リノベーションは新築より難しい?注文住宅より設計力が求められる理由とは?―設計事務所が解説

はじめに|リノベーションは「新築より簡単」ではない

リノベーションというと、
「既存の建物を利用するから、新築より簡単そう」
というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実際に設計する立場から見ると、リノベーションは決して簡単な仕事ではありません。
むしろ、新築や注文住宅以上に、設計者の力量が問われる場面も多いものです。

新築であれば、基本的には何もない状態から自由に計画できますが、
リノベーションでは、既存建物の条件前提がある。
そのため、より個別的な課題への対応が求められます。

リノベーションとは、「自由に設計する」のではなく、既存の条件を読み解きながら、自由をつくる設計。
そこに、新築とは異なる難しさがあります。

そこで本記事では、
リノベーションが新築や注文住宅より難しいと考えられる理由を整理しながら、
なぜリノベーションでは、設計力や見積チェック、現場監理が重要になるのか。
建築家の視点から、分かりやすく解説していきます。

 

リノベーションは新築より条件が複雑

新築住宅では、敷地条件や法規などの制約はあるものの、基本的にはゼロから建物を考えることができます。

間取りをどうするのか。
窓をどこに設けるのか。
キッチンをどこに置くのか。

構造や設備も含めて、一つの建築として最初から組み立てていくことが可能です。

ところが、リノベーションは違います。

すでに存在している建物を読み解き、
「何を残し、何を変えるのか」を一つひとつ判断しなければなりません。

例えば、
「この壁をなくして広いLDKにしたい」
と思っても、その壁が構造上重要であれば、簡単に撤去することはできません。
水回りを大きく移動したくても、排水経路や床下の条件によっては、計画を見直す必要が出てくるでしょう。
さらに、図面と実際の建物が一致していないことや、解体して初めて劣化が見つかることもあります。

既存建物には、新築では存在しない「見えない条件」が数多くあるのです。

だからこそリノベーションでは、既存建物の状態を正しく把握し、
構造・設備・法規・性能・予算・デザインなど
様々な要素を同時に整理する力が求められます。

単純に古い内装を新しくするだけではない。
既存建物という複雑な条件から、最適な答えを導き出すこと。
それが、本来のリノベーション設計です。

 

リノベーション会社の提案は、実は似やすい

実際にリノベーションを検討すると、会社ごとにさまざまな施工事例やデザインが紹介されています。
一見すると、それぞれまったく異なる提案に見えるでしょう。

しかし、内容を細かく見ていくと、

既製品のキッチン。
メーカーの建具や床材。
クロスやタイル。
決められた仕様の造作家具。

こうした既製品やあらかじめ用意された仕様を組み合わせて空間をつくるだけのケースが非常に多い。
つまり、パッケージされた枠組の中だけで選ぶ、というものです。

もちろん、パッケージ化すること自体が悪いわけではありません。
価格や仕様が分かりやすく、効率よく計画を進められるメリットもあります。

ただし、本来リノベーションは、一棟ごとの個別性が非常に高いもの。
建物が違えば、本来導き出される答えも違うはずです。
そこに最初から決められた「型」を当てはめてしまえば、その建物だからこそ持っている可能性を十分に引き出せないことも多いでしょう。

 

パッケージでは、既存建物の可能性を活かしきれない

リノベーションの面白さは、新しくつくることだけではありません。
すでにある建物の中から、価値を見つけ出すことにもあります。

例えば、
既存の柱や梁。
天井の高さ。
窓から入る光。
庭とのつながり。
長い時間を経た素材。

一見すると制約に思えるものが、設計によって魅力へと変わることもあります。

だからこそ、リノベーションでは、
「何を新しくするか」だけでなく、
「何を残し、どう活かすか」という視点が重要です。

ところが、あらかじめ用意されたプランや仕様の中から選ぶことを前提にすると、こうした建物固有の特徴を十分に読み取れないことがあります。

例えば、
既存の梁を隠すのではなく、空間の構成要素として見せる。
使われていなかった部屋を取り込み、光の入り方そのものを変える。
窓の位置を活かしながら、家具や壁の配置を一から考え直す。

こうした判断は、単なる内装材の選択ではありません。
建物全体を読み解いた上で、一つひとつ答えをつくっていく設計です。

リノベーションは、建物ごとの条件が異なるからこそ、本来は、一棟ごとに異なる設計があってよいはずです。

既製品を使うこと自体に問題があるわけではありません。

大切なのは、既製品を組み合わせることを設計の目的にしないこと。
その建物にとって必要であれば使い、必要でなければ別の方法を考える。
そうした柔軟な判断によって、既存建物の可能性は大きく広がります。

 

リノベーションほど「設計力」が求められる

では、リノベーションにおける「設計力」とは何でしょうか。

デザイン性の高い空間をつくることだけが、設計力ではありません。

既存建物の状態を読み、残す部分と変える部分を判断する。
構造や設備の制約を整理する。
暮らし方に合わせて、間取りや動線を再構成する。
予算とのバランスまで考える。

こうした複数の条件を同時に扱いながら、限られた条件の中で、より良い答えを導き出すこと。
それが、リノベーションで求められる設計力です。

例えば、
すべてを壊して新しくすれば、分かりやすくきれいになるかもしれません。
しかし、それが最も合理的とは限りません。
まだ使えるものまで撤去すれば、当然、工事費は増えます。
反対に、残すことを優先しすぎれば、暮らしにくさや性能面の問題が残ってしまう可能性もあるでしょう。

だからこそ、

どこにお金をかけるのか。
どこを活かすのか。
どこを思い切って変えるのか。

その判断が重要になります。

リノベーションでは、同じ建物、同じ予算であっても、設計者によって導き出される答えが大きく変わります。
新築以上に、設計者の考え方や経験、判断力が表れやすい領域ともいえるでしょう。

 

見積チェックが新築以上に重要になる

リノベーションでは、設計だけでなく、工事費の管理も非常に重要です。

新築と比較して、既存部分の撤去や補修、再利用といった工事が多くなるため、見積内容も複雑になりやすい傾向があります。

例えば、
解体工事、下地補修、既存設備の撤去、
構造補強、配管の更新、既存部分との取り合い など

こうした項目は、建物の状態によって内容が変わります。
そのため、「工事一式」という表現だけでは、金額が適正なのか判断しにくいことも少なくありません。

数量は適切か。
不要な工事が含まれていないか。
必要な工事が抜けていないか。
代替できる方法はないか。
設計内容と見積がきちんと一致しているか。

こうした部分まで、細かく確認する必要があります。

特にリノベーションでは、工事を始めてから追加費用が発生する可能性もあります。
もちろん、解体するまで分からない部分がある以上、すべての追加工事を完全になくすことは難しいでしょう。

だからこそ大切なのは、
設計段階で可能な限りリスクを想定し、見積内容を厳密に確認しておくこと。
そして、想定外の工事が発生したときにも、

本当に必要な工事なのか。
金額は妥当なのか。
別の方法はないのか。

冷静に判断できる体制をつくっておくことです。

施工会社とは別の立場から、設計者が見積を確認する。
この仕組みは、リノベーションにおけるコスト管理で大きな意味を持ちます。

 

現場監理によって、設計の精度が決まる

リノベーションでは、設計図を描けば終わりではありません。
むしろ、工事が始まってからの判断が非常に重要になります。

既存建物は、図面だけですべてを把握できるとは限りません。

壁や天井を解体してみると、想定していた位置に柱がない。
下地が傷んでいる。
配管経路が図面と違う。
構造材に補修が必要だった。

といったことが、初めて分かる場合もあります。
こうした状況は、リノベーションでは珍しいことではありません。

だからこそ重要になるのが、設計者による「現場監理」です。

現場の状況を確認しながら、設計図通りに施工されているか。
納まりに問題はないか。
変更が必要な場合、どの方法が最適なのか。

一つひとつ判断していきます。

例えば、
解体後に予想外の梁が現れた場合でも、

単純に隠してしまうのか。
天井高さを変えるのか。
空間のデザインとして活かすのか。

判断によって、完成する空間は大きく変わるでしょう。

リノベーションでは、現場で起きた問題に対して、その都度、設計を更新していく力が求められます。
これは、最初から完成形をつくりやすい新築とは少し異なる部分です。

設計と現場を切り離さず、最後まで一貫して考えること。
その積み重ねが、リノベーションの完成度を左右します。

 

リノベーションは「工事」より「設計」で差がつく

リノベーションを検討するときには、

施工事例の雰囲気。
使われている設備。
床材やタイル。
キッチンのデザイン。

といった、目に見える部分に注目しがちです。
もちろん、仕上げや素材選びも大切でしょう。

しかし、本当に大きな差が生まれるのは、その前段階にある「どう設計したか」です。

既存建物をどう読み解いたのか。
何を残し、何を変えたのか。
限られた予算をどこに配分したのか。
構造や設備の制約を、どう解決したのか。
工事中の想定外にどう対応したのか。

こうした部分は、完成写真だけでは見えにくいものです。

しかし実際には、
住みやすさ、空間の広がり、耐久性、コスト、施工品質 など
そのすべてに関わっています。

リノベーション会社を選ぶときも、単に施工事例のテイストだけで比較するのではなく、

どのように建物を調査するのか。
どこまで自由に設計できるのか。
見積を誰が確認するのか。
工事中に誰が監理するのか。

こうした部分まで確認することが、後悔しないためには重要です。

 

まとめ|リノベーションこそ、設計者の力が表れる

リノベーションは、新築より簡単なわけではありません。

既存建物という条件があるからこそ、
構造・設備・法規・性能
予算・施工・デザインなど
さまざまな要素を同時に整理する必要があります。

さらに、建物ごとに条件が異なるため、決められたパッケージや既製品の組み合わせだけでは、その建物が持っている可能性を十分に活かせないことも多いものです。

だからこそ、リノベーションでは、

建物を読み解く設計力。
工事費を適正に整える見積チェック。
設計意図を最後まで実現する現場監理。

この三つが、とても重要になります。

難しいからこそ、設計者によって答えが変わる。
そして、制約があるからこそ、工夫によって新しい価値を生み出すことができる。
それが、リノベーションの面白さでもあります。

既存建物を、ただ新しくするのではありません。
その建物に眠っている可能性を見つけ、暮らしに合った新しい価値へと変えていくこと。
リノベーションこそ、設計事務所・建築家の力が最も表れやすい仕事の一つだと考えています。

 

関連記事

なぜリノベーションは設計事務所と相性がいい?自由設計のメリットと可能性を建築家が解説

 

 

リノベーションをご検討中の方へ

リノベーションは、既存建物の状態や条件によって、できることも、最適な方法も大きく変わります。

だからこそ、決められたプランに当てはめるのではなく、建物の可能性を丁寧に読み解き、設計・コスト・施工まで一つひとつ整えていくことが大切です。

Tabiでは、新築・リノベーションを問わず、一人ひとりのご要望と建物の条件に合わせた完全自由設計をご提案しています。

「この建物で、どこまでできるのか知りたい」
「リノベーションと建て替えで迷っている」
「予算の中で、できるだけ可能性を広げたい」

そんな段階からでも、どうぞお気軽にご相談ください。

初回のご相談・ご提案は無料です。

 

 

初回のご相談・ご提案は無料です。

暮らしや土地、価値観に合う住まいを無理のないペースで検討したい方。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

▶ リノベーション記事まとめは【こちら】

 

愛知県・名古屋市の設計事務所・建築家としての考え方や取り組みは、こちらにまとめています

▶ トップページ:Tabi タビ|愛知県名古屋市の設計事務所

関連記事

おすすめ記事
特集記事
  1. 自然素材のインテリアで叶える、五感にやさしい注文住宅|健康的な暮らしを包む“心地よさ”の設計術

  2. 【外観デザイン×注文住宅】“美しい佇まい”のつくり方|建築家が実践する-5つの外観設計手法

  3. 【設計事務所×注文住宅】建築家選びで後悔しないために|相性の見極め方・よくある失敗と依頼のコツ

  4. 【注文住宅】最高の間取りとは何か?|家づくりで後悔しない“7つのルール”-間取りの良し悪しの判断基準とは?

  5. 家づくりで後悔しないために|注文住宅で絶対知るべき7つの家づくりポイント

  6. 和モダンインテリア完全ガイド|注文住宅で失敗しない内装設計7つのポイント

  7. 【オーダー建具-再考-】なぜ“既製品の建具”では設計に限界があるのか?|注文住宅が劇的に変わる-“造作建具”の真価とは?

  8. 【注文住宅×オーダー家具】名古屋の建築家が提案|“造作家具のすすめ”-魅力・費用・事例・注意点まとめ

  9. 子育て世代に人気の注文住宅|間取り・収納・動線の工夫と5つのポイント-失敗例と対策も紹介

  10. 建築家・設計事務所の“保証”とは?設計・施工・アフターを徹底解説

  1. 家事動線がいい家の間取りとは?|注文住宅で家事がラクになる設計の工夫・5つのポイント

  2. 建築家の設計事務所 vs 設計士の工務店-“決定的な違い”とは?|注文住宅で後悔しない選び方

  3. 【アウトドアリビング】注文住宅で人気の“屋外リビング”とは?|暮らしを豊かにする魅力と設計の工夫-建築家が実例で紹介!

  4. 【 ZEHの落とし穴 】「補助金が出る=得」は本当か?|一級建築士が語る“損しない家づくり”-注文住宅の真実

  5. 「高断熱=快適」は真実か?|断熱等級4でも“心地よい家”をつくる注文住宅の賢い戦略 ─ オーバースペックは大きな損?

  6. 【後悔しないために】長期優良住宅は本当に損しない?|補助金・資産価値・寿命のウソと真実【注文住宅の落とし穴】

  7. 【必読】工事請負契約とは?|注文住宅で後悔しないために知るべき“契約の核心”-流れ・費用・落とし穴を建築家が徹底解説

  8. 【内装インテリアの色選び】床・壁・天井で後悔しないための基本ルール|注文住宅の家づくりとデザインの注意点ガイド

  9. 【注文住宅の照明計画】おうち時間を楽しむライティングデザイン|後悔しない照明の選び方と部屋別ライティング術

  10. “大開口の家”を叶える構造設計|美しく、地震に強い窓のつくり方-注文住宅の構造補強ガイド(大開口編)

TOP
オープンハウス イベント 資料請求 お問い合わせ