土地探しをしていると、様々な形状の土地を目にすることでしょう。
特殊な形状の代表的・典型的なものに「旗竿地」と呼ばれるものがあります。
旗竿地は特殊な形であるが故に、やめた方がいい方もいらっしゃいますが、実際に旗竿地を選んだ方がとても満足しているケースも少なくありません。上手に選べば、購入する土地のとても良い選択肢になる可能性があります。

そこで、本記事では、旗竿地のメリット・デメリットを挙げ、旗竿地を購入する際の注意点などを詳しく解説します。旗竿地の特徴・特性を整理し、土地選びにぜひご活用ください。

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旗竿地とは?
旗竿地とは、道路に接する出入り口からある程度の距離まで細長い「竿状」の部分と、その奥にまとまった広さの「旗状」の部分が一体となった土地のことです。竿につけた旗のような形状をしていることから、「旗竿地」と呼ばれています。「旗竿敷地」・「敷地延長」・「専用通路」・「路地状敷地」などと呼ばれることもあります。
旗竿地に建物を建築する場合には、道路から奥まった「旗状」の部分に家や建物を計画することが多いです。

旗竿地ができる理由・竿部分について
ここからは、旗竿地がどうして出来るのか?その理由と、旗竿地と土地評価との関係、竿部分の特徴などについて解説します。
旗竿地は、土地の価値・評価・価格・建築計画の自由度・住環境などが総合的に高くなる、あるいは保全できるように考えられた、優れた分筆方法です。その成り立ちを知ることは、旗竿地の特徴について知ることにつながります。

旗竿地ができる理由
旗竿地ができる理由を例を挙げて解説します。
まず、面積的に非常に大きく、価格は1億円の土地があるとします。
そのままでは高額で買い手がつきにくく、家を建てるにしては広すぎますよね。
基本的に、このような土地は分割されて効率よく売却されることが多いです。
例えば、4分割するのが売却時にはベストだとします。つまり、4分割にすると、4つの土地全てが家を建てるのには十分な面積で、買い手のつきやすい価格となるとしましょう。
それでは、次のように単純に4つに分割してみます。

上図のように単純に縦に4等分してみました。
すると、極端に間口が狭い土地4つとなりました。
このようなウナギの寝床のような土地では、建築を計画する際、間取りなどの制限がとても強く、自由に設計できません。要望は叶えられず、理想の暮らし・建物の実現は難しいことでしょう。つまり、売れなさそうな土地、売れ残りそうな土地が4つも出来てしまいました。
では、旗竿地のように分けてみてはどうでしょうか?
下図のように4つの土地に分割してみます。

上図のように、道路から手前に2つの整形の土地、奥に2つの旗竿形状の土地、計4つの土地に分割した場合を見てみましょう。
当然、道路から手前にできた2つの整形の土地は、売れやすい土地になります。
また、旗竿の土地に関しても、旗の部分には十分な広さ・間口・奥行がありますので、制限が緩く自由に建築を計画することが出来そうです。
さらに、竿の部分に関しても、間口の幅や工夫次第で駐車スペースにするなどの有効活用も可能です。

旗竿地を作る分割方法は、分割後も、すべての土地の居住性を保全でき、かつ、自由度の高い建築計画ができる土地になる、効率よく土地を売却しやすい、非常に優秀な分割方法だと言えます。
そして、旗竿地は、形状・外観・デザイン・間取り・外構などにより多くのバリエーションを持たせることが出来るより多くのニーズを満たすことができる土地であることが多いのです。

旗竿地の評価。竿部分について。
ここからは、旗竿地の土地評価について解説していきます。
旗竿地では、竿部分に建物を建てるのは厳しいですから、竿部分の評価は低いです。
さらに、土地全体の資産価値で見ても、同じ面積の整形地より低くなる傾向にあります。

ただ、1番大きな問題は、低いなりにも評価されてしまう竿部分をどう捉えるか、でしょう。
建築基準法によって、前面道路に接する「間口」および竿部分は幅2m以上を確保しなければなりません。2m以上ない土地には、建物を建築することは出来ません。しかしながら、竿部分の間口が必要最低限の2m程度の土地は、竿部分には狭すぎて駐車出来ませんし、車で通ること・敷地からの車の出し入れでさえ、毎日ともなると億劫になる・ストレスを感じるようになることでしょう。竿部分の間口は少しでも広いほうが安心です。

この竿部分には、メリットも多くあります。
旗竿地全体の大きな代表的なメリットは次項で後述しますが、竿部分のメリットとしては、例えば、
竿部分に防犯対策を講じたい!
人目につきにくい場所に住みたいので家を奥に控えた位置に建てられる旗竿地は理想的!
という方には、ぜひ、おすすめです。

旗竿地の評価額・計算方法
ここからは、旗竿地の評価額、その計算方法について説明します。
旗竿地の評価は、3つの計算方法で評価されます。
この3つの計算方法は、どれも、<相続税路線価>というものを基準としていますので、まずは、そちらから説明しますね。

相続税路線価(路線価)とは?
相続税路線価(路線価)とは、相続・遺贈・贈与などによって取得した、土地の評価額を計算する際に指標となる公的な土地評価指数のことです。
毎年1月1日時点を基準日とし、その年の7月上旬に、国税庁が発表しています。
相続税路線価が設定されているのは、主に市街地の道路で、土地に面する道路(路線)ごとに1平米あたりの単価が1,000円単位で決められており,一般的な土地市場流通価格の80%程度に設定されています。

評価額と計算方法
それでは,旗竿地の評価額を計算するための、3つの計算方法を解説していきます。
その旗竿地がどれくらい歪な形状をしているかで,評価額を下げる補正がかかりますので注意しましょう。
計算方法1.不整形地として評価
<計算式>
不整形地補正後の評価額 = 路線価 × 土地面積 × 不整形地補正率
きれいな整形の四角形でない土地、例えば、長方形や正方形でない不整形の土地には評価額を下げる補正がかかります。
整形であった場合の想定整形地と比べた時の欠けた部分を「かげ地」といいます。その「かげ地」が、想定整形地に占める割合を「かげ地割合」といい、「かげ地割合」に応じた補正がかかります。
計算方法2.奥行きが長い土地としての評価計算
<計算式>
奥行価格補正後の評価額 = 路線価 × 土地面積 × 奥行価格補正率
前面道路から奥行きが長い土地は使い勝手が悪いとして,評価額を下げる補正がかかります。
計算方法3.間口が狭い土地としての評価計算
<計算式>
間口狭小補正後の評価額 = 路線価 × 土地面積 × 間口狭小補正率
土地の間口が狭い場合は、評価を下げる補正がかかります。
土地の間口が8m以上の土地であれば、補正はかかりません。
上記3つの評価計算で、旗竿地の評価額は、その形が歪つであるほど、不利側に補正されます。
ただし、実際の評価を正確に計算するには、専門家の知識が必要です。
この記事では、どのような要素が土地の評価に影響するのか、土地の評価額の基準をざっくり掴んでおきましょう。

旗竿地のメリット
ここからは、旗竿地のメリットを解説していきます。
整形地などよりも資産的な評価は低くなる傾向がありますが、その形が大きなメリットになることもあります。

相場よりもお値打ちになりやすい。
旗竿地の最も大きなメリットは、土地価格が相場よりもお値打ちになりやすいことです。
旗竿地は不整形な土地であるがため、その周辺の土地の相場に対して、2〜3割程度、お値打ちに購入できる傾向にあります。その分、建物の建築費に予算を回すことができますし、建物+土地、全体の費用を抑えることが出来る可能性があります。
土地の価格がお値打ち、市場流通価格や課税評価が低い、ということは、固定資産税・都市計画税・相続税といった税金も抑えられます。

静かな環境
道路から奥まった場所、旗状の部分に建物を建てることになります。そのため、道路の車や通行人の交通による騒音が緩和され、比較的、静かな環境で暮らすことが出来ます。

プライバシーの保護・セキュリティの高さ
道路から奥まった場所、旗状の部分に建物を建てることになることは、道路から見えにくい、ということにも繋がります。道路の通行人からの目線も気にならず、プライバシーを保護することも、わりと容易です。加えて、セキュリティ面も高いです。建物へ到達するには、竿部分、人目に付きやすい長い通路を通らなければなりません。さらに、竿部分にゲートなどを設置すれば、セキュリティ性能は抜群に向上します。

旗状部分の建築計画の自由度が高い。
その土地に建築出来る建物の規模、建築面積と延床面積は、エリアごとに決められている建ぺい率や容積率によって制限されます。
例えば、「旗竿地の土地」と「整形の土地」があり、旗竿地の旗部分の面積と、整形の土地の面積が同じだった場合には、「旗竿地の土地」の方が建築計画の制限が緩くなります。
「旗竿地の土地」の方が面積が大きいので、建ぺい率や容積率による制限が緩くなるのです。けれども、旗竿地の方が、面積単位での価格が低いので、土地にかかる費用は同じ、ということも十分ありえます。

設計・建築計画で活きる。
旗竿地の旗の部分の面積や形状が十分であれば、建築を計画・設計する上で、整形地に条件が劣ることはありません。土地を低い費用で抑え、叶えたい住まいや建築を実現できる可能性は十分あります。土地ごとの日照・通風などの居住環境は、「斜線制限」「絶対高さ制限」「日影規制」といった建築基準法や都市計画による建物の高さ・距離・形状の規制によって保全されているため、整形地と比べ、環境が圧倒的に悪い、ということも、ほぼありません。

また、竿部分も、どう活用するかで、その価値が決まります。車の駐車として利用することもできるかもしれませんし、植栽などを施して、外観デザインを向上させることもできるでしょう。
建築の設計次第の土地、建築計画で活きる土地だと言えます。

旗竿地のデメリット
ここからは、いくつかある旗竿地のデメリットを解説していきます。
メリットだけでなく、デメリットも整理することで、不要なトラブルや後悔を未然に防ぎましょう。

日照・通風などの居住環境の面で不利となる場合がある。
周囲の建物が密集していたり、3階建ての建物が集まっているエリアの場合には、旗竿地の土地は、日照・通風などの居住環境の面で不利となることもあります。この点、特に抜群の日照が欲しいという方は注意が必要です。
ただし、建物の建築設計・計画次第で、このデメリットは克服・緩和することが可能です。
例えば、
・2階にリビングを設ける。
・トップライト、ハイサイドライト窓を設けたり、採光・通風のための窓を増やす。
・吹き抜けやステップフロアによって、光や風を導く。
などの設計手法が挙げられます。

建築コストが余分にかかる可能性がある。
旗竿地の竿部分の通路幅が狭く、重機が建築部分まで到達出来ない場合や、旗状部分の面積が十分広くなく重機が駐車出来ない、資材の置き場がない場合には、建築コストが余分にかかる可能性があります。
一般的なケースの場合よりも余計に手間がかかり、人員や工期が必要となるからです。
また、周辺が囲まれているので、工事の騒音・臭気・粉塵が問題になりやすいです。近隣への対策の費用も多めにとられることでしょう。

さらに、旗竿地では、ライフライン、特に上下水道の引き込みの費用が通常よりも多めにかかる可能性があります。ライフラインの工事には、上下水道の他にも、電気・ガス・ネット回線などの工事もあります。合計すると、結局、ずいぶんと余計に費用がかさむことも十分あり得ることです。ただし、これは、土地の形状によって様々です。旗竿地の購入を検討されている方は、一度、建築会社にも相談しましょう。

駐車スペースが十分にとれない可能性がある。
旗竿地の竿部分、通路部分は、間口が2.5m以上あるケースがほとんどです。
けれども、2.5m程度では、複数台用の駐車場としては、非常に使いにくく、十分な幅とは言えません。
竿部分、通路部分にある程度のゆとりある幅があれば問題ありませんが、そのようなケースは稀です。
竿部分、通路部分の境界に、塀、フェンス、植栽などを設置すれば、すぐに駐車場として利用できなくなるケースもあります。十分に注意しましょう。

なお、隣地境界線上に塀やブロックなどを設置しない方法として、「協定道路」の合意というものがあります。けれども、これは当事者間だけ有効の協定です。隣地の所有者が変わった場合には、引き継げない可能性もあります。

隣家との騒音・防犯上の問題が起きやすい。
旗竿地のその特殊な形状が原因となり、騒音や防犯の問題が生じる可能性が比較的高いです。
建物がある場所が奥まっていて、周囲が家に囲まれているので、子どもやペットの音、その他の生活音が騒音の問題として起きやすくなります。窓の遮音性能を上げるなどの物理的な対策や、近隣への配慮が必要になることもあるかもしれません。

防犯上の問題に関しては、奥まっている事で侵入が難しくセキュリティ性能は高くなりますが、侵入を許せば、侵入者・不審者は周囲から発見されづらくなります。簡単に入れないように、ゲートを設けたり、監視カメラの設置も検討することをお勧めします。

旗竿地購入時の注意ポイント
旗竿地のメリット・デメリットを整理した上で、旗竿地の購入を検討される方もいらっしゃることでしょう。ここからは、旗竿地購入時の注意ポイントを解説します。事前に把握し、十分注意して確認することで、不要なトラブルや後悔を回避しましょう。

路地状部分の幅に注意
原則、道路に2m以上接道していない敷地には建物が建てられないこと、また竿部分の通路幅はどこをとっても幅2m以上あることが建築基準法で求められます。例えば、その土地に既存の家や建物が建っていても、これらの要件を満たしていない場合や、現行法によって認められなくなった場合には、再建築は出来ません。
しかしながら、これらの要件を満たさない旗竿地も販売されています。ここには注意が必要で、特に、古い土地は必ず注意してください。

土地を購入する際は、役所へ事前相談し、再建築可能かどうかを確認しましょう。可能だと判断された場合には、担当者名と相談内容をメモしておいた方が良いでしょう。住宅会社などに相談してもいいと思います。再建築できたとしても、建て替え前ほど大きな建物は建てられないなど、制限が付く場合もあります。
隣地建物の高さや密集度に注意
旗竿地の建物は、奥まった位置となり、周囲が隣地の建物に囲まれます。隣地建物の高さ、3階建以上ではないか?だったり、境界線から十分な距離があるか、などの密集度は、採光・通風に大きく影響します。事前に確認しておいた方がいいでしょう。さらに、隣家の開口部の位置は、騒音・臭気・目線などの問題で重要です。こちらも合わせてチェックしておきましょう。

建築費用の割り増しの程度に注意
デメリットの解説の項で、旗竿地では、下記の点で余分に費用がかかる傾向があることを解説しました。
・重機設置場所がない、資材搬入経路が取れない、などが原因で手間・人員・日数が余計にかかる。・前面道路からのライフラインを引き込む距離が長くなるため配管などの費用が余計にかかる。
この辺りの建築費用の割り増しがどの程度か、その他の希望と合わせて、事前に確認しておきましょう。

資産価値に注意
土地には、資産としての価値もあります。旗竿地の資産価値を確認しておきましょう。
例えば、住宅ローンの銀行の担保査定の際、周囲の土地との境界線などの権利関係が不明瞭であるなどして建築可能か不可能か不明瞭の場合には、融資額が満額で承認されないこともあります。このことは、将来の建物の解体時や売却時にも影響します。
そもそも、一般的には、旗竿地は整形地に比べ、比較的、売れにくいとされています。
購入前には、いつまでその土地に住むのか、売却時はどうするのか、将来の展望慎重に検討しましょう。

近隣住民との関わり方に注意
旗竿地の住まいでは、周りの隣家に囲まれて暮らすことになります。
そのため、周囲の隣家の方々との関わり合い、ご近所付き合いが住み心地に大きく影響することに注意しましょう。
建築中には、必ずご迷惑をおかけしていますし、将来的な増改築や修繕の際も同様に、お世話になります。
さらには、普段の生活の中、自分が意図しないところで、音や臭いによって、ご迷惑をおかけしていることもあるでしょう。
普段からお互いさまの精神で、良好なご近所付き合いを心掛けることが居心地を守ることにつながります。

まとめ
本記事では、旗竿地の特徴やメリット・デメリット、購入する際の注意点などを詳しく解説しました。
旗竿地は、その特殊な形状から、デメリットばかりがイメージされがちですが、メリットも多くあることをご理解頂けたかと思います。
旗竿地とはいっても、なかには、竿状部分の幅・間口が広めで、並列駐車もできてしまうような旗竿地もあります。
土地探しの際には、旗竿地を最初から敬遠するのではなく、選択肢の1つとすると、選択肢がグッと増えることでしょう。

旗竿地での家づくりは、建築の設計・計画の良し悪しが大きく影響します。
ぜひ、土地探しから建築会社に相談し、土地と建築を同時に計画しましょう。
それが失敗しない土地探しの秘訣です。

私たちの設計事務所では、ご相談・間取りなどの提案は無料です。もちろん、土地探しからのご相談も歓迎です。
施工をしない・建築家の家づくりは、工務店・ハウスメーカーなどとは大きく違います。
少しでも家づくりにこだわりたい気持ちがあり、建売などではなく注文住宅を採用されるのであれば、まずは建築家に相談してみること、それから色々と考えるのがおすすめです。
その際、私たちのような、機能・デザイン・コストなど全方位でバランスの良い住まいを目指す建築家であれば、より相談できることは多いことでしょう。
建築家の仕事に距離は関係ありません。私も全国から依頼を承っております。
遠方の方でも距離を気にせずに、建築のことであれば何でもお気軽にお問い合わせ頂けると幸いです。

最後に。
住宅設計は、人生のデザイン。
住まいは、生涯の大半を過ごすであろう空間です。
皆様が妥協・後悔・失敗することなく、豊かな暮らしを送れますように。
夢の実現を全力でサポートする、良きパートナー・建築会社が見つかることを願っています。
名古屋の設計事務所 Tabiでは、家づくりに必要な情報や予備知識をブログにまとめ発信しています。
ぜひ、参考にしてみて下さい!
土地に関する絶対に把握しておいて頂きたい内容はこちら↓のリンク・記事にまとめています。ぜひ、こちらの記事も合わせて、参考にしてみてくださいね!
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