れを解説します。
分離発注は、以下のような流れになります。
- 建築家へ設計を依頼(ヒアリング・設計契約)
- プラン作成と調整(基本設計・実施設計)
- 複数の施工会社へ見積もり依頼
- 見積内容を建築家とともに比較・調整
- 施工会社を決定し、施工契約を結ぶ
- 着工(建築家が監理者として現場をチェック)
- 竣工・引き渡し
このように、設計と施工の間に「建築家」が入ることで、設計意図が正しく施工に反映される体制が整い、妥当性・透明性の高い金額で建築工事を依頼することができるのです。

3. 分離発注のメリット5選
ここまでは、分離発注の仕組みをご説明しました。ここからは、分離発注のメリット・デメリットを解説します。
まずは、メリットから。分離発注のメリットは次の5点です。
1. 設計の自由度が高い
ハウスメーカーの規格型住宅とは違い、間取り・素材・仕様に制限がありません。土地形状や風景を読み取りながら、“その家族のためだけの”唯一無二の住まいを提案できます。

2. 品質管理が厳格になる
建築家が現場監理を行うことで、手抜き工事や図面無視の施工を防ぎます。第三者の視点が入ることで、品質や納まりが担保されやすくなります。

3. コストの透明性
工務店からの見積りは、建築家が仕様に基づき精査します。材料費・人工費・諸経費などが明示されるため、「何にいくらかかっているか」が分かりやすく、不要な費用のカットにもつながります。

4. 信頼できる施工者を選べる
建築家が過去の経験から推薦する工務店や、地元の優良業者など、選択肢が広がります。施主と相性の良い職人との出会いにもつながる可能性があります。

5. 図面と実物の乖離が減る
図面上では理想的だった設計も、現場で判断がずれてしまうことはよくあります。しかし建築家が監理する分離発注では、ディテールや設計意図をきちんと施工者に伝えることで、完成度の高い住まいを実現できます。

4. 分離発注の注意点・デメリット
続いて、デメリットを解説します。。分離発注のデメリットは次の4点です。
1. 手間と時間がかかる
設計・施工と別々の契約が必要になるため、やり取りや確認事項が増えます。また、施工会社の選定や見積り比較も必要になり、施主の判断回数も多くなります。一方、その分、思い通りに計画・精査することが出来ます。

2. コストコントロールに工夫が必要
設計の自由度が高い反面、コストの上振れ可能性もあります。建築家としっかりすり合わせながら、優先順位をつけてコスト調整する力が求められます。しかしながら、コスト調整にも重きを置く建築家に依頼すれば、予算オーバーで建てられなくなるようなことはありません。
建築家・設計事務所のコストパフォーマンスについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【建築家・設計事務所が最もコストパフォーマンスに優れる!?設計料・費用面を解説!】

3. 建築家選びが肝になる
「誰に設計を頼むか」によって、家づくりの方向性や成功確率が大きく変わります。相性・価値観のマッチングが重要です。
建築家選びについては、こちら↓の記事で詳しく解説しています。
【建築家の設計事務所、タイプごとの特徴や選び方を徹底解説!】

4. 施工者との関係性構築が必要
建築家が間に入るとはいえ、施主が完全にノータッチではいられない場面もあります。現場の様子に関心を持ち、意思疎通に協力することで、より良い成果につながります。

5. 分離発注に向いているのはどんな人?
では、分離発注に向いている方は、どのような方なのでしょうか?そんな質問に答えます。
デザインや素材に強いこだわりがある方 ・自分達だけの空間を実現したい方 ・機能性や住み心地を重視したい方・無駄、不当なコストをかけたくない方・工事の内容や工程を正確に把握したい方 ・時間やコミュニケーションの手間を惜しまない方
このような方々は、断然、分離発注がおすすめです。
逆に、「忙しくて打ち合わせに時間をかけられない」「漠然と不安だから全体を一括で任せたい」という方には、設計施工一括の方が向いている可能性もあります。

6. 実際の事例:中庭のある都市型住宅(愛知県)
ここで、分離発注の実際の事例を見てみましょう。
私たちが手がけた、こちらの住まい。狭小地に建つ都市型住宅でありながら中庭を採用することで、周辺環境が気にならない開放的な空間が広がる、こちらの住宅も、もちろん分離発注です。
建物構成:2階建て+中庭+ロフト
設計ポイント:視線の抜け、カーテン不要の心地よい暮らし、自然素材
分離発注だからこそ、建築家が現場で細部まで確認を行い、素材の風合い・木部の納まり・オーダー家具・建具、隅々まで、空間の質感にこだわり、精密に調整することができました。

7. よくある質問(FAQ)
Q. 分離発注だと費用が高くなりますか?
一概には言えません。設計料は別途発生しますが、施工費の見直しや不要な工事の削減により、最終的なコストが下がるケースもあります。建築家の力量によるところも大きいでしょう。私たちの設計事務所では、最終的なコストは大きく下がる傾向にあります。

Q. 建築家と工務店が対立することは?
信頼関係ができているパートナー同士であれば問題ありません。むしろ、それぞれの専門性が活きることで、より良い家づくりにつながります。
Q. アフターサポートはどうなりますか?
施工会社が担当するケースが多いですが、建築家も定期点検や相談に応じる事務所もあります。契約時に確認しておくと安心です。

8. まとめ|分離発注は“手間”の分だけ“理想”に近づく
分離発注は、「少し手間をかけてでも、納得のいく住まいをつくりたい」方にとって、非常に有効な手段です。建築家の存在は、設計の自由度・現場の品質・コスト、あらゆる面を高めるもの。
工務店任せにするのではなく、「一緒につくる」という視点で家づくりに関わることで、住まいへの愛着も深まっていくはずです。
当設計事務所では、土地探しから設計、工務店選定、竣工後のフォローまで、家づくりを一貫してサポートしています。分離発注を検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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