はじめに|マンションリノベーションは「設備次第」
快適さも費用も大きく変わる。
マンションのフルリノベーションを検討する際、多くの人が注目するのは「間取り」や「内装」のデザインではないでしょうか?しかし、見た目よりも暮らしの質に直結するのが“設備”の更新。
特に築20〜40年クラスの中古マンションでは、配管・電気・空調・給湯などのインフラが老朽化しており、「見た目だけキレイにしても中身はボロボロ」というケースが珍しくありません。こうした設備を放置してしまうと、水漏れ・電気容量不足・カビや臭気などのトラブルが発生し、「なんであの時に一緒に直さなかったのか」と後悔してしまうことに・・・
さらに厄介なのは、「何を交換すべきで」「何は残してよいか」の判断が非常に難しい点です。業者によって言うことも違い、費用もピンキリ。知識がないと“後から高くつく選択”をしてしまう危険性も・・・

そこで本記事では、マンションリノベーションにおける「設備更新」について、
・どの設備を更新すべきか
・その判断基準や見極め方
・工事の制限や費用対効果
・実際によくある後悔・失敗事例
まで、建築の視点で徹底的に解説します。
ぜひ、参考にしてください。
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第1章|マンションリノベーションで更新すべき“主な設備”とは?
設備更新が必要な理由
マンションの設備は、住まいの“血管や神経”のようなものです。外からは見えないため軽視されてしまうことも多いいようですが、老朽化による劣化や性能不足は、暮らしの快適性に直結します。
特に築30年以上のマンションでは、設計当初の設備がそのまま使われていることも多く、現代の生活スタイルや電化製品に対応しきれていないことも少なくありません。
リノベーション時に特に注意が必要な主要設備は下記の通りです。
ここで、しっかりと確認しておきましょう。

1-1. 給排水管(上下水・排水縦管)
- 主な問題点:金属管の腐食、漏水リスク、継手の劣化、内側の詰まり
- 更新の目安:築25〜30年超が交換検討ライン
- 注意点:床下・壁内・天井裏に隠れているため、リノベーション時でなければ交換は困難
- 見逃すと?:入居後の水漏れリスク → 工事や補修が困難&高額になってしまうことも。
1-2. 電気設備(分電盤・電気容量・配線)
- 主な問題点:昔のままでは現代では容量不足、電圧降下、絶縁劣化、ブレーカー不足
- 特に重要な点:電気契約容量(kVA)と回路分けの設計
- 例:IHコンロ+電子レンジ+エアコンが同時に使えない問題など
- 現代の生活に対応するには?:電気容量を40A〜50A程度に増強+回路の分割が必須です。
1-3. 空調・換気設備(エアコン・換気扇・ダクト)
- よくある誤解:「エアコンはあとでつければいい」は危険です。
- 配管・ダクトルート:後からだと通せないor大工事になるケースも多いので注意。
- 換気設備の劣化:排気性能の低下、カビ臭の原因になってしまいます。
- 更新ポイント:換気計画は設計初期段階で検討必須です。
1-4. 給湯器・ガス配管(専有部内)
- 給湯器の更新タイミング:製品寿命は10〜15年が目安
- ガス管の腐食や劣化:マンションによっては交換不可のケースもあります。
- 専有部 vs 共用部の確認が重要です。
このように、設備更新は「見た目」では判断できず、「見えない場所こそプロと一緒に確認する」ことが重要です。
次章では、これらの設備をどこまで交換すべきか?その判断基準を掘り下げていきます。

第2章|「どこまで交換すべきか?」設備更新の判断基準
“全部交換すれば安心”とは限らない
設備更新の方針を立てる際、多くの人が「古い=全部交換すればいい」という思い込んでしまう傾向がありますが、一概にそういうわけではありません。
実際には、工事範囲・コスト・管理規約の制限・建物構造など、様々な条件が関わってくるため、「全交換」が正解とは限らないのです。
逆に、残しても良い設備を安易に更新したり、残すべき配管を不用意に触ってしまうことで、コストだけかさみ、かえってトラブルを招くケースもあります。
そこでこの章では、交換すべき設備・再利用できる設備の判断基準を整理しながら、優先順位を明確にする方法を解説します。

2-1. 築年数だけで判断してはいけない理由
「築30年だから全部ボロボロ」という思い込みをする方もいらっしゃいますが、そうとも限りません。更新の必要性は、築年数だけで判断できるものではないのです。
たとえば、実際には、以下のような条件によって設備の状態は大きく変わります。
- 管理状況(修繕履歴):定期的に交換されているケースもある
- 使用頻度・居住人数:劣化スピードが異なる
- 専有部と共用部の関係:共用配管は住戸単位で触れない場合も
このように、築年数は“目安”でしかなく、実際には現地での調査と確認が必須だと考えましょう。

2-2. 設備ごとの“更新目安年数”と状態判断のポイント
設備ごとの更新目安の年数と状態判断のポイントについては、下の表をご覧ください。
| 設備 | 更新の目安 | 主な劣化症状 | 更新判断の基準 |
|---|---|---|---|
| 給排水管 | 25〜30年 | 赤水・漏水・詰まり | 床下・壁内で腐食や錆が確認されたら更新 |
| 電気配線・分電盤 | 25〜30年 | 漏電・電圧降下 | 容量不足・分電盤の旧型化があれば更新 |
| 換気設備 | 15〜20年 | 異音・排気不良 | ファンの劣化、ダクト詰まり |
| 給湯器 | 10〜15年 | お湯が出にくい・異音 | メーカーの保証期限超過で交換推奨 |
ここで注意して頂きたいのは、表はあくまで目安であり、設備の材質・設置条件・使用状況によって前後するということです。見た目では分からない劣化も多いため、内覧時や設計前には、必ず点検を依頼しましょう。

2-3. 「再利用」「部分交換」で済ませるべきケース
設備の交換・更新が必要だとしても、そのすべてをフルに更新する必要はありません。
たとえば以下のようなケースでは、部分的な更新・再利用でもリスクが少ないと判断できることがあります。
- 水回りの位置を動かさない → 給排水管は先端部だけ更新
- 電気容量が足りている → 配線は流用、分電盤のみ交換
- 換気ルートが健全 → ファンだけ交換してダクトはそのまま
このように部分的な更新・再利用でも十分なケースがある一方で、中途半端な再利用はリスクも伴います。
「更新か否か」は見積もりベースではなく、劣化状況ベースで判断するのが賢明です。

2-4. 水回りの移動と“制限・可否”の基本
キッチンや洗面、トイレ・浴室などの位置を変更したい場合は、給排水経路の確保が最大の制限要因になるケースが多いです。
たとえば・・・
- 排水は勾配が必要=自由に移動できない
- スラブ下配管 or 二重床かどうかがカギ
- 排水縦管(共用部)の位置は動かせない
- 床をかさ上げして移動する方法もあるが、天井高が低くなるデメリット
など。
また、管理規約によっては「水回りの移動禁止」や「申請・承認が必要」となっていることもあるため、設計段階で必ず確認しましょう。
次章では、実際に起きた“後悔例”を通じて、設備判断の失敗パターンを解説していきます。

第3章|リノベーションで“後悔しやすい”設備判断の失敗例
「見えない部分は後回し」で、結局一番後悔する。
設備の更新判断は、知識や経験がないと軽視されてしまうことが多いものです。
特に、初めてリノベーションをする人ほど「見た目は綺麗になったけど、中身の古さで不便が続いている…」という落とし穴にはまりやすいもの。
そこでこの章では、実際に多くの人が経験する「失敗しやすいパターン」を紹介しながら、設備更新の重要性と判断ミスのリスクを具体的に掘り下げていきます。

3-1. 失敗例1.給排水管を更新せず、水漏れトラブルに
「リノベで床も壁も張り替えたのに、1年後に水漏れ。全部やり直しになりました…」
まず最初にご紹介する失敗例は、給排水管を更新しなかったために、水漏れトラブルが発生したケース。
築30年以上の物件で給排水管をそのまま流用した結果、
見えない部分で継手が破損し、階下への漏水事故に発展。
保険対応も難航し、結局工事のやり直し+追加費用100万円以上というケースも。
特に「既存配管が鉄管や鋼管の場合」には、注意が必要です。
腐食や詰まりのリスクが非常に高く、全面更新が基本です。
3-2. 電気容量不足で暮らしに不便が発生
「IHコンロと電子レンジが同時に使えない。エアコンをつけるとブレーカーが落ちる…」
続いてご紹介する失敗例は、電気容量不足で暮らしに不便が発生したケース。
築古マンションでは、分電盤が30A以下・回路数が少ないというのが一般的ですが、
現代の暮らしでは、IH・食洗機・乾燥機・エアコンなどの電力使用量が高いものが多い。
電気容量の不足は致命的です。
容量を増やすには、幹線(電気の引込線)や分電盤の交換が必要になります。
そのため、リノベーション前には、必ず確認が必要。
「電気まわりは後でも大丈夫」という油断は、日常生活のストレスの大きな原因になってしまうかもしれません。
3-3. 換気が不十分でカビ・臭気がこもる家に
換気を甘く見た結果・・・「リビングに湿気がこもる」「窓を開けないとカビ臭い」
3つ目にご紹介する失敗例は、換気が不十分でカビ・臭気がこもる家になってしまうケース。
築年数の古いマンションでは、換気ルートや設備が機能していないケースが多数あります。
とくにダクト式の換気扇や排気ファンが劣化している場合、見た目ではわかりません。
しかもリノベーションによって部屋の区切りが変わると、空気の流れも変わってしまいます。
適切な換気設計なしでは、湿気・結露・カビ臭・空気の淀みが深刻になってしまうことも。
3-4. ガス配管を更新できず、後から設備制限が発生
「古いガス管が劣化していたのに、共用部だから交換できなかった。将来使えなくなるかも…」
最後にご紹介する失敗例は、ガス配管を更新できず、後から設備制限が発生してしまったケース。
ガス管の一部は共用部にまたがっているケースが多く、勝手に交換できないことがあります。
リノベーション時に放置すると、数年後に「ガス給湯器が使えない」「都市ガスからオール電化へ強制移行」などの問題が発生することも。
築古マンションでは、「いつ・どの範囲でガス管を交換できるのか」を管理組合と確認することが必須です。

第4章|設備更新にかかる費用と“費用対効果”の考え方
「予算オーバーが怖い」と悩む人ほど、判断軸を間違えている
設備更新にかかる費用は、たしかに安くはならないことが多いかもしれません。
しかしながら、本質的な問題は設備更新の初期費用が「高いか安いか」ではなく、中長期的に見て、トータルで「高くなるのか、安くなるのか」
その投資が“価値に見合っているかどうか”です。
たとえば見た目にお金をかけた結果、給排水管を古いまま残して漏水トラブルが起きれば、多くのものが台無しになってしまいます。
一方で、適切な配管更新・電気容量の増設・換気ルートの確保は、日々の安心と快適性、そして資産価値の維持にもつながります。
そこでこの章では、主要な設備更新の費用感と、どこにお金をかけるべきか、「費用対効果」の視点から解説します。

4-1. 設備更新の「ざっくり費用感」
次の表は、設備更新にかかる費用感の目安をまとめたものです。
| 項目 | 内容 | 費用の目安(専有部のみ) |
|---|---|---|
| 給排水管交換 | 専有部内の配管全交換 | 約20万〜50万円 |
| 電気容量増設・分電盤交換 | 30A→50A/回路追加など | 約15万〜30万円 |
| 換気設備更新 | 換気扇・ダクト・ルート調整 | 約10万〜25万円 |
| ガス給湯器交換 | 本体+配管接続(都市ガス) | 約15万〜30万円 |
| 水回り移動 | 排水経路の確保・床上げ等含む | 約10万〜40万円/箇所 |
※上記は目安であり、マンション構造・階数・工法・管理規約等により大きく異なります。
※共用部配管の工事は別途不可 or 管理組合対応になります。

4-2. 節約してもいい箇所・お金をかけるべき箇所
上記の表で設備更新にかかる費用感の目安をざっとご紹介しました。
続いて、設備更新の中でも「節約してもいい箇所」と、「お金をかけるべき箇所」をご紹介します。
■節約できる箇所
- 設備機器のグレード(高級機種は選ばなくていい)
- 機能の“盛りすぎ”カスタマイズ(タッチレス水栓・IoT照明など)
- 内装の仕上げ(設備安全に関係ない)
■お金をかけるべき箇所
- 見えないインフラ(配管・電気・換気)
- 水回り移動時の排水計画と床レベル調整
- 幹線(電気・ガス)や分電盤の容量確保
このように、まずは、“グレード”よりも、“インフラを成立させる”ことに予算をかけるのが鉄則です。

4-3. フルリノベーション vs 表層リフォームでの設備費の違い
つづいて、フルリノベーションと表層リフォームでの設備更新にかかる費用の違いを確認していきましょう。
下記の表に「フルリノベーション vs 表層リフォームでの設備費の違い」をまとめました。
| 比較項目 | フルリノベーション | 表層リフォーム |
|---|---|---|
| 設備更新のしやすさ | ◎(床・壁を解体するため自由度大) | △(解体しないため配管等は触りにくい) |
| 給排水管更新 | 可能(全面交換) | 困難(部分対応) |
| 電気・空調計画 | ゼロベースで設計可能 | 既存制約に従うことが多い |
| 将来トラブルのリスク | 少ない | 高い(設備老朽化が残る) |
このように、短期的な費用を抑えるなら表層リフォームでも良いですが、中長期的にはフルリノベーションの方が圧倒的にコスパが高くなる傾向があります。

4-4. 安く見えて“高くつく”選択とは?
ここまで、設備更新の費用について確認しました。最後に、設備更新の費用に関して、最も注意していただきたい点をご紹介します。
それが、安く見えて“高くつく”選択は後悔の源だ。ということ。
たとえば、次のようなトラブルの原因となってしまいます。
- 給排水管を交換しなかった結果、床下から漏水して数百万円の損害
- 電気容量を増やさず、ブレーカーが落ちて電気工事をやり直す羽目に
- 安価な換気扇を選んで、湿気トラブルで内装が台無しに
こうした“後からの不必要な追加工事”は、費用だけでなくストレスや暮らしの質にもダメージを与えます。
初期費用が少し高くても、「必要な更新は最初にやっておく」が長期的に見れば得策だといえるでしょう。
▼コスト戦略については、こちらの記事で解説しています。
マンションリノベーションの費用内訳と予算配分‐後悔しない“コスト戦略”とは?|判断基準・予算の優先順位の決め方

第5章|工事の“制限・ルール”と管理規約のチェックポイント
やりたいことが“全部できる”とは限らない
マンションリノベーションでは、戸建てと違って「建物全体のルール=管理規約」や、「構造的な制限」がつきまといます。
特に設備更新に関しては、共用部と専有部の線引きがあいまいになりやすく、無許可で工事を進めると後からトラブルになるリスクもあるものです。
そこでこの章では、リノベの設備工事で気をつけるべき法的・構造的・管理的な制限とルールを整理します。

5-1.「専有部」と「共用部」の境界を正確に理解する
リノベーションをするうえでまず確認すべきことは、「専有部」(自分で工事できる範囲)と「共用部」(勝手に触れてはいけない範囲)の境界の確認です。
「専有部」・「共用部」それぞれの特徴を下記の表にまとめました。
| 範囲 | 内容 | 工事可否 |
|---|---|---|
| 専有部 | 室内の床・壁・天井、内部の配管・配線 | 工事可能(管理組合への届け出が必要な場合あり) |
| 共用部 | サッシ・玄関ドア・床スラブ・外壁・縦管(排水)など | 原則NG(管理組合の承認が必須) |
「どこまでが自分の工事範囲なのか?」を曖昧なまま進めると、たとえば、
- 排水縦管:共用部に該当するため、勝手に接続変更できない
- 床スラブ:壊して排水を下げたり穴を開けるのはNG
- 電気の引込線(幹線):共用部なので容量変更には制限あり
このように、設計・計画後に大幅なやり直しが発生してしまいます。

5-2. 管理組合への“申請・承認”が必要なケース
設備工事は、たとえ専有部内であってもマンションのルールに従って、事前に届け出・承認を得る必要があるケースが多くあります。
具体的には、
- 水回り位置の変更(排水ルートの変更)
- 給湯器や換気扇などの機器交換(騒音やガス使用の影響)
- 電気容量の増設(共用部への影響がある)
といった場合には、管理組合によっては「構造に関わる工事不可」「音が出る作業は〇時~〇時限定」などの細かい規定があるため、工事内容を提出し、許可を得てから着工するのが基本です。

5-3. 天井裏・床下の“配管スペース”が制限を左右する
「キッチンを壁付けからアイランドにしたい」「洗面所を廊下に移したい」など、設備の位置変更を希望される場合には配管ルートの確保が最大のボトルネックになります。
問題になるのが以下のような条件です。
- 床下配管のスペースがない(スラブ直貼り)
→ 勾配が取れず、水が流れない=移動不可 - 二重床でも高さが足りない
→ 配管の通り道を確保するために、床を上げすぎて天井高が不足する - 天井裏が狭く、ダクトが通せない
→ 換気ルートや照明配線に制限が出る
設計時点でこれを見誤ると、間取りプランがまるごと破綻することも。

5-4. 既存配管・共用縦管と“どうつなぐか”は設計の腕の見せ所
ここまで説明してきたように、実は難易度が高いのが設備更新。
「既存の縦管(排水)にどう接続するか?」
「勾配が足りない配管をどう逃がすか?」
「設備の配置と給排気の取り回しをどう整理するか?」
こうした問題を解決するための“設計の工夫”は、設備更新を成功させるかどうかの分かれ道になります。
特にマンションリノベは、制限が多い=自由度が低いという前提を踏まえながら、機能性と空間性を両立させる設計力が求められるのです。

第6章|設備更新で失敗しないためのチェックリスト
「知らなかった」「聞いてなかった」では済まされない
マンションリノベーションの設備更新は、判断ミスや見落としが大きな損失や後悔につながってしまいます。
しかし逆に、事前に“何を確認すべきか”を明確にしておけば、大半のトラブルは防げるものです。
そこでこの章では、リノベーション前・設計時・施工前に確認しておくべき設備更新のためのチェックリストを、実務視点でまとめます。
必要なチェックは、次の5つです。
チェック①:構造調査と設備図面の確認を最初に行う
・築年数や外観ではなく、図面で配管・配線の経路を確認
・既存図面がない場合は、現地調査で天井裏・床下の空間を実測
・配管スペースの高さ、梁の位置、スラブ厚さも確認対象
図面だけで安心せず、現場の“現物”と照合しましょう。
チェック②:管理規約で制限される工事内容を洗い出す
・水回りの移動が禁止されていないか?
・給湯器の交換ルール、換気ルートの制限は?
・工事時間・搬出入のルールは?
“できる・できない”を管理組合に必ず事前に確認しましょう。
チェック③:交換すべき設備・再利用可能な設備を明確に仕分け
| 設備 | 判断基準 | 優先度 |
|---|---|---|
| 給排水管 | 築25年以上 or 鉄管・鋼管 | ◎ 必ず交換 |
| 分電盤・配線 | 容量不足 or 回路分け不十分 | ○ 増設推奨 |
| 換気ダクト | 劣化・騒音・排気不良あり | ○ 状況次第で更新 |
| 給湯器 | 10年以上使用 or 設置型古い | ◎ 更新必須 |
| 空調(配管含む) | ダクト通せない・能力不足 | △ 移設時は検討要 |
“全部交換”ではなく、状態と将来リスクを冷静に判断しましょう。
チェック④:コストと効果をセットで考える
・「削ったコスト」がどんなリスクや不便を生むのか?
・更新しないことで将来追加費用・工事が必要になるか?
・設備の寿命がバラバラだと、将来的にまた工事が必要になる非効率性も考慮
「今、更新すべき理由」を数字と論理で整理することが重要です。
チェック⑤:設計段階で“配管・配線ルート”まで計画する
・設備の位置移動だけでなく、給排水・電気・換気の通り道まで想定
・床レベルの調整・壁厚変更が必要かどうか
・位置変更が不可能な場合の代替案(収納・空間構成)を検討
プランの“見た目”よりも“裏側の機能性”を最優先に設計しましょう。
このチェックリストを踏まえれば、設備更新のリスクと無駄を最小限に抑えながら、快適で安心できる住まいを実現できます。
次章では、よくある疑問に答えるQ&A形式で、さらに細かいポイントをフォローします。

第7章|よくある質問(Q&A)
誰もが迷う“設備更新のリアルな疑問”に答えます
マンションリノベーションで設備を更新しようと考えたとき、
「水回りって本当に動かせるの?」「全部交換しないとダメ?」など、
実際に行動に移す段階で、細かくて現実的な疑問が次々に浮かんできます。
特に、築年数や構造、管理規約の制限など、マンションならではの条件が絡むため、
ネットで調べても情報が断片的だったり、結局どう判断すればいいかわからないという方も多いはずです。
この章では、そんな読者の声を元にした「よくある質問」にQ&A形式でお答えします。
迷いや不安をひとつずつ解消しながら、設備更新の判断をクリアにしていきましょう。

Q1. 水回りの位置って、どこまで自由に動かせるの?
A. 完全に自由ではありません。
排水には「勾配」が必要なため、スラブ直貼りの床では水回りの移動が制限されるケースがあります。
二重床でも配管スペースが足りなければ不可となることも。
また、排水縦管(共用部)の位置次第では、トイレや浴室の移動はできないことが多いです。

Q2. 給排水管はすべて交換すべきですか?
A. 基本的に、築25年以上なら専有部の配管は全交換推奨です。
特に鉄管や鋼管の場合は、劣化による漏水や赤水のリスクが高いため、全面交換が“後悔しない”選択です。
ただし、共用部配管は勝手に交換できないので、管理組合に確認が必要です。

Q3. 換気設備ってそんなに重要なんですか?
A. 非常に重要です。
特にフルリノベでは間取りや空気の流れが変わるため、換気計画を見直さないと湿気・臭気がこもる原因になります。
劣化したファンや詰まったダクトは性能が著しく落ちているため、更新+設計変更が必要になることもあります。

Q4. 電気容量って、どれくらい確保すれば安心ですか?
A. 一般的な2〜3人暮らしなら、最低40A〜50Aは欲しいところです。
IHコンロ・電子レンジ・エアコン・乾燥機などを同時に使う現代生活では、
30Aでは不十分なケースが多く、分電盤交換や幹線の容量増設が必要になることもあります。

Q5. 築浅(築10〜20年)のマンションでも設備更新は必要ですか?
A. 築浅でも、生活スタイルが変わるなら更新検討すべきです。
例:水回りを移動したい → 排水ルートの更新が必要
エアコン・照明を増設したい → 配線の分岐が必要
単に古さだけでなく、「設計に応じて必要になる更新」がある点に注意が必要です。

第8章|まとめ―設備更新は、快適な暮らしの“土台”の更新
マンションリノベーションにおいて「設備更新」は、デザインや間取り以上に暮らしの快適性と安全性を左右する要素です。
- 給排水管の劣化を見逃せば、数年後に漏水トラブル
- 電気容量が足りなければ、快適な暮らしは成立しない
- 換気計画が不十分だと、室内に湿気や臭気がこもる
- 水回り移動やガス配管など、構造的制限に気づかず後悔する人も多い
つまり、見た目ではなく“中身”の更新が、後悔しないリノベーションのカギになります。
設備とは、暮らしのインフラ。インフラが整っていなければ、快適には生活できません。
本記事では、配管・水回り・電気・空調といった主な設備について、
「どこまで交換すべきか」「どこに費用をかけるべきか」「失敗しやすい判断」「工事の制限」「チェックポイント」まで、建築家の視点で体系的に解説しました。
マンションリノベーションは、最初の判断で、全体が大幅に決まってしまうプロジェクトです。
設備という“見えない土台”をどう扱うかで、その家の10年後・20年後の暮らしの質が決まります。

“設計事務所とつくるマンションリノベーション”は、暮らしの質を引き上げる選択
マンションリノベーションは、ただの「表層を新しくするリフォーム」ではありません。
限られた条件を読み解き、暮らしを再編集するための“知的な設計行為”です。
狭さ、構造、配管、管理規約──。
多くの制約があるなかで、空間を整え、コストを最適化し、安心できる品質を実現するには、
「誰と進めるか」が、結果のすべてを決めると、私たちは考えています。
設計事務所と進めるマンションリノベーションには、例えば、次のようなメリットがあります。
- 見た目だけでなく、機能性や寸法まで“納得できる”空間
- 追加工事やあいまいな見積もりに振り回されない、中立性と透明性
- “施工会社任せ”にしない、設計と工事監理による品質管理
こうした設計プロセスこそが、日々の暮らしのクオリティを引き上げる本質的な要素です。
▼こちらの記事もおすすめです。
マンションリノベーションで“設計事務所”が選ばれる理由|建築家が叶える空間デザイン・コストパフォーマンス・工事の安心感

最後に|“暮らしの設計”を支えるのが、設計事務所・建築家
私たちの設計事務所は、豪華な家に固執する設計事務所ではありません。
むしろ、限られた条件のなかで何を整え、何を削ぎ、どこに本質的な価値をつくるか──その視点と技術、対話力を持つのが建築家です。
マンションリノベーションでは特に、設計力の有無が“仕上がりの満足度”を大きく左右します。
設備・構造・寸法・動線など、複雑に絡み合う要素を一貫して整理し、バランスを整えることこそが、建築家の役割です。

▼ こんな方は、ぜひご相談ください
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参考資料・公的機関リンク一覧(マンションリノベーション関連)
マンションリノベーションを検討中の方へ。
補助金・省エネ制度・住宅ローン・税制優遇など、信頼できる公的情報源をまとめました。制度の最新情報や申請条件の確認に、ぜひご活用ください。
国土交通省・経済産業省・環境省
住宅省エネ2025キャンペーン
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/
補助対象リフォームMAP
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/about/reform-map/
国土交通省
令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業
https://r07.choki-reform.mlit.go.jp/
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会
https://www.j-reform.com/
住宅金融支援機構|フラット35リノベ
https://www.flat35.com/loan/reno/index.html
厚生労働省
福祉用具・住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
介護保険における住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
環境省
先進的窓リノベ2025
https://window-renovation2025.env.go.jp/
経済産業省 資源エネルギー庁
給湯省エネ2025事業
https://kyutou-shoene2025.meti.go.jp/
国税庁
マイホームを増改築等したとき|住宅特定改修特別税額控除など
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm
No.1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1216.htm