はじめに|「補助金で安くなる」は、ちょっと違うかもしれません
「補助金があるらしいから、少しは得できるかも」
「リノベでも高くなりそうだから、制度を活用したい」
そんなふうに考える人は多いのではないでしょうか?
でも、「使えると思っていたのに使えなかった」
「申請のタイミングを逃して受け取れなかった」
「制度に合わせた設計にしたら、思っていた間取りと違ってしまった」
…という声も、少なくないのが実際のところです。

補助金や減税制度は、「安く済ませるための魔法」ではありません。
あくまで、“適切な設計や暮らしの方向性が決まったあと”に、利用できるかもしれないといった補助の一つです。
本記事では、2025年時点で利用できる補助金・助成金・減税制度をわかりやすく整理しながら、それらをリノベーションにどう活かせばよいのか?どのような落とし穴があるのか?について、一級建築士の立場から丁寧に解説します。
▼こちらの記事もおすすめです。
「リノベーション=お得」は本当?価格高騰と費用の現実|リノベの落とし穴と予算の真実-建築家が徹底解説

補助金とリノベーションの関係を“誤解”していませんか?
「補助金が使えるなら、お得にリノベできるかも」
そう思うのは自然なことです。
けれど、制度に合わせて計画を組むと、かえって“本当に必要なリノベ”を見失うことも。
そこでまずは、補助金にまつわる“よくある誤解”と、暮らしを軸にした賢い考え方を解説します。

「補助金=お得」というイメージの落とし穴
補助金制度には、確かに魅力があります。
条件を満たせば、数十万円〜百万円を超える金額が支給されるケースもあり、リノベーションの総費用の一部を軽減できることも。
けれども、それだけを目的にリノベーションを進めるのは危険です。
たとえば、
・対象となる工事内容が限定されている
・対象となる設備や材料が細かく指定されている
・工事前の申請が必須で、タイミングを逃すと受けられない
・登録された事業者でないと申請できない
このような“制約”があるため、補助金に合わせて計画を組むと、「本当に必要なリノベ」からズレてしまう可能性があります。
本来、リノベーションの主役は「制度」ではなく「暮らし」です。
優先すべきは、“どんな住まいにしたいか”“どんな暮らし方を実現したいか”ではないでしょうか?
その答えを整理した上で、補助金が「うまくハマるかどうか」の検討をはじめていきましょう。
▼こちらの記事も参考になります。
【完全ガイド】注文住宅は何から始める?|後悔しないための最初の一歩と正しい順番・注意点まとめ

制度には“条件”と“順序”がある
ほとんどの補助金は、「事前申請」が基本です。
計画を固めた後、契約・着工する前に、書類の提出や審査が必要になります。
ここでよくある失敗が、
・設計や工事がある程度進んでから制度に気づく
・対象設備ではないものを選んでしまっていた
・工事費が一定額に届かず、対象外だった
といったものです。
「使えると思っていたけど、実は対象外だった」というケースは、珍しくありません。
制度は年によって変わるうえに、予算が早期に終了することもあります。
申請要件やスケジュールをきちんと確認することを、最初の一歩としましょう。

補助金は「整った設計」に後から乗せるもの
リノベーションの核心は、空間や暮らしをどう再設計するかにあります。
そのため、設計がしっかりと固まり、方向性が決まったあとで、「この部分は制度の対象になるかも」と確認し、補助金を“上乗せ”する。そのような順序が理想的です。
制度は設計を支える「補助輪」のようなもの。
暮らしのビジョンが明確であればあるほど、制度は無理なくフィットし、“おまけ”ではなく“本当にありがたい支援”として機能してくれるようになるでしょう。
▼こちらの記事もおすすめです。
【完全ガイド】リノベーション費用の内訳と予算配分の戦略‐“後悔しない・失敗しない”ための判断基準とは?

2025年に使える国の補助金・助成金制度一覧
リノベーションに活用できる補助金は、年度によって大きく変わります。
2025年も例外ではなく、複数の制度が存在していますが、すべての制度が「誰でも使える」わけではありません。
ここからは、2025年現在、主に「戸建て住宅のリノベーション」で活用されやすい補助金制度を、実際の使いやすさ・申請条件・上限額などの観点から整理します。

住宅省エネ2025キャンペーン(国土交通省・経済産業省・環境省)
3つの省庁が合同で実施している支援策で、2025年度の目玉とも言える制度です。
省エネ性能の高い住宅改修(断熱・設備の更新など)を対象に、最大200万円前後の補助が出る可能性があります。
▼主な対象事業|住宅省エネ2025キャンペーン
- 子育てエコホーム支援事業
高断熱窓・高効率給湯器・節水トイレ・省エネ基準適合住宅のリフォーム等
→ 最大30〜60万円/戸(世帯条件・工事内容によって異なる) - 先進的窓リノベ事業2025
断熱性能の高い窓(内窓・外窓・ガラス)への交換
→ 最大200万円/戸(窓の性能・面積・数による) - 給湯省エネ事業2025
エコキュート・ハイブリッド給湯器・エネファームなどの高効率給湯設備
→ 機器1台ごとに5〜15万円の補助
▼注意点|住宅省エネ2025キャンペーン
・「対象設備」を使用する必要がある(カタログで事前確認が必要)
・一定の基準を満たす登録事業者のみが申請可能
・補助金申請は工事前に予約登録 → 工事完了後に正式申請という2段階
・予算が終了次第、受付締切(2024年は想定より早く終了)

長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)
既存住宅を「長期優良住宅」に準じた水準に向上させるリノベーションに対して、設計・施工費の一部を国が支援する制度。性能向上リノベーションに特化した補助金です。
▼主な対象工事|長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)
・耐震性の向上(耐震補強・構造再編)
・断熱性能の強化(断熱材・開口部など)
・劣化対策・維持管理性・可変性・バリアフリーなど
▼補助額(2024年実績ベース)|長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)
| リフォーム内容 | 補助上限 |
|---|---|
| 性能向上のみ | 最大100万円/戸 |
| 長期優良住宅として認定取得 | 最大150万円/戸 |
| 三世代同居対応+認定取得 | 最大200万円/戸 |
▼注意点|長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)
・「インスペクション(既存住宅状況調査)」の実施が必須
・国の定める技術基準への適合が必要
・設計・施工ともに制度の内容を理解している事業者との連携が前提
・計画提出・採択・事後評価まで手続きが多く、事前の時間確保が必須
▼長期優良住宅については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【後悔しないために】長期優良住宅は本当に損しない?|補助金・資産価値・寿命のウソと真実【注文住宅の落とし穴】

介護保険住宅改修費の支給制度(厚生労働省)
要介護・要支援認定を受けている高齢者の自宅改修が対象。
バリアフリーリフォームを進める上で、利用しやすく汎用性の高い制度です。
▼対象工事|介護保険住宅改修費の支給制度(厚生労働省)
・手すり設置、段差解消、床材変更(滑り止め)、扉の交換(引き戸化)など
・洋式トイレへの改修 など
▼補助額|介護保険住宅改修費の支給制度(厚生労働省)
・工事費用上限:20万円まで(補助率9割)
・実質最大補助額:18万円
▼注意点|介護保険住宅改修費の支給制度(厚生労働省)
・ケアマネージャーの介入・書類作成が必要
・要介護・要支援認定を受けていないと使えない
・原則として1人1回まで(再支給には要件あり)

自治体独自の補助金(耐震・空き家・三世代同居など)
全国の市区町村で、リノベーションに関連した独自の補助金制度が用意されています。
特に次のような項目での補助が多く見られます。
・耐震診断・耐震補強:築年数の古い住宅に対して、診断〜工事まで支援
・空き家対策リノベ:移住・定住促進のため、空き家改修費用を一部負担
・子育て世帯の改修支援:若年ファミリーの定住を目的とした補助制度
・三世代同居・近居促進:同一敷地・近隣住居への住み替え・改修支援
▼注意点|自治体独自の補助金(耐震・空き家・三世代同居など)
・地域によって内容・条件・補助額が大きく異なる
・年度の途中で予算上限に達し、募集終了となるケースが多い
・申請は必ず工事前に行う必要あり

まとめ|2025年に使える主要な補助金・助成金制度
2025年に使える主要な補助金・助成金制度を下記の表にまとめました。
【2025年版】リノベーションで活用できる主な補助金制度一覧
| 制度名 | 対象工事・内容 | 補助額(上限) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 住宅省エネ2025キャンペーン (国交省・経産省・環境省) | 断熱改修・省エネ設備(窓・トイレ・給湯器など) | 最大200万円程度(組合せによる) | ・対象設備が指定されている ・登録事業者のみ申請可 ・事前予約+工事後申請の2段階 ・予算終了次第締切 |
| ┗ 子育てエコホーム支援事業 | 省エネ基準適合リフォーム全般 | 最大30〜60万円/戸 | ・世帯条件や工事内容によって変動 |
| ┗ 先進的窓リノベ事業2025 | 高断熱窓への交換(内窓・外窓) | 最大200万円/戸 | ・窓の面積・性能・数量で変動 |
| ┗ 給湯省エネ事業2025 | エコキュート・ハイブリッド給湯器など | 5〜15万円/台 | ・機器ごとの設定あり |
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業 (国土交通省) | 耐震・断熱・劣化対策・バリアフリーなど | 最大100〜200万円/戸 | ・インスペクション必須 ・国の技術基準に適合が必要 ・計画〜完了まで手続き多め |
| 介護保険住宅改修費支給制度 (厚生労働省) | 手すり・段差解消・滑り止め・引き戸・洋式トイレ化など | 上限20万円(補助率9割=実質18万円) | ・要介護・要支援認定が必要 ・ケアマネの関与が必須 ・原則1人1回のみ |
| 自治体独自の補助制度 (市区町村) | 耐震改修・空き家活用・子育て・三世代同居など | 数万円〜100万円以上(自治体による) | ・内容・条件・金額が地域ごとに異なる ・予算枠に達すると早期終了あり |
制度ごとの金額や条件だけでなく、「どこに重心を置く制度なのか?」という意図を汲み取ることが、失敗しない活用の鍵となります。
▼リノベーションの断熱については、こちらの記事で解説しています。
【リノベーション×断熱】失敗しない“リノベーション”で断熱・省エネ性能を高める方法|制度・設計・費用を徹底解説

減税制度でさらに得する方法:リノベの節税戦略
補助金制度と並んで見逃せないのが、「減税(税制優遇)」です。
リノベーションでは、工事内容やローンの条件を満たすことで、所得税・固定資産税の一部が軽減される制度が用意されています。
金額のインパクトも大きく、うまく組み合わせれば数十万円〜100万円以上の節税につながることも。
ここからは、2025年時点で利用可能な主な減税制度を紹介します。

1. リフォーム促進税制(所得税控除)
バリアフリー・耐震・省エネ・同居対応などのリフォームを行うと、所得税の一部が控除される制度です。
補助金と違い、制度の申請タイミングに比較的柔軟で、個人でも利用しやすいのが特徴です。
▼主な対象工事と控除内容|リフォーム促進税制(所得税控除)
| リフォーム内容 | 控除率 | 控除額上限 |
|---|---|---|
| 耐震改修 | 工事費の10% | 最大25万円/年 |
| バリアフリー改修 | 工事費の10% | 最大20万円/年 |
| 省エネ改修 | 工事費の10% | 最大25万円/年 |
| 同居対応改修 | 工事費の10% | 最大50万円/年 |
※条件により、さらに特例で最大62.5万円まで拡大するケースもあり
▼注意点|リフォーム促進税制(所得税控除)
・工事費100万円以上(または一定規模)などの要件あり
・自己居住用であることが前提
・所得税からの控除なので、税額が少ない人は恩恵も小さい
・確定申告が必須(書類提出が必要)

住宅ローン減税(リフォームにも適用)
10年以上のリフォームローンを組んだ場合、年末のローン残高の一定割合が所得税から控除される制度です。
▼2025年の主な条件(※改正により変更の可能性あり)|住宅ローン減税
・工事費100万円以上
・自己の居住用住宅(戸建・マンションどちらも対象)
・延べ床面積50㎡以上(または所得条件で40㎡以上も可)
・ローン期間が10年以上
・耐震・省エネ・バリアフリー・長期優良化など、要件を満たす改修
▼控除額|住宅ローン減税
・年末ローン残高の0.7%×10年間
・最大控除額:年間14万円×10年=最大140万円
▼注意点|住宅ローン減税
・年収制限あり(例:合計所得2,000万円以下など)
・毎年の確定申告 or 年末調整が必要
・他の制度との併用可否は事前確認を
▼住宅ローンについては、こちらの記事で解説しています。
住宅ローンとつなぎ融資の仕組み|注文住宅の資金調達術と失敗しない支払い設計

固定資産税の減額措置(翌年の税負担が軽くなる)
一定の改修を行った住宅に対して、工事完了の翌年に固定資産税が一部減額される制度です。
住み続ける前提の人には、特にメリットがあります。
▼主な対象工事と軽減内容|固定資産税の減額措置
| 改修の種類 | 減税内容 | 条件例 |
|---|---|---|
| 耐震改修 | 固定資産税の1/2軽減(1年間) | 昭和57年以前建築、工事費50万円以上など |
| 省エネ改修 | 固定資産税の1/3軽減(1年間) | 築後10年以上、開口部断熱など |
| バリアフリー改修 | 固定資産税の1/3軽減(1年間) | 65歳以上、要支援認定者など |
| 長寿命化改修 | 固定資産税の1/3〜1/2軽減(2年間) | 長期優良住宅の認定取得など |
▼注意点|固定資産税の減額措置
・工事後すぐに申請しないと軽減措置を受けられない場合がある
・自治体により条件や必要書類が異なる
・減税されるのは「翌年分のみ」であり、長期的な軽減ではない

補助金と減税制度は「併用」が可能(ただし条件あり)
制度によっては、補助金と減税制度を併用することが可能です。
▼例
・住宅省エネ2025キャンペーン(補助金)+リフォーム促進税制(所得税控除)
・介護保険住宅改修+固定資産税の軽減
ただし、併用には条件があり、「補助金の対象経費と重複する部分は控除対象外」など、計算が複雑になる場合もあります。
制度を使いたい場合は、設計段階から相談できる事業者や税理士との連携が理想的です。

減税制度は「使いやすくて、見落とされやすい」
補助金に比べて、減税制度は「手間がかからない」のが特徴ですが、見落とされやすい傾向があります。
とくに、住宅ローン控除や固定資産税の軽減措置は、知らないだけで損してしまうケースが非常に多いようです。
・補助金が使えなかった
・工事内容が制度の対象外だった
・でも、減税は使えた
このような場面も多いため、設計や契約の段階で、制度全体を一覧しておくことが大切です。
▼こちらの記事もおすすめです。
中古住宅購入+リノベーションの流れ・落とし穴|物件選び・スケジュール・ローン・予算-“見えないリスク”を徹底解説

補助金活用で“満足度の高いリノベ”を実現するコツ
制度を活用して補助金や減税を受けられることは、確かにうれしいことです。
しかし、「補助金を使ったはずなのに、なんだか満足感が低い」
そんなケースも、実は少なくありません。
ここからは、「制度をうまく使う人」と「制度に振り回される人」の違いを整理しながら、満足度の高いリノベーションを実現するための“制度との向き合い方”を紹介します。

1. 「お金をかけた」=「満足度が高い」とは限らない
補助金を活用する場合、ついこう思ってしまう方も多いのではないでしょうか?
「せっかく補助が出るなら、この断熱材にしておこう」
「これを入れたら金額が上がるけど、補助金で相殺できるし…」
しかしながら、その設備や性能が「自分たちの暮らしに本当に必要だったか?」という視点を忘れてしまうと、単にお金をかけただけの“重たい家”になってしまうことがあります。
満足度は、「お金をかけた総量」ではなく、お金の使い方の“納得感”で決まります。
制度に合わせて予算を広げるのではなく、「やりたかったことに、制度が使えた」という順序が理想です。

2. 優先順位を整理し、「制度に合わせすぎない」
リノベーションでは、やりたいことがたくさん出てくる一方で、予算には限りがあります。
そのときに重要なのが、やるべきこと・やらなくていいことの仕分けです。
例として、以下のような考え方が有効です。
| 優先順位 | 内容例 | 補助金・減税の対象? |
|---|---|---|
| 最優先 | 構造の安全性、断熱、雨漏りの修繕 | 多くが対象 |
| 必要 | 動線や収納の改善、光の入り方 | 一部が対象 |
| 好みによる | デザイン性の高い素材、最新設備など | 多くが対象外 |
このように、制度の対象かどうかに関係なく、自分たちの優先順位を先に決めておくことが、
「制度に振り回されない家づくり」のポイントになります。

3. “制度のために”やるのではなく、“暮らしのために”制度を使う
本来、補助金や減税制度は、暮らしの困りごとをサポートするための仕組みです。
だからこそ、「困っていないのに無理に使おうとする」と、かえって不自然な家になることもあります。
たとえば…
・開口部が少なく日当たりも問題ないのに、補助金対象の高性能サッシに無理やり交換
・同居予定がないのに、三世代同居支援のために間取りを犠牲にする
・耐震補強の必要がない部分にも費用をかけてしまう
このような「制度に従って家をつくる」のではなく、「制度を“使わせてもらう”感覚」で向き合うことが重要です。

4. 制度を“部分的に使う”という選択肢もある
補助金というと、「使う or 使わない」の二択だと思われがちです。
しかし、実際には「対象になる工事だけに限定して使う」という柔軟な使い方も可能です。
たとえば…
・窓の断熱改修だけは「先進的窓リノベ」制度を使う
・手すり設置だけは「介護保険住宅改修」を利用する
・耐震補強だけは「長期優良住宅化リフォーム」の枠を活用する
このように、「必要なところだけ制度に乗せる」ことで、設計の自由度を保ちながら、賢く支援を受けることができます。

5. 設計がしっかりしていれば、制度は“自然にフィットする”
満足度の高いリノベーションは、制度から逆算してつくるのではなく、暮らしから逆算してつくられます。
最初にあるべきなのは、
・どんな暮らしがしたいか
・何に困っていて、どこを変えたいか
・どんな空間なら、心地よく暮らせるか
そのイメージが明確で、しっかりと設計されていれば、あとから補助金や減税制度が“無理なくかみ合ってくる”ことが多いのです。
制度は「計画の軸」ではなく「結果的に使えるラッキー要素」として活用する。
そのくらいの距離感が、ちょうどいいかもしれません。
▼こちらの記事もおすすめです。
リノベーション、やめたほうがいい?|後悔・失敗を招く“理想と現実”のズレと、本質的な価値・選ばれる理由

補助金を活かすための設計の流れと注意点
補助金や減税制度をうまく活用するためには、「申請のタイミング」や「手続きの流れ」を把握しておく必要があります。
制度の内容だけを知っていても、順番を間違えると“使えなくなる”ことがあるからです。
ここからは、実際のリノベーションの流れの中で、補助金を活かすために押さえておきたいポイントを解説します。

1. 最初に「制度ありき」で動かないことが大前提
これは前章でも述べたとおりですが、まず何よりも大切なのは、「制度を使うための家づくり」にしないこと。
制度が使えるかどうかを先に考えるのではなく、
・暮らしの課題や希望を整理する
・必要な工事内容を決める
・信頼できる相談相手(設計者・施工者)と方向性を共有する
という順序を大切にした方が、結果的に補助金も使いやすく、ムダがありません。

2. ほとんどの補助金は「契約・着工前に申請が必要」
制度によって詳細は異なりますが、共通しているのは、
申請は必ず「契約前」「着工前」までに行う必要があるということ。
具体的には…
・設計内容・見積書の確定
・申請書類・図面の作成
・対象設備・材料の確認(制度で指定されていることが多い)
・登録事業者の確認(制度によっては登録された事業者のみが対象)
など、“申請の準備”だけでも1〜2週間以上かかることがあります。
つまり、「もう工事始めたい」「急いで契約したい」となってからでは、手遅れになる場合があるのです。

3. 対象になるかどうかは、工事内容・規模・製品で決まる
補助金は「リノベをすれば出る」というものではなく、対象となる工事内容・製品・面積などが厳密に定められています。
▼例
・「先進的窓リノベ」では、窓の断熱性能が等級4以上であること
・「長期優良住宅化リフォーム」では、耐震・断熱・劣化対策などを複合的に向上させること
・「住宅省エネ2025キャンペーン」では、補助対象の認定製品を使用すること
・「介護保険住宅改修」では、バリアフリー目的の明確な改修であること(要ケアマネの書類)
そのため、「とりあえず決めた仕様」が制度対象外だった、というのはよくある話です。
設計や設備の仕様を決める前に、制度の要件を確認しておく必要があります。

4. 申請は基本的に“専門事業者”が代行する
補助金の申請は、多くの場合、設計者・施工者・登録業者が代行します。
これは、申請のために必要な書類や図面、技術的根拠の説明などが一般の人には難しいためです。
ただし、事業者が制度に不慣れだったり、申請業務を請け負っていなかったりする場合、「申請ができなかった」「期限に間に合わなかった」となることも。
そのため、事前に以下を確認しておくと安心です。
・この事業者は補助金制度に詳しいか?
・申請や手続きを代行してくれるか?
・登録事業者として制度に対応しているか?
制度のことは「言えばやってくれるだろう」ではなく、最初から確認しておくことが大切です。

5. 書類の準備とスケジュール管理がカギ
多くの制度で求められる書類は、下記のようなものがあります。
・補助対象工事の図面・仕様書・見積書
・対象設備の証明書(性能・型番)
・工事前後の写真
・申請書・委任状・印鑑証明など
これらを揃えるのには時間がかかるため、計画段階からスケジュールに組み込んでおくことが必須です。
特に、制度によっては「工事前の現況写真」が必要なこともあり、着工前に写真を撮り忘れてしまうと申請できなくなるケースもあります。

6. 補助金の採択や支給は「後払い」が基本
補助金は、工事が完了し、実績報告を終えてから「精算」されることが多く、基本的には“後払い(事後精算)”です。
つまり、いったん全額を支払った上で、そのあとに補助金として「一部が返ってくる」という流れになります。
そのため、補助金をあてにして資金計画を組むのではなく、
・一時的に自己資金やローンで対応できる準備をする
・補助金が“入金されるタイミング”を事前に確認しておく
といった、現実的な資金繰りのシミュレーションも欠かせません。
▼こちらの記事はリノベーションの場合でも、参考になります。
【注文住宅の「契約」完全ガイド】契約の流れ、費用、注意点、設計契約と工事請負契約の違い-失敗しないために徹底解説

補助金に“引っ張られない”リノベーションという選択
リノベーションにおける補助金制度は、うまく活用すれば非常に有益です。
ですが、一歩間違えると「制度に合わせて家をつくる」という、本来望んでいなかった方向に引っ張られてしまうこともあります。
ここからは、制度の有無に関わらず“本当に満足のいくリノベーション”を叶えるための視点を整理していきます。

1. 制度のメリットは“限定的”である
補助金や減税制度は、たしかに数十万〜百万円単位の支援になることもあります。
けれど、リノベーションの総額が1,000万円前後〜それ以上になることを考えると、
制度の効果は「限定的な後押し」にすぎないとも言えます。
つまり、
・制度がなくても、その工事をやりたいと思うか?
・補助がなくても、その設備が必要だと思えるか?
という視点で判断できていれば、仮に制度が使えなくても後悔はしません。
制度は「背中を押してくれる存在」であって、「進路を決める存在」ではないのです。

2. “制度ありき”の設計には、リスクがある
補助金の対象になる工事や設備を優先して設計を進めると、気づかないうちに次のような事態に陥ることがあります。
・必要のない場所にまで断熱材を入れてしまう
・性能を満たすために開口部が小さくなり、日射や通風が悪くなる
・同居やバリアフリー要件のために、不要な間取り変更をする
・支援を受けるための“書類づくり”が、家づくりそのものよりも優先されてしまう
リノベーションの主役は、行政でも制度でもありません。
家に住む人自身の暮らし方・価値観・希望です。
その軸がブレないようにするには、「制度は最後に確認する」くらいの気持ちがちょうどいいかもしれません。

3. 「制度に縛られない自由」が、結果的に満足度を生む
補助金や減税制度には、共通して“条件”があります。
一定の性能や認定、登録事業者との契約、使える設備の指定など、細かい縛りが多いのが実情です。
その制度を使うことで、設計の自由度が下がったり、好みの素材が使えなくなったりすることもあります。
そう考えると、「制度を使わない」ことによって得られる自由は、金額以上の価値を持っているかもしれません。
・自由に間取りを組める
・好きな素材を選べる
・スケジュールも縛られない
・自分のペースで決められる
リノベーションで最も大切なのは、予算を抑えることではなく、“納得できる形”で暮らしを整えること。
制度に頼らずとも、それが実現できていれば、補助金の有無は「小さな差」にすぎません。

4. 本当に価値があるのは「制度を使ったこと」ではなく、「暮らしが整ったこと」
たとえば、補助金をフル活用して100万円得したとしても・・・
その結果、動線が不便だったり、好みでない素材に囲まれた空間になっていたら、それは「安くなった」ではなく、「コストのかけ方を間違えた」ということになります。
一方で、補助金を使わなくても、「心地よい」「気に入っている」「家族が喜んでいる」、そんな実感があるなら、それこそが“本当の価値”ではないでしょうか。
制度の有無は一時的なことですが、住まいはこれから何十年も使い続ける場所です。
だからこそ、「制度に従う」のではなく、「制度を選ぶ」という感覚で向き合っていくことが大切です。
▼こちらの記事も参考になります。
“暮らしやすい家”のつくり方|建築家が語る-性能では測れない“注文住宅の本質”と“設計の考え方”

Q&A|リノベーションの補助金について-よくある質問
ここでは、リノベーションの補助金や減税制度について、実際によく聞かれる疑問をQ&A形式で整理しました。
制度をうまく活用するための「つまずきやすいポイント」も交えながら解説します。
Q1. 自分のリノベーションが、補助金の対象になるかどうかはどうやって調べればいい?
A. 計画段階で、制度に詳しい事業者に相談するのが確実です。
制度には細かな対象条件(製品の型番、性能基準、工事規模など)があるため、個人で全てを調べるのは困難です。
国の公式サイトでも制度の概要は見られますが、最終的には「対象工事を施工する会社」が申請を代行することがほとんど。そのため、早めに相談できる依頼先を見つけることが、最大の近道です。

Q2. 工事が始まってから補助金を申請することはできないの?
A. ほとんどの制度で「着工後の申請は不可」です。
補助金の多くは、契約・着工の“前”に申請を済ませる必要があります。
窓リノベ、長期優良化リフォーム、介護保険改修、どの制度でも共通です。
「知らなかった」「確認し忘れていた」というだけで補助金を受け取れなくなるので、契約前に制度の確認をしておくことが必須だと覚えておきましょう。

Q3. 一部の工事だけでも補助金は使える?
A. はい。制度によっては部分的な工事だけでも対象になります。
たとえば…
・窓の断熱改修だけ → 先進的窓リノベ事業
・手すりの設置だけ → 介護保険住宅改修
・一部の設備だけ → 住宅省エネキャンペーン
制度の中身を知っておけば、「必要な部分だけ」に限定して補助を活用することも可能です。
むしろその方が設計の自由度が保たれ、無理のない使い方ができます。

Q4. 中古住宅を購入してからのリノベでも、補助金は使える?
A. 使える制度も多くありますが、タイミングに注意が必要です。
中古住宅購入+リノベーションは、制度との相性が良い一方で、「購入の契約」「設計開始」「工事着工」の順番がかぶりやすく、申請漏れが起きやすいので気をつけてください。
特に注意したいのが、
・補助金の申請前に工事契約をしてしまっている
・引っ越し後に申請しようとして、申請対象外になっている
といったケース。
中古物件購入とリノベーションをセットで考える場合は、購入前からリノベの相談先に動いておくのが鉄則です。
▼こちらの記事もおすすめです。
【必読】中古住宅×リノベーションで“買ってはいけない家”を見抜く方法|建物・土地・書類で判断する購入前チェックリスト

Q5. マンションのリノベーションでも補助金は使える?
A. 一戸建てほど種類は多くありませんが、使える制度はあります。
マンションでも利用できる代表的な制度には、
・窓リノベ(内窓の断熱改修)
・給湯省エネ(エコジョーズやエネファームの交換)
・バリアフリー化(手すり設置、床段差の解消)
・一部自治体の空き家・子育て支援制度
などがあります。
ただし、マンションの場合は管理規約や構造上の制限が多いため、工事の自由度が低くなる傾向があります。
補助金の対象になっていても、「工事ができない」「管理組合の許可が下りない」などの障壁があるため、事前に確認が必要です。

まとめ|【2025年最新版】リノベーション補助金・減税制度まとめ
2025年時点で使える補助金・減税制度は、制度数・金額ともに過去最大級の支援が用意されている一方で、“誰でも使えるわけではない”という注意点も多く存在します。
本記事では、以下の視点から制度を整理しました。
制度の全体像
【住宅省エネ2025キャンペーン】(窓・断熱・給湯器など):最大200万円
【長期優良住宅化リフォーム】:最大200万円(性能向上の総合支援)
【介護保険住宅改修】:最大18万円(手すり・段差解消など)
【各自治体の独自補助】(耐震・空き家活用・子育て支援など)
【減税制度】(所得税控除・住宅ローン減税・固定資産税軽減)
活用のポイント
・補助金は「契約・着工前」に申請するのが原則
・使える制度があるかではなく、「使う価値があるか」で判断する
・すべてに使うのではなく、「必要な部分だけ使う」のも選択肢
・補助金・減税は“後から乗せる”のが正解。設計の軸にしてはいけない
・書類準備・事業者選定・スケジュール管理が成否を分ける

リノベーションにとって制度とは何か?
補助金や減税制度は、家づくりの“主役”ではありません。
優先すべきは、どんな空間で暮らしたいか、どこを変えるべきかという本質的な問いです。
制度はあくまで、「整った計画」に後からフィットしてくるものであり、
制度のために設計や間取りを歪めるような進め方では、満足度の高いリノベーションにはなりません。

制度活用に迷ったら、こんな相談から始めてみてください
・「自分たちの家が、どの制度に該当しそうか整理してほしい」
・「制度を前提にするのではなく、無理のない範囲で活かしたい」
・「新築とリノベ、どちらが自分たちに合っているか相談したい」
・「予算配分の整理と制度の相性を、プロと一緒に考えたい」
私たちは、制度だけでなく、暮らし方・家族構成・将来の視点まで含めて、
“意味のあるリノベーション”をかたちにするための設計戦略をご提案しています。
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参考資料・公的機関リンク一覧(リノベーション関連)
国土交通省・経済産業省・環境省
住宅省エネ2025キャンペーン
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/
補助対象リフォームMAP
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/about/reform-map/
厚生労働省
福祉用具・住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
介護保険における住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
国土交通省
住宅リフォームの支援制度
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000087.html
環境省
先進的窓リノベ2025
https://window-renovation2025.env.go.jp/
経済産業省 資源エネルギー庁
給湯省エネ2025事業
https://kyutou-shoene2025.meti.go.jp/
