リノベーションで、暮らしに合わせて、住まいを変えることを希望していても、
「今の家に制限が多くて、思い通りにならないのでは?」
そんな不安を抱える方は多いのではないでしょうか?
リノベーションには、「壊せない壁」「動かせない柱」「配管の位置が変えられない」など、確かに制約があります。
しかし、だからこそ、“変えられないもの”をどう整え、どう活かすか。設計力が試される分野です。

では、既存建物を活かしたリノベーションで、決して妥協することなく、暮らしにフィットした“本当に気持ちいい空間”を生み出すには、どうしたら良いのでしょうか?
本記事では、そんな視点で、建築家・設計事務所として、リノベーションを新しい暮らしの器に変えていくための「7つの設計の工夫」をご紹介します。
新築のような自由さがなくても、今あるカタチから“理想の空間”をつくりあげる方法は、必ずあります。
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構造は“壊さず”に活かす|壊せない壁・梁・柱をデザインで整えるリノベーション
リノベーションを進めるうえで、多くの方が最初に驚かれるのが「意外と壊せない部分が多い」ということ。
壁や柱、天井の一部など、新築なら動かせるものも、既存建物ではそう簡単には変えられないことがよくあります。
そこで求められるのが、“変えられないもの”を前提にしながら、どう空間を美しく整えるか?という視点。
制約があるからこそ、構造を活かした、リノベーションならではの設計デザインが生まれるのです。
そこでここからは、壊せない構造をどう読み解き、どうデザインに落とし込んでいくか、具体的に解説します。

「壊せない」「壊さない」をスタート地点にする
まず大前提として、リノベーションでは、「既存の構造体を基本的に壊せない、あるいは、壊さないことを主軸に置いた方が効率的」です。
耐震上重要な壁(耐力壁)や、荷重を支える梁・柱は解体することができないか、解体すればコストと構造補強の負担が非常に大きくなります。
だからこそ、「どこが壊せないか」「どこまでが可変なのか」を読み解くことが、リノベーションの設計における最初の一歩。
しかしながら、制約があるからといって、空間づくりを諦める必要はありません。
むしろ既存の構造をうまく“組み込んで整える”ことは、リノベーションならではのシンプルで美しい空間が生まれる糧になります。

抜けない梁は、あえて見せる
たとえば、リビングの天井をまたぐ太い梁。
このような梁などの構造体を隠すために天井を一段下げてしまうと、空間全体が重たく感じられることもあるかもしれません。
そのようなケースでは、梁を“あえて見せる”選択も検討してみましょう。
木質の素材感をそのまま活かしたり、間接照明を仕込んで“陰影”をつくったりすることで、その梁自体が空間のアクセントとなり、全体に奥行きとリズムが生まれることもあります。
見せ方を整えれば、構造は“障害”ではなく“構成要素”に変えることもできるのです。
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壁は「分断」ではなく「構成」に活かす
壊せない耐力壁は、単なる“障壁”として扱うのではなく、空間を整えるパーツとして活かすことを考えてみましょう。
たとえば、LDKの一角に残る耐力壁は、
・天井や床の素材を切り替える境界として使う
・壁面収納や飾り棚と一体化させる
・アートや照明を設ける“見せ場”として扱う
といった工夫で、「使える壁」「魅せる壁」に変えることができるかもしれません。
空間の“連続性”を大事することも良いことですが、あえて壁を残し、緩やかに分断することで、視線の流れや居場所のメリハリが生まれることもあります。

柱は「邪魔」ではなく「つなぎ目」にする
リノベーションでは、既存の柱がリビングやダイニングの中央に現れることも珍しくありません。しかしながら、その柱があるからこそできる設計もあります。
たとえば、
・柱に合わせてダイニングテーブルやカウンターを造作し、一体感のある空間にする
・柱と家具をセットで考え、「構造と暮らしの接点」として設計する
・柱を起点に照明や配線を集約する
このような工夫で、柱は“空間を分けるもの”ではなく、“つなぐもの”にデザインすることができます。

「壊せない」を“整える”発想こそ、リノベの本質
建築家の視点から見ると、壊せない構造は「制限」ではなく「設計条件」にすぎません。
そして、その条件があるからこそ、空間の設計には明確な論理性と美しさが生まれることもあります。
自由にできないことを上手く活用し、空間を“整う”方向に磨いていく。
そんな視点は、リノベーションのデザインの醍醐味でもあるのです。
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寸法制限を超える“広がり”|リノベーションの設計術
リノベーションでは、「広くしたくても、構造的に広げられない」「天井が思ったより低い」といった寸法的な制限に直面することがあります。
しかし、ここでおさえておきたいのは、空間の印象は“数字”だけで決まるものではない、ということ。
視線の通り道・奥行き感・高さの切り替えなど、設計の工夫を仕込むことで、体感として広く感じられる空間を演出することは可能なのです。
そこでここからは、実際の寸法にとらわれず、空間をのびやかに見せるための工夫を紹介します。

視線の「抜け」と「奥行き」を設計する
最も基本であり、最も効果的なのが視線の操作です。
たとえば、リビングからダイニング、キッチンまでを一直線に配置すれば、空間に“奥行き”が生まれます。
また、窓や室内ドアを視線の延長線上に配置すれば、さらに実際よりも広く感じさせることができる。
空間の“抜け”は、心理的な開放感を生み出します。そして、その抜けは、間取りや家具配置をほんの少し工夫するだけでつくりだすことが可能です。
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「開放感のある家」をつくる7つのポイント|注文住宅で“面積以上の広がり”を生む設計デザイン

天井は「高さ」より「メリハリ」で演出する
天井を高くできないときは、高さの変化=リズムで空間に豊かさを与えてみましょう。
たとえば、
・キッチンは少し下げて落ち着かせ、リビングはフラットに伸ばす
・一部を下げて間接照明を仕込み、明暗で広がりを出す
・天井材の色や素材を切り替えることで“高さの錯覚”をつくる
重要なのは、“高くする”のではなく、「高く感じさせる」ことです。
構造をいじらずにできる、設計の工夫で、空間の高さを演出しましょう。
▼天井高については、こちらの記事で解説しています。
【注文住宅の天井高】2400mmより“高い天井”と“低い天井”、どちらが快適?|メリット・デメリットと暮らしに合う選び方

家具サイズで“空間の重心”をコントロールする
家具は、空間のスケール感に直結する要素です。
大きすぎるソファや食器棚があると、部屋は一気に狭く見えてしまうこともあります。
逆に、低め・軽やか・脚が浮いている家具を選べば、床が広く見え、空間がスッと抜けていきます。
家具の高さを揃えることも大切にしましょう。
モノの高さがそろうと、空間に“水平ライン”が生まれ、視覚的に広がりが感じられます。
寸法の制限があるときほど、家具選びや造作のサイズ感を細かく調整すると良いでしょう。

間仕切りをやめ、“緩やかにつなぐ”空間設計へ
壁や建具で空間を分けると、当然ながら狭く感じやすくなります。
そこで有効なのが、「区切る」のではなく「つなげて分ける」という発想です。
たとえば、
・床材や天井材を切り替えてゾーニングする
・家具で空間をゆるやかに仕切る(ソファ・棚・デスクなど)
・引き戸やロールスクリーンで“必要なときだけ閉じる”選択肢を持たせる
このような工夫次第で、一体感と機能性を両立した空間を演出することは可能です。

“数字に縛られずに広く見せる”のが設計の力
限られた広さや高さに直面しても、それを単に「制限」や「限界」とは捉えるのではなく、どうすれば広がりを感じられるか、どうすれば気持ちよく暮らせるか、といった視点で空間を組み立てていきましょう。
数字は変えられなくても、感じ方は、設計で変えられる。
それが、リノベーション・設計デザインでできることのひとつです。

設備の制約を読み解く間取りと動線計画|配管・ダクト・配線とリノベーション
「キッチンの場所は変えられますか?」「トイレの位置をもっと奥にしたいんですが…」
そんなご相談は、リノベーションでは、とても多くいただきます。
ただ、ここで立ちはだかるのが設備の制約。
給排水の位置、換気のダクト経路、電気配線など、建物の内部には“動かしづらいインフラ”が張り巡らされています。
しかし、それらの制約をきちんと理解し、計画の初期段階から織り込むことで、暮らしやすさと美しさを両立する間取りと動線をつくることは可能です。
ここからは、「設備を理由に諦めない」ための具体的な工夫をご紹介します。
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【保存版】注文住宅・設備の選び方|“本当に必要なもの”だけを見極める判断軸と快適性のポイント

水回りの移動には“制限”がある
キッチンや浴室、トイレなどの水回り設備は、床下にある配管経路や勾配の確保が必要なため、自由な位置変更には限界があります。
たとえば、
・床下の高さが足りないと、排水の勾配が取れず水が流れにくくなる
・短距離であれば移動可能だが、階をまたいでの移設は難易度が高い
・排気や換気のダクトルートも、梁や構造との干渉を避ける必要がある
だからこそ、設備機器の配置は「動かす前提」で考えるのではなく、今ある位置を前提に最適化する方が、コストも性能も安定します。

“固定された設備”に暮らしを合わせて整える
「キッチンがこの位置にしか置けないなら、動線はどう組み立てるべきか」
「ダクトの関係で洗面はここしかない。では、どう美しく見せ、使いやすくデザインするか」
こうした思考の切り替えが、設計者にとって最も重要なプロセスです。
暮らしをかたちづくるのは、“動かせない”設備ではありません。
むしろ、その位置を起点にどう機能を集約し、どう動線を整えるかが、空間の質を左右します。

設備を“見せずに整える”配線・配管の設計術
床下や壁の中を通る設備ラインは、表から見えないものではありますが、空間に与える影響は意外と大きいものです。その存在感を抑えるためには、次のような工夫で、設備を“感じさせない設計”を行うと良いでしょう。
・床下の配管スペースをあらかじめ確保した設計(床を30mm上げてスッキリ納める など)
・電気配線を壁面造作の中に隠し込む設計(TV背面壁やカウンター裏など)
・ダクトや給気口を意匠的に整える(木製ルーバー・格子・家具に組み込む など)
・分電盤や給湯器の露出箇所を“家具化”する工夫(扉で隠し、意匠と一体化)
設備そのものは動かせなくても、“見せ方”と“納め方”は設計で選べるものです。
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“生活感ゼロ”の注文住宅|建築家が実践する設備・家電を“美しく整える”6つの工夫

機能的な動線は“設備の配置から逆算する”
設備には位置の制約があります。だから、間取りや動線は、ケースバイケースで、時には「あとから合わせる」くらいがちょうどいい。
たとえば、
・キッチンの位置が決まれば、そこを起点にパントリー・洗面・ダイニングを回遊できるように配置する
・洗濯機と干す場所は、一直線でつなぐ
・玄関〜洗面〜浴室は、最短距離でつないで生活の軸をつくる
このように「動かせない設備」を基準に動線を組み立てることで、無理のない、使いやすい間取りになります。
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家事動線がいい家の間取りとは?|注文住宅で家事がラクになる設計の工夫・5つのポイント

設備制約を“空間設計の軸”に変える
リノベーションにおいては、設備制約を“マイナス”と捉えるのはナンセンスです。
制約にこそ、整った暮らしの骨格をつくるヒントがあると考えてみましょう。
「ここにしか置けない」からこそ、そこを中心に動線を最短化し、視線を整理し、暮らしがすっきり整う。
それが、満足度が高くなる、リノベ設計の思考法です。

窓が動かせないときの光と風の設計|開口の制約とリノベーション
「この窓、位置は変えられますか?」
というのも、リノベーションの現場では、ほぼ毎回出るご質問です。
実際のところ、既存の窓の位置や大きさは“変えづらい”というのが現実です。
構造との関係、外壁の仕様、防火や採光の基準…簡単には動かせない、あるいは動かさない方がいい。
けれど、窓が変えられなくても、設計で、光や風の“通り方”は整えることができます。
そこでここからは、窓が限られている状況でも“明るく、心地よく、開放感のある住まい”をつくるための工夫をご紹介します。
▼窓については、こちらの記事で詳しく解説しています。
注文住宅で失敗しない窓の選び方|開閉方法・形状・位置別に種類・特徴・メリット・デメリット

既存窓の位置を“最大限に活かす”設計発想
窓が動かせないなら、どうやって最大限に活かすか、その視点が大切になります。
室内のどこに光が届くか、どこが暗くなるかを読み解くところから設計を始めてみましょう。
たとえば、
・南面の窓が1つだけでも、その正面を広く抜けるようにレイアウトする
・窓からの光が届かない箇所には、反射面(白い壁や鏡)を活用して光を回す
・窓の軸線上に視線の抜けを設計することで、実際以上の開放感を演出する
「動かせない」からと諦めるのではなく、どう見せて、どう導くか、そこに設計の価値があります。

室内に“光の通り道”をつくる
窓が変えられないなら、室内の壁や建具の工夫で光をつなげてみましょう。
代表的な方法としては、
・室内窓:廊下やリビングに光を通すためのガラス入りの開口を設ける
・ガラス建具・欄間:建具上部を抜いて、閉じても光や風を通す設計
・明るい素材選び:天井・床・家具の反射率を高めて、拡散光を部屋全体に届ける
・間接照明の補完:足りない光を“自然に見える”人工照明で補う
このような工夫で、「窓は少なくても、明るい家」は実現できます。

通風は“空気の入口と出口”をセットで考える
風通しの良い住まいは、ただ窓を開ければいいというものではありません。
空気には流れが必要です。つまり、風の入口と出口のペア設計が重要になります。
例えば、
・玄関・勝手口・バルコニーなど外気とつながる2点間で風のルートを設計
・室内ドアや間仕切りを引き戸や開放可能な構造にして、風の通り道をつくる
・上部に高窓や天窓を設けて、上昇気流による“引き抜き”を生かす
・家具配置を工夫して、風を遮らないレイアウトを意識
このような工夫は構造を変えずとも可能な設計です。そして、同時に、居心地を大きく左右する“空気の設計”でもあります。
▼風通しについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
風通しのいい家のつくり方|自然通風を活かす快適な間取りと窓配置-後悔しない通風計画のポイント

窓に頼らず、閉じながら開くデザインへ
特に都市部のリノベでは、外部からの視線や隣家の距離の近さから、窓があってもカーテンを閉めっぱなし…という状況がよくあります。
そこで取り入れたいのが、「閉じながら開く」という設計の工夫。
たとえば、
・内向きの中庭やテラスを設けて、外部からの視線を遮りつつ、採光と通風を確保
・ルーバーや格子を使って、“見せたい景色だけを切り取る”
・ハイサイドライト(高窓)で、視線を遮りながらも空を取り込む
このような工夫により、安心感と開放感を同時に叶える空間が実現します。
▼中庭については、こちらの記事で詳しく解説しています。
中庭のある注文住宅の魅力とは?|快適な暮らしを叶える間取りと設計のメリット・デメリット・注意点

“動かせない窓”も、整えることで価値になる
リノベーションでは、窓の数や位置は限られているかもしれません。
でもそのぶん、光や風の扱い方には「設計者の設計思想」が如実に表れます。
開ける/閉じるだけでなく、抜ける・広がる・届く・流れる・・・
そんな“空間の質”を感じさせる設計が、窓の制約を超えて、暮らしを美しく整えてくれるのです。
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「最高の窓・開口部」をつくる4つのポイントと設計手順|注文住宅の魅力を最大化する考え方とは?

生活感を抑える造作と収納の設計術|リノベーションで整える暮らし
どれだけ空間が美しく整っていても、生活用品が雑然と並ぶだけで印象は一変します。
家電、日用品、コード類、洗剤、書類、ランドセルなど。
住まいに必ず存在するそれらを、いかに美しく“居場所づけ”してあげるかが、設計の本質です。
「隠す」のではなく、「整える」。
それが、シンプルモダンで生活感を抑えたリノベ空間をつくるための鍵。
そこでここからは、生活感を抑える造作と収納の設計術をご紹介します。

“生活の動線”から逆算して、収納の配置を決める
収納は「多ければいい」というものではありません。
むしろ多すぎる収納は空間を圧迫し、使われないまま埋もれるモノを増やします。
そこで、まず行いたいのが、暮らしの動線と習慣の把握です。
・帰宅後、どこで鍵やバッグを置くのか
・書類や郵便物がどこに溜まりやすいのか
・掃除道具やストックはどこにしまいたいのか
このような日々の“動き”から逆算して、ピンポイントで必要な収納を配置していきましょう。
「モノの居場所が自然に決まる空間」を目指す視点が大切です。
▼収納計画については、こちらの記事で解説しています。
注文住宅の収納計画-後悔・失敗しないために|収納が足りない原因と適切な量・配置・割合 “7つのポイント”

造作家具で“寸法と意匠を揃える”
既製品の収納家具は、既存の空間と、サイズが空間と合わず、微妙なスキマや段差が生活感を生みがちです。
そこで、リノベーションでは、空間にぴったり収まる造作収納を採用すると良いでしょう。
・天井まで伸びる扉付き収納で、壁と一体化
・巾木・天井ライン・壁面の素材や色味を揃えて“背景化”する
・奥行きを抑えて生活動線を邪魔せず、“存在を消す収納”を実現
造作にはコストがかかりますが、「空間全体が整う」その価値はデザインだけでなく機能的にも圧倒的です。
▼オーダー家具については、こちらの記事で解説しています。
【注文住宅×オーダー家具】名古屋の建築家が提案|“造作家具のすすめ”-魅力・費用・事例・注意点まとめ

“床が見える”ことで空間は広く、整って見える
生活感がにじみ出る空間の多くは、床面がごちゃついていることが原因です。
床に物を置かないための設計ポイントは
・家具(壁付けテレビ台・壁掛け収納など)は床から浮かせる。
・コード類や配線を床に出さない計画(コンセント位置・家具裏スペースの確保)
・掃除ロボットが通れるよう家具の脚高やクリアランスを設計段階で調整
このような工夫で、床面が連続すると、視覚的な広さと生活の“整い”を演出してくれます。

“線と面”を揃えて、空間に静けさをつくる
生活感のない空間には、必ずと言っていいほど「揃ったライン」があるものです。
・天井・家具・建具の“水平ライン”を通す
・納まりの出隅・入隅・隙間をなくしてスッキリとシンプルに。
・棚板・把手・照明・家具の“高さ”や“リズム”を整えて、視線を迷わせない
このような工夫の積み重ねが、「なんだか整っている」「落ち着く」と感じる空間をつくります。

“使いやすさ”と“見えにくさ”は両立できる
よくある「生活感を隠す=使いにくい」というイメージは、はっきり言って、ただの誤解。
実際には、設計次第で“見えにくく、かつ使いやすい”収納は実現可能です。
たとえば、
・キッチンの背面に扉付きのパントリーを設けて、使うときだけ開ける
・リビングの一角にマグネット対応の“隠せる家事コーナー”を用意
・トイレや洗面に埋め込み収納を設けて、ボトル類を一切見せない
生活の便利さと美しさを分断しないのが、“設計としての収納”のあり方だといえるでしょう。

空間が整えば、暮らしも整っていく
見た目のために収納するのではなく、暮らしの流れに沿って整える。
それが結果として、生活感のない美しい住まいにつながっていきます。
収納は“隠すこと”ではなく、“設計すること”。
生活の器としての空間を、どれだけ丁寧に構成できるか。
これは、リノベーションにおける設計デザインで大切にしたい視点のひとつです。
▼こちらの記事も参考になります。
“暮らしやすい家”のつくり方|建築家が語る-性能では測れない“注文住宅の本質”と“設計の考え方”

新築以上の“洗練”をリノベで実現する|シンプルモダン × 機能美のリノベーション
「せっかくなら新築の方が綺麗になるんじゃないか」
そう思う方も、少なくありません。
けれど実際には、リノベーションだからこそ到達できる“完成された空間”があります。
壊せないもの・動かせないもの・限られた条件を一つひとつ読み解き、その上で暮らしと空間を丁寧に整えていく“設計の積み重ね”があれば、新築以上の“洗練”をリノベで実現することは可能です。
ここからは、建築家がリノベで実践する「新築以上の“洗練”をリノベで実現する方法」を、具体的にご紹介します。

シンプルとは「要素を減らすこと」ではない
「シンプルモダン」という言葉は、「何もない=美しい」と誤解されがちです。
でも本来の“シンプル”とは、ただ引き算をすることではありません。
必要なものが、必要なかたちで、きちんと設計されていること。そこに本当の美しさがあります。
たとえば
・色数を絞るだけでなく、色と素材の“バランス”を整える
・素材を選ぶだけでなく、“手触り”や“光の反射”まで考える
・壁や天井の“線と面”、光と影の“強弱”を丁寧に設計する
「とにかくスッキリ見せる」ことよりも、
「なぜスッキリして見えるのか」を説明できる建築を大切にしましょう。
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“Less is More.”|本当に魅力的なシンプルデザインとは?-注文住宅・家づくりの美学と本質

“素材の質感”が、空間の印象を決める
壁・床・天井・家具・・・空間のベースになるこれらが、もしチグハグな素材感だったら、どれだけ配置が整っていても“洗練”は感じられません。
シンプルモダンを成立させるためには、素材の選び方とその納まりが非常に重要です。
・床はオークやナラなど、表情が穏やかで光を受け止める木材
・壁や天井は、白くても質感のある左官や自然塗料仕上げで“平滑すぎない柔らかさ”を
・造作家具は、建具と面材のトーンを揃えて一体化
・換気口や巾木、照明器具の存在感まで整える
“静かな素材”を選び、空間全体が一枚の絵のように整うこと。
それが、洗練されたデザインです。
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自然素材のインテリアで叶える、五感にやさしい注文住宅|健康的な暮らしを包む“心地よさ”の設計術

機能美とは、“必要だからそうなっている”という納得感
ただ見た目がきれいなだけでは、住まいは心地よくなりません。
本当の美しさには、ちゃんと「意味」がある。そんな“機能美”を大切にしていましょう。
たとえば、
・玄関のニッチは、鍵や小物の“定位置”として使えると同時に、空間にリズムを生むデザインにもなる
・引き戸の高さを天井と揃えることで、視線の流れが整い、空間がすっきり広く感じられる
・収納の扉を壁と一体化させると、見た目がすっきりするだけでなく、ほこりもたまりにくく掃除がしやすい
「美しいけれど、ちゃんと理由がある」
そんな空間には、暮らしの中で“気づき”があり、長く住んでも飽きが来ることなく、心地よいものです。

“線と面”で構成する空間は、余白を大切に。
洗練された空間は、情報量が少なく、線と面の構成が明確です。
・水平・垂直のラインが揃っている
・家具・建具・天井が“つながっているように見える”
・納まりが整理されていて、目に“引っかかる要素”がない
・空間を邪魔しない照明計画と、光と影のグラデーション
このようなシンプルでスッキリとして、それでいて奥ゆかしいデザインを積み重ねていきましょう。
すると「なんか落ち着く」「ずっと居たくなる」
といった感覚が湧く、こころほどける洗練された空間を実現することが出来ます。

制約があるからこそ、設計が冴える|リノベーションの面白さ
リノベーションは、「すでにある器をどう整えるか」を考える設計です。
広さ・高さ・光・構造など、前提条件がある程度あるからこそ、その中で“どう活かし、どう整えるか”という視点が自然と研ぎ澄まされていきます。
新築のように“何でも描ける”わけではない。
でもそのぶん、ひとつひとつの選択に意味が宿り、空間に対する密度や完成度が深まっていく。
限られた枠の中で、建築の可能性を掘り下げていくプロセス。
それこそが、リノベーションの魅力のひとつです。
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機能美とは?|暮らしを整えることで生まれる“本当の美しさ”-建築家が語る住宅デザインの核心

制約を超えて“刷新する”空間設計|再構築=リノベーションという選択肢
リノベーションは、単なる修復でも、間取り変更でもありません。
本質的には、空間の価値そのものを“刷新する”ための再構築行為です。
壊せない壁、動かせない配管、限られた寸法…。
リノベーションには、制約がつきものです。
でも、だからこそ「設計の力で空間を組み直す」ことに意味を見出してみましょう。
刷新とは、“今の暮らし”に合わせて空間を再定義すること。
ここからは、建築家が実践する“リノベーションでしかできない空間づくり”の本質を掘り下げます。

リノベーション=「刷新された建築」をつくること
「古くなったものを新しくする」
それはあくまで表層的な変化にすぎません。
リノベーションとは、
「構成」そのものを見直し、空間を根本から“再編成”する設計行為です。
・間取りの考え方を、今の家族のライフスタイルに合わせて刷新する
・空間のつながり方を再構築し、“使える・居心地のいい場”へと転換する
・家全体の既存の枠組みを、今求められている、動線や機能、視線、採光、収納といった文脈で再設計する
もともとの家のかたちに縛られず、「新しい建築をつくるように再構成する」
それが本来のリノベーションです。
▼詳しくはこちらの記事で解説しています。
リノベーション、やめたほうがいい?|後悔・失敗を招く“理想と現実”のズレと、本質的な価値・選ばれる理由

制約があるからこそ、設計に“切れ味”が出る
新築は自由に設計できるかもしれません。
一方で、リノベーションには、動かせないもの・制限も多いもの。
そのような制約の中で、どれだけ空間を最適に整えられるかが、設計者の腕の見せどころといえるでしょう。
・柱があるなら、そこを起点に家具や照明を構成する
・配管が動かせないなら、間取りの工夫で使いやすくする
・壁が抜けないなら、抜けないことを前提に空間にリズムを与える
「全部できる」よりも、「条件がある中で最適を選び抜く」
その姿勢が空間を洗練させていきます。

設計とは「意味を与えること」
床の段差も、天井の抑揚も、収納の位置も、
すべてが「そうなった」のではなく、「そうする理由がある」空間こそ、設計された建築です。
・なぜこの壁を残したのか
・なぜこの照明がここにあるのか
・なぜこの素材とこの高さが必要だったのか
そこに意図が通っていることで、住まいには“整った空気感”が生まれます。
それは、建築家の思考・配慮が空間全体にいきわたっている証です。

「刷新する建築」を選ぶということ
リノベーションとは、ただ古いものを新しくする作業ではありません。
たとえば、
・暗くて使いづらかったキッチンを、リビングとつながる明るい場所へ。
・動きにくかった洗面・脱衣・物干しの導線を、無駄のない流れに整える。
・狭く感じていた部屋をつなげて、広がりのある居場所に変える。
こうして、日々の過ごし方や、建築の意味そのものを設計し直すことが、私たちの考える“リノベーション”です。
「いまの家を壊さずに、本当に新しい建築をつくれるのか?」
答えは、設計次第で“YES”になります。
▼こちらの記事もおすすめです。
【建て替え・新築 vs リノベーション】どちらが正解?判断基準・費用・寿命・価値の比較|見極めチェックリスト付

Q&A|リノベーションの設計・デザインに関するよくある質問
ここまで、リノベーションで“理想の空間”をつくるための設計的な工夫をご紹介してきました。
とはいえ、実際に計画を進めようとすると、
「自分の家でもできるのか?」「どこまで変えられるのか?」といった疑問や不安が湧いてくるものです。
そこで最後に、よくご相談いただく質問とその答えをまとめました。
リノベを検討中の方は、ぜひご自身のケースと照らし合わせながら参考にしてみてください。

Q1. 間取りの変更にはどれくらい自由度がありますか?
A. 基本的なレイアウトは大きく変えられますが、構造(耐力壁・柱)や設備(配管など)による制限が伴います。
壊せない壁や動かせない配管の位置を前提に、空間の構成や動線を最適化することもリノベーションでは有効なデザインです。
リノベーションでは、「制限があるからこそ、無駄のない空間ができあがる」という設計の力が発揮されます。
▼リノベーションの構造については、こちらの記事で解説しています。
【リノベーション×構造】“構造への不安”を解消|調査・補強の限界と実践的アドバイス-建築家・設計事務所が徹底解説

Q2. 水回り(キッチン・浴室・トイレ)はどこまで移動できますか?
A. 給排水管の勾配や床下空間の条件により、移動できる距離には限界がある場合もあります。
ただし、位置を完全に変えられなくても、レイアウトや動線の組み直しで“暮らしやすさ”は大きく改善できます。
部分的な移動や回遊動線の設計で、違和感のない配置へ再構成することが可能です。

Q3. 築年数が古い家でもリノベーションできますか?
A. はい、可能です。ただし、構造の状態や法的な制約(耐震・防火・断熱性能)によって、設計の自由度や費用は変わります。
築年数が古い場合は、設計段階でインスペクション(建物診断)を行い、性能・安全性・快適性を確保したうえでプランを構築してもらいましょう。
古い家ほど、“空間の可能性を掘り起こすための入念な調査”が求められます。
▼こちらの記事もおすすめです。
【必読】中古住宅×リノベーションで“買ってはいけない家”を見抜く方法|建物・土地・書類で判断する購入前チェックリスト

Q4. シンプルモダンで生活感を抑えたいのですが、実現できますか?
A. 十分可能です。シンプルな空間ほど、造作収納・家具計画・照明設計・素材選びが重要になります。
単に「物を隠す」のではなく、「整った暮らしが自然にできる動線や収納」を設計することで、無理なく“生活感のない住まい”が実現します。

Q5. 予算はどれくらい必要ですか?
A. 築年数・規模・既存状態・工事範囲によって大きく異なりますが、フルリノベーションの場合は1,000万円〜2,500万円程度が一般的です。
ただし、空間を“刷新”する設計は、金額以上に暮らしの質を変える投資になります。
ご要望や優先順位に応じて、費用対効果の高いプラン提案も可能ですのでご安心ください。
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【完全ガイド】リノベーション費用の内訳と予算配分の戦略‐“後悔しない・失敗しない”ための判断基準とは?

まとめ|リノベは“空間の再構築”であり、暮らしの刷新
リノベーションには、「壊せない」「動かせない」「変えられない」など、制約がつきものです。
しかし、それを“限界”とは捉えず、むしろ、空間を再構成し、暮らしを刷新するための出発点だと考える視点を大切にしましょう。
本記事では、建築家のいる設計事務所として、リノベーションで理想の空間を叶えるための7つの工夫をお伝えしました。
・壊せない構造を活かす
・寸法的な制限を超えて、体感を設計する
・設備の条件を読み解き、合理的な間取りと動線を構成する
・窓が動かせなくても、光と風の通り道を設計する
・生活感を抑える造作と収納で、暮らしを整える
・シンプルモダンと機能美によって、新築以上の“洗練”をつくる
・空間の枠組みの意味を“再構築”する

このような工夫は、ただ間取りを変えるだけではありません。
空間を構造から読み直し、暮らしの質を底上げするための“設計の技術”と“価値観”によって成り立っています。
リノベーションとは、表面的な美しさを整える手段ではなく、既存の枠組を捉え直し、「いまの暮らし」に対して最適化した空間をつくりだすこと。
そこで新築以上に重要となるのは、制約を読み解き、的確に整える“設計者の力”。
設備や構造に縛られていても、空間の質や居心地は、設計次第で大きく変えられます。

「この家に、もう一度ちゃんと向き合ってみたい」
「古いけれど、暮らしに合った空間に再構築したい」
そう感じたときが、“理想のリノベ”のスタートラインです。
私たちは、お金のかけ方も、間取りの考え方も、素材の選び方も、すべてに「意味」と「納得」が通った設計を大切にしています。

「この条件でも、理想の暮らしは叶う?」
「新築よりリノベが合っているか、相談してみたい」
「何にどれだけお金をかけるべきか、プロと一緒に整理したい」
そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
リノベだけでなく、新築・建て替えとの比較や、補助金・法規の整理まで含めて、中立的かつ現実的な視点から、“無理のないリノベ”の設計戦略をご提案いたします。
▼ 私たちの【設計実例】は、以下からご覧いただけます。
資料請求・イベント:https://studio-tabi.jp/project/event/
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参考資料・公的機関リンク一覧(リノベーション関連)
国土交通省 住宅局住宅生産課|一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
既存住宅の住宅性能表示制度ガイド
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001594050.pdf
国土交通省|土地・建設産業局、住宅局
既存住宅流通市場の活性化
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/content/001313273.pdf
国土交通省
令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業
https://r07.choki-reform.mlit.go.jp/
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会
https://www.j-reform.com/
住宅金融支援機構|フラット35リノベ
https://www.flat35.com/loan/reno/index.html
国税庁
マイホームを増改築等したとき|住宅特定改修特別税額控除など
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm
国税庁
No.1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1216.htm
