あえて「適正価格」を掲げる。
そんな建築家は珍しく、
私はその数少ない一人だ。
「適正価格」というマニフェストは、
「安い建築をつくる」という単純な宣言では決してない。
厳しくとも、 条件の中で理想を実現する力こそ、自らの存在意義。
だからこそ、掲げる宣言だ。
予算、敷地、法規、構造、性能、施工性。
建築には、必ず現実的な問題がある。
理想だけを語っていても、建築は完成しない。
一つひとつの問題に対して、
向き合い、考え、工夫し、乗り越えていくこと、
それが大切だというのは言うまでもないだろう。
つまり、問題を乗り越え、
理想を現実にたぐり寄せる力。
それが、私の設計力であり、私自身の絶対領域。
ここでは、誰にも負けることはなく、
私が自身の設計事務所を営む理由の一つである。
数多い条件の中でも、
予算は最も代表的な条件の一つだ。
お金をかければ、できることは増える。
しかし、本当に必要なのは、金なのだろうか?
否。
本質的に必要なのは、「工夫」である。
何を残し、何を削るのか。
どこにお金をかけ、
どうやって解決するのか。
いつも最後に求められるのは、
一人ひとりが考え抜いた末の答え、
「工夫」である。
家づくりは、
適切な判断を積み重ねながら、
少しずつ理想へ近づけていくものだ。
限られた予算で、価値を最大化していく。
その過程も、私は大切にしたい。
成果物だけでなく、
「設計」という行為そのものにも、
大きな価値があると考えているのだ。
与えられた条件を
そのまま受け入れ諦めることなど、
私はしたくないし、
依頼主に求めたくもない。
依頼主が諦めてもなお、
「もっと良くすることは本当にできないのか」
最後の最後まで、私だけは考え抜くこと。
これまでの人生で得た、
経験と知見を出し惜しみすることなく、
一つひとつ答えを探していくこと。
工夫することこそ、人間の尊厳だと、私は考えている。
それを家づくりに取り戻したいのだ。
既製の答えを当てはめるのではなく、
その人のために考え抜いた
「答え」(最適解)を導き出す。
それが、設計本来の姿だと信じている。
そのためには、
徹底的に隅々まで精査する。
寸法も、素材も、構造も、コストも。
時には、1mm・1円でも、
予断を許さない。
施主がもう十分だと言ったとしても、そんなことは関係ない。
私が納得するまで、
小さな違和感を一つずつ取り除きながら、
より良い答えを探していく。
私が実現したいのは、
依頼主が思い描く暮らしへの理想と、
建築家として私が信じる理想、
二つの理想を共鳴させ、
より良い建築を生み出すことだからだ。
その瞬間こそ、私の最大の報酬。
適正価格とは、単に金額を抑えることではない。
現実と向き合い、工夫を重ね、可能性を最大化すること。
だから、私は「適正価格」を掲げている。
2026年8月18日
設計事務所 Tabi
和田 貴裕
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