マンションリノベーションの費用内訳と予算配分‐後悔しない“コスト戦略”とは?|判断基準・予算の優先順位の決め方

はじめに|マンションリノベーションの費用は「どう使うか」で決まる

マンションリノベーションを考えるとき、多くの人が最初に気にするのが「いくらかかるのか?」という金額の話ではないでしょうか?

ネットを見れば、「700万円でフルリノベ」「1000万円で理想の暮らし」など、まことしやかな数字が並んでいるのを目にするかもしれません。

しかし実際には、このような“相場”の数字には、あまり意味はない、といっても差し支えないでしょう。
なぜなら、費用は面積や築年数、構造、管理規約、希望する暮らし方、素材や設備のグレードなど、さまざまな条件によって、簡単に数百万単位で変動してしまうからです。

 

 

だからこそ本当に大切なのは、金額そのものよりも「どう予算を使うか」という“戦略”です。

そこで本記事では、マンションリノベにかかる費用の内訳を整理しながら、後悔しないための予算配分・判断基準・優先順位の決め方を丁寧に解説します。価格に振り回されず、自分たちらしいお金の使い方を見つけていきましょう。

 

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【徹底解剖】なぜ今“マンションリノベーション”が人気なのか?|新築・戸建てを超える─現代最強の選択肢10の魅力

 

 

Table of Contents

 

費用配分を考える前に、まず押さえておきたいのが「お金に対する考え方の土台」
ここが曖昧なままだと、どこに予算をかけるべきかの判断がブレやすくなってしまいます。
そこでまずは、マンションリノベーションに向き合ううえで大切な“3つの視点”を整理しておきましょう。

 

 

1.リノベーションは「自由設計」だからこそ、価格に正解がない

マンションリノベーションは、基本的に完全自由設計です。
新築住宅のように“仕様があらかじめ決まっている”わけではなく、床材から照明、家具、設備、間取りまで、ほとんどすべてを一から決めていくことになります。

当然、それぞれの選択によって費用は大きく変動しますし、何を選んだとしても「それが正解かどうか」は一概には言えません。
つまり、「これが相場」「これが普通」といった価格の正解は存在しないのです。

 

 

2.どんな住まいにしたいのか?「目的」を決めることが全ての出発点

「どんな暮らしを実現したいのか?」
この問いに自分なりの言葉で答えられるかどうかが、予算配分を考えるうえで極めて重要です。

・「子育てしやすく、収納が多い家にしたい」
・「自然素材に囲まれた、落ち着いた空間がいい」
・「友人を招いて過ごすLDKを広く取りたい」

このように、目指す生活の姿が明確になればなるほど、「何にどれだけお金をかけるべきか」が自然と見えてきます。

自分たちにとっての「価格の正解」を決めていきましょう。

 

 

3.物件条件(広さ・築年数・構造)によって、取れる手段が異なる

同じマンションリノベでも、物件の条件によってできること・できないことが変わります。
例えば、築年数が古ければ断熱や給排水管の刷新が必要になるケースもありますし、構造によっては水回りの移動が制限されることもあります。

また、専有面積が広ければそれだけ仕上げ材や設備の面積が増えるため、当然コストも比例して膨らみます。
つまり、予算配分は物件ごとの特性と切り離せないものなのです。

予算を決める際は、物件条件も鑑みて、検討していきましょう。

 

▼物件選びについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

【必読】マンションリノベーション・失敗しない物件選びのチェックリスト|後悔しない判断基準・確認必須のポイント一覧

【完全ガイド】中古マンション購入+リノベーションで後悔しない“手順と資金計画”|物件選びの落とし穴を防ぐ7つのステップ

 

 

 

「マンションリノベーション 費用 相場」
このキーワードで検索すれば、無数の記事や動画がヒットします。
そこには「700万円でフルリノベ可能」「1000万円でおしゃれな空間に」といった数字が並び、多くの人が「自分もそのくらいでできるのかも」と、つい期待してしまうのではないでしょうか?

しかし、リノベーションの実務に携わる立場から見ると、そうした“相場情報”には、ほとんど意味がありません。

ここからは、相場に意味がない理由を整理していきます。

 

 

費用は「条件次第」で数百万単位で変わる

まず、相場に意味がない理由1つ目は、マンションリノベーションの費用は「条件次第」で数百万単位で変わってしまうからです。

マンションのリノベ費用は、以下のような変動要因によって大きく上下します。

・専有面積(60㎡と80㎡では仕上げ面積も違う)
・築年数(古いほど配管・断熱・劣化対策が必要)
・構造(壁式構造などで間取り変更に制限がある場合も)
・水回りの位置(移動できるかどうかで工事費が激変)
・管理規約(工事時間・音・配管変更の制限など)
・素材や設備のグレード(無垢材/既製品などで大差)
・造作の有無(家具や建具を一からつくるかどうか)

たとえ同じ「70㎡」でも、条件や希望が変われば、300万〜500万円の差は簡単に生まれてしまいます。

 

 

ネット上の価格表示は「前提」が書かれていない

SNSやネットでの情報にある価格を鵜呑みにしてはいけません。よくある価格表示には、次のような“都合の良い抜け”が大量にあるからです。

・税抜き表示(消費税だけで100万円近く変わる)
・設計費や申請費を含まない
・工事内容を極端に限定している(表層だけ)
・設備や素材のグレードが最低限
・部分的なリフォームを含んでいる例もある

つまり、同じ金額でも「何が含まれていて、何が含まれていないか」がわからないまま表示すれば「安く見せることができてしまう」仕組みになっているのです。

 

 

“自分にとっての適正価格”は、他人と同じになることはない

結局、リノベーションとは「自分たちの暮らしをどうつくるか」のプロセスです。
何を重視するか、どんな優先順位をつけるかは人によってまったく違うため、その結果として生まれる“適正な金額”も、人それぞれで当然です。

相場を調べること自体が悪いわけではありません。
ただ、「あの人がこの金額でできたから、自分も同じようにできる」とは限らないという事実を先に知っておくだけで、判断を間違えるリスクはぐっと減らせます。

 

 

数字よりも、“納得できる判断軸”を持つことの方が重要

何にどれだけお金をかけるのか。
どこを削るのか。
何をやらずに、何を選び抜くのか。

こうした「配分の戦略」を考えるためには、自分なりの判断軸を持つことが何よりも大切です。
これがあれば、数字に振り回されることはありません。
逆に、判断軸がないまま“安さ”だけを追うと、完成したときに「思っていたのと違う」という後悔が必ず生まれてしまうものです。

 

 

リノベ費用の内訳とは?|見積書を読むための基本知識

「このリノベーション、いくらかかるんですか?」
そう聞かれたとき、設計者として正確に答えるには「内訳」を知っておくことが前提になります。
全体の金額だけを見ても意味はなく、その中身、“何にいくらかかるのか”が分かってはじめて、適切な配分や優先順位を考えることができるのです。

ここでは、マンションリノベーションでよく出てくる費用の内訳を、設計・工事・その他諸費用の3つに分けて解説します。

 

 

工事費:もっとも大きな割合を占める“本体費用”

工事費は、リノベーション費用全体の6〜8割を占めることが多く、この内訳を理解することがコスト調整の第一歩になります。

主な内訳は以下のとおりです。

項目内容
解体工事既存の壁・床・設備を撤去する工事。床暖房などは追加費用がかかりやすい。
造作・大工工事間取り変更や収納・建具の新設などの工事。オーダーメイド部分が増えると高額に。
仕上げ工事床・壁・天井の内装仕上げ(フローリング、塗装、クロスなど)。素材によって価格差が大きい。
設備工事キッチン・洗面・トイレ・ユニットバスなどの設備機器類。移動を伴うと配管費が増す。
電気・照明・配線コンセント・スイッチ・照明計画・LANなど。配線ルートや調光器でコストに差が出る。

マンションリノベの費用を大きく左右するのが、「移動を伴う設備工事」と「造作工事」です。
キッチンや浴室などの水回りを動かすとなれば、配管や床下の処理が必要になり、その分コストは跳ね上がります。
さらに、収納や洗面台、建具などを既製品で揃えるのか、空間に合わせて造作するのか?この選択次第で、費用が倍近く変わることも珍しくありません。

 

▼設備更新については、こちらの記事で解説しています。

【完全ガイド】マンションリノベーションの設備更新で失敗・後悔しないチェックリスト|配管・水回りなど判断基準と費用対効果

 

 

設計費・監理費:空間の質を決める“頭脳の部分”

意外と見落とされやすいのが、設計や監理にかかる費用です。

これは主に、以下のような内容を含んでいます。

項目内容
基本設計・実施設計間取り・内装・設備などの設計図を作成する工程。詳細仕様を詰めていく。
デザイン提案空間のコンセプト設計、素材・色・照明などのデザイン設計。
工事監理現場で図面どおりに工事が進んでいるか確認・修正・調整する役割。
申請・管理対応管理組合への事前届出、工事申請、打合せなども含まれることが多い。

設計事務所やリノベ専門会社を使う場合は、工事費の10〜15%が目安。
ただし、この費用を削ると、空間全体の一貫性や完成度が一気に下がってしまう可能性も。

 

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マンションリノベーションで“設計事務所”が選ばれる理由|建築家が叶える空間デザイン・コストパフォーマンス・工事の安心感

 

 

諸費用:見落としがちな“付帯費用”も忘れずに

全体予算のなかで、地味に効いてくるのが諸費用です。
設計や工事とは別に、以下のような費用がかかります。

項目内容
仮住まい費用工事期間中に一時的に住む部屋の家賃。マンションリノベは住みながらの工事ができないケースが多い。
引越・搬出費工事前の荷物の運び出し、再設置など。大型家具が多いと費用増。
家具・カーテン・照明器具リノベ完成後に購入するインテリア類。設計に含まれないことが多い。
管理組合対応専用エレベーター使用・共用部養生など、工事前準備に費用がかかる場合もある。
登記・火災保険など物件を購入する場合や、持ち家で大規模改修を行う場合の手続き関連。

見落とされがちなのが、「本体費用に含まれないコスト」の存在です。
工事費や設計費だけを見て予算を立ててしまうと、後から思わぬ出費に直面することがあります。
とくに注意したいのが、仮住まいと引越しにかかる費用。これらは見積もりに含まれていないケースが多く、あとから追加になることが少なくありません。

 

 

見積書を見るときのチェックポイント|マンションリノベーション

見積書を確認するときは、以下のポイントに注意しましょう。

「一式」と記載されている項目は、必ず内訳を確認すること。
→ とくに工事一式・造作一式などは、内容や範囲が不明確なままだと、後々トラブルのもとになります。

設備機器は「支給品(施主支給)」か「施工側の指定品」かを確認する。
→ どちらかによって費用負担や保証の範囲が変わるため、事前の認識合わせが重要です。

消費税・諸経費・現場管理費が明記されているか確認する。
→ これらが抜けていると、契約後に追加費用として発生することがあります。

設計費が含まれているのか、別途なのかを明確にしておく。
→ リノベーションでは設計費が工事費とは別になるケースも多いため、見積もり全体の構成をしっかり把握しておきましょう。

 

 

 

リノベーションにおいて、「何にいくらかけるか」は、住まいの満足度を左右する最大の要素です。
すべてを理想通りにするには、無限の予算が必要になります。
だからこそ、限られた予算の中で“選ぶこと”が最も重要です。

そこでここからは、設計者の視点から「ここにはお金をかけた方がいい」「ここは割り切っても後悔しにくい」という判断のヒントを具体的に解説します。

 

 

日々使う場所・触れる場所には投資する

一日の中で何度も使う場所、毎日触れる場所には、迷わずお金をかけていいポイントです。

・キッチンや洗面などの水回り
・無垢材やタイルなど、直接触れる素材
・ドアノブ・手すりなど、手に触れる部位
・収納や照明など、生活動線に関わる要素

これらはすべて、使い心地や快適性に直結するため、満足度への影響が非常に大きいものです。
特にキッチンは「どこにあるか」「どんな動線か」「どんな使い方をするか」によって、暮らしの質が大きく変わります。

 

 

「魅せ場」は一点集中でもよい

すべての部屋にお金をかける必要はありません。
むしろ、どこを“見せる場所”にするかを明確にし、そこに集中投資するという考え方の方が結果的に満足度は高くなります。

・LDKの天井だけ板張りにする
・リビングに造作の壁面収納を設ける
・キッチンの背面だけタイル貼りにする

“視線の集まる一点”に絞って素材や造作にこだわると、空間全体の印象がぐっと引き締まります。
余分なコストをかけずにデザイン性を高める有効な方法です。

 

 

素材や家具は“量より質”で満足度が変わる

「無垢材の床にしたい」「造作家具で統一感を出したい」といった要望は多くあります。
しかし、素材を広範囲に使えばコストはすぐに膨らんでしまいます。

そこで大切なのは、素材を“面積を絞りつつ、質”で選ぶことです。

・家族が長く過ごす場所だけ、無垢材を採用
・手に触れる建具は造作に、その他は既製品で調整
・ソファやダイニングテーブルは造作せず、家具で対応

“全部やる”のではなく、大事な場所だけを丁寧に整える
この選択が、「予算は限られていたけど、満足している」というリノベを生み出します。

 

 

間取り変更・水回り移動は「覚悟の投資」

マンションリノベでは、「間取り変更」や「水回りの移動」によって暮らしが劇的に変わります。
とはいえ、水回りの位置の変更は構造的・設備的な難しさがあり、費用も時間もかかる“覚悟のいる工事”です。

・排水勾配や配管の関係で、移動距離に制限がある
・コンクリートの床を削る=騒音・粉塵・管理組合調整が必要
・将来的なメンテナンスの難易度が上がることも

「やるかどうか」の判断は、暮らしへのインパクトと照らし合わせての検討が必要です。
「この動線が変われば、毎日が楽になる」と思えるなら、投資する価値は十分にあります。 

 

 

 

リノベーションの費用を「どこに、どれだけ使うか」を考えるうえで、避けて通れないのが“優先順位”の整理です。

予算の都合上、すべてを実現することはできないかもしれません。
だからこそ、「これは絶対に実現したい」「これは後回しでもいい」といった取捨選択の軸を、最初にしっかり持ちましょう。

そこでここからは、設計の現場で実際によく使われている「優先順位の4軸」と、整理のための考え方を解説します。

 

 

軸①「日常の快適性」‐毎日感じる不満に、お金を使う

まず最優先にすべきは、「毎日、体感する快適さ」です。

・断熱性能(夏の暑さ・冬の寒さに直結)
・生活動線(洗濯・調理・掃除の動きやすさ)
・収納量と配置(“片づくかどうか”は暮らしの質そのもの)
・照明計画(自然光+人工照明のバランス)

これらは見た目以上に暮らしの満足度に直結する要素で、「もっとやっておけばよかった」と後悔することが非常に多い領域です。

 

▼断熱リフォームについては、こちらの記事で解説しています。

マンションリノベーションで“断熱性能”を劇的に改善する5つの工夫|断熱リフォームの優先順位・費用対効果を徹底解説

 

 

軸②「長期的な価値」‐ 将来の変化に備える設計

子どもの成長、ライフスタイルの変化、老後の暮らしなど。
10年後・20年後を見据えて、「あとからやり直しにくい部分」には先に手を打っておくことが賢明です。

・可変性のある間仕切り設計
・床下・天井内の配線・配管計画
・メンテナンスしやすい仕上げや納まり
・高齢期を見据えたバリアフリー対応

こうした部分は、費用対効果の面では目立ちにくいものの、後からの手直しが困難です。優先順位は高めに設定すると良いでしょう。

 

 

軸③「自分たちらしさ」‐ 他人にはわからない価値にこそ意味がある

“絶対に必要”というわけではないけれど、
「これがあると、私たちらしい」と思えるような要素は、住まいに個性と愛着を生みます。

・お気に入りの照明器具やタイル
・趣味部屋や書斎などのスペース設計
・アートや本棚を前提にした壁面設計
・好きな素材感(木・石・左官・鉄など)

このような“自分にとっての価値”には、予算をかける意味があります。
暮らしに感情が宿る部分は、他の何よりも大切な投資対象です。

 

 

軸④「やらない後悔」‐ 今しかできない工事を優先する

工事が終わってしまえば、壁の裏側や床の下は二度と触れなくなる
これはリノベーションの基本原則です。

・配線・配管のルート変更
・床下断熱や遮音対策
・建具の下地補強(後からの取付用)
・天井高さや照明計画に関わる天井裏設計

このような“構造の裏側”に関わる工事は、後回しにすることで結局は二度手間や高額な追加工事になる可能性が高いため、早い段階で判断しておくと良いでしょう。

 

 

優先順位は「感覚」ではなく「軸」で整理する

「何を優先すべきか分からなくなった…」というときは、この4つの軸を使って、自分たちの要望を分類してみてください。

□ 日常の快適性
□ 長期的な価値
□ 自分たちらしさ
□ 今しかできないこと

それぞれの要望を紙に書き出し、どのカテゴリに当てはまるかを整理することで、「何にお金をかけるべきか」「何は割り切れるか」が、自然と見えてきます。

 

 

 

リノベーションの失敗の多くは、「選ばなかったこと」よりも、「予算配分の判断を間違えたこと」によるもの。

予算は限られていて当然です。
だからこそ、「どこに、どれだけかけるか」を誤ると、完成してから後悔が残りやすい

そこでここからは、実際によくある失敗例とその背景を紹介しながら、どんな判断が失敗につながるのかを具体的に解説していきます。

 

 

全部やろうとして、すべてが中途半端になった

最もよくある失敗の1つが、「全部やろうとして、すべてが中途半端になった」というもの。

「せっかくだから、あれもこれもやりたい」
この気持ちは誰にでもあります。

しかし、すべてに予算を分散させると、どの空間にも“強さ”や“印象”が残らなくなることに。

・床は無垢材にしたけれど、安価なクロスで雰囲気が崩れた
・造作収納は入れたけれど、照明が既製品で寒々しい
・キッチンは豪華にしたけれど、ダイニングが狭くて使いづらい

予算の分配は“足し算”ではなく、“選択”の積み重ね。
何を削るかを明確に決めなければ、結局すべてが中途半端になります。

 

 

設備に予算をかけすぎて、空間がチープに見える

次によくある失敗が、「設備に予算をかけすぎて、空間がチープに見える」というもの。

「キッチンは最新式を入れたい」「洗面台はホテルライクに」
設備機器に魅力的な商品が多いため、つい機器そのものに予算を割きすぎる傾向があります。

しかし、設備はあくまで「使う道具」です。
どれだけ高機能で美しくても、周囲の素材や空間設計とのバランスが取れていなければ“浮いて”しまうのです。

高級なキッチンより、床・壁・照明との一体感のある“空間の調和”の方が、結果的に満足度は高くなります。

 

 

素材にこだわりすぎて、生活のしやすさが失われた

続いて紹介するよくある失敗が、「素材にこだわりすぎて、生活のしやすさが失われた」というもの。

「自然素材に囲まれて暮らしたい」 その想い自体は素晴らしいものです。
しかし、素材の追求が行き過ぎると、生活機能とのバランスが崩れることがあります。

・床を無垢材にしたが、水や傷に過敏になってストレスに
・左官壁を選んだけれど、メンテナンスや施工精度に不安が残った
・見た目重視で収納を減らした結果、日常が片付かなくなった

デザインと機能性は、必ず両立させる必要があります。
素材の選定は、「暮らしとの相性」まで含めて慎重に検討すべきです。

 

 

水回りの移動で予算を使い切り、他が犠牲になった

「水回りの移動に予算が吸われる」ケースも、マンションでよくある失敗の一つです。

・キッチンや洗面の移動にともなって、配管・勾配・床上げ工事が必要に
・配管ルート確保のために、想定外の造作費用が発生
・管理組合からの制限対応や申請対応で時間とコストがかかる

結果として、リビングの仕上げや照明計画、収納設計などが削られてしまい、「動線は変わったけど、空間としては安っぽくなった」ということになりがちです。

水回りの移動は暮らしに大きな変化をもたらしますが、それに見合う価値があるかは慎重に判断する必要があります。

 

 

優先順位を決めなかったことで、迷走したまま予算超過

最後に紹介するよくある失敗が、「優先順位を決めなかったことで、迷走したまま予算超過」というもの。

最終的な工事費用が大幅にオーバーする人の多くは、「判断の軸を持たないまま設計を進めてしまった」という共通点があります。

・打ち合わせのたびに「それも良いですね」と要望が増えていく
・削るべきかどうかの基準がないため、取捨選択ができない
・施工段階になって「やっぱり入れたい」と追加工事が発生する

結果、当初予定より数百万単位で膨らむことも珍しくありません。

「これは絶対にやる/これはやらない」
「この範囲なら削れる/これは代替案で済ませる」
といった判断のフレームを先に整理しておくことで、後悔や混乱を避けることができます。

 

 

 

ここからは、マンションリノベーションにおける費用配分や判断軸について、
実際に多くの方が疑問に感じるポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。

 

Q1:どこにお金をかけると、後悔しにくいですか?

A:毎日使う場所・触れる場所に、きちんと予算を割くことです。

たとえば、キッチン・洗面・照明・収納などの「日常で常に接する部分」は、快適性・満足度に直結します。
一方で、使用頻度の低い部屋や、目立たない素材部分は、コスト調整の余地が大きいポイントです。

 

 

Q2:優先順位をどう整理すればいいですか?

A:「やりたいこと」を書き出して、4つの軸で分類してみましょう。

① 日常の快適性
② 長期的な価値
③ 自分たちらしさ
④ 今しかできないこと

それぞれの要望が、どの軸に属するかを可視化することで、「何を残し、何を削るか」の判断が自然と明確になります。

 

 

Q3:最初に想定した予算を超えそうな場合、どうすれば?

A:まずは“設計に戻る”ことが最適解です。

グレードを下げるよりも、設計内容自体を再構成した方が、全体のバランスが保たれます。
間取りや工事範囲の見直し、素材の使い方の工夫など、「やりたいことは変えずに、実現方法を変える」アプローチがおすすめです。

 

 

Q4:将来後悔しそうな“見落としがちなポイント”は?

A:裏側の設計と、住まいの余裕です。

・収納の容量・位置が足りない
・コンセントの位置や照明計画が実用に合っていない
・将来使いたい部屋に配線や補強が入っていない
・家具を置く想定がない、空間が活かしきれない

リノベーションは見た目だけでなく、見えない部分・まだ使っていない未来の空間にも設計の意図を入れておくことが重要です。

 

 

Q5:どのタイミングで予算を決めればいいですか?

A:設計の“前”ではなく、“一巡したあと”に再定義するのがおすすめです。

最初に「1000万円以内で」と決めてしまうと、発想が制限されてしまいます。
いったん理想を設計してみて、「どこに・なぜ費用がかかるのか」を知ったうえで、予算を再調整すると、後悔の少ないリノベになります。

 

 

Q6:どうしても予算が足りないとき、どこを削ればいいですか?

A:“やり直しが効く部分”から調整するのが原則です。

照明器具や家具、表層の素材、空間の一部などは、後からアップデートが可能な領域です。
一方で、水回りの位置・断熱・配線・造作家具などは、あとから直すと費用が倍増します
まずは「後戻りできない部分」を死守することが最優先です。

 

 

 

マンションリノベーションは、ただ内装を綺麗にする工事ではありません。
限られた予算の中で、“どう暮らすか”を再設計する行為です。
だからこそ、本当に大切なのは「いくらかけるか」ではなく、
その予算を、どこに・どう配分するかという戦略に尽きます。

住まいには、目に見える「空間」と、目に見えない「体験」があります。
毎日触れる場所、家事動線、収納、照明の質、素材感、空気の流れ。
そのひとつひとつが暮らしの快適さを左右し、心地よさをつくります。
コストは“建物をつくるため”だけでなく、“暮らしを整えるため”にもかけていきましょう。

 

 

特にマンションリノベでは、次のような選択と判断が重要です。

・「構造・配管・管理規約」など、前提条件の読み解き
・予算の8割を決める「水回り・収納・造作」の取捨選択
・見えない部分(断熱・配線・照明計画)への先行投資
・後から変えられる場所 vs 今しか変えられない場所の見極め
・自分たちらしさを表現する設計ポイント

このような予算配分の戦略と優先順位こそが、リノベーションの成否を決めるものです。
どれだけ費用をかけても、判断を誤れば後悔が残る。
反対に、限られた予算でも、軸を持って設計すれば、唯一無二の住まいが実現できます。

 

 

家づくりで迷ったときは、まず“自分にとって大切なこと”を言語化してみてください。
それが、予算配分のすべての出発点です。
そしてその軸をもとに、「削るのではなく、選び抜く」という視点でリノベに向き合うこと。
それが後悔のないコスト戦略であり、豊かに暮らすための第一歩です。

 

 

 

私たちが考えるマンションリノベの本質は、
“予算の中で最大の豊かさを実現する、戦略的な住まいの設計”です。

建物ではなく、「意味ある暮らし」にお金を使うこと。
表面ではなく、「自分たちの価値観」に合った空間を整えること。
そのために必要なのは、金額の多寡ではなく、正しい判断と設計の力です。 

本記事が、あなたにとって「予算に縛られるのではなく、予算を活かす」という新しい視点のきっかけになれば幸いです。

 

 

マンションリノベーションを検討している方へ

次のような方は、ぜひ一度ご相談ください。

・限られた予算の中で、自分たちらしい家づくりを実現したい
・やりたいことが多く、優先順位の整理に迷っている
・相見積もりでは分からない“本質的な判断”がほしい

そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
構造・法規・予算・設計など。

意味あるお金の使い方を一緒にデザインします。

 

▼ 私たちの【設計実例】は、こちらからご覧いただけます。

 

HPhttps://studio-tabi.jp/

資料請求・イベントhttps://studio-tabi.jp/project/event/

YouTubehttps://studio-tabi.jp/project/youtube/

Instagramhttps://www.instagram.com/tawks.tabi/

 

 

参考資料・公的機関リンク一覧(マンションリノベーション関連)

マンションリノベーションを検討中の方へ。
補助金・省エネ制度・住宅ローン・税制優遇など、信頼できる公的情報源をまとめました。制度の最新情報や申請条件の確認に、ぜひご活用ください。

 

国土交通省・経済産業省・環境省

住宅省エネ2025キャンペーン
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/

補助対象リフォームMAP
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/about/reform-map/

 

国土交通省

令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業
https://r07.choki-reform.mlit.go.jp/

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会
https://www.j-reform.com/

住宅金融支援機構|フラット35リノベ
https://www.flat35.com/loan/reno/index.html

 

厚生労働省

福祉用具・住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html

介護保険における住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf

 

環境省

先進的窓リノベ2025
https://window-renovation2025.env.go.jp/

 

経済産業省 資源エネルギー庁

給湯省エネ2025事業
https://kyutou-shoene2025.meti.go.jp/

 

国税庁

マイホームを増改築等したとき|住宅特定改修特別税額控除など
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm

No.1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1216.htm

 

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